天才が宣伝した「う」のつく食べ物
丑の日にちなんでブログに書いた記事です。エッセイっぽくはないかも。
「暑い日が続いております。体調管理には気をつけましょう」
という感じで、夏の健康や体調に関連して話題にのぼることがあるのが、「土用丑の日」。
今年は丑の日が2回あって、7月22日と8月3日だそうです。そういう年は、それぞれを一の丑、二の丑と区別するそうです。
土用丑の日には鰻を食べる習慣がありますね。
そこから、今頃が「鰻の旬」だと思っている方もいるようですが、実は間違いだそうです。
この時期、むしろ鰻は痩せこけているのでもしかしたらあまり美味しくない時期かもしれません。
旬でもないのに、なぜ食べる習慣があるのか。これには諸説あるようですが、主に2つの要因があるようです。
ひとつは、鰻は昔から滋養の元として、疲労回復、食欲増進に効果があることが知られているので、夏に食べることで、いわゆる「夏バテ」対策になることです。
もう一つは、宣伝の結果です。
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いきなり話がそれますが、「ジューン・ブライダル」という言葉があります。最近はあまり聞かなくなりましたが、死語化しましたかね? それとも単に、私の身近に結婚式に関する話題がなくなって久しいからでしょうか><
さて「ジューン・ブライダル」。6月に結婚することですね。
実はこれにはたいした根拠がありません。
いや、正確には根拠はあります。ヨーロッパでは「6月は結婚に適した月」という発想があったのを、強引に日本に持ってきたものです。
6月は「June」。神様の名前「ユノー」にちなんだもので、この神様が結婚を司ることから、6月に結婚すると幸せになれるという考え方が生まれたようです。
そして、ヨーロッパの6月は爽やかな季節です。結婚に適していると言って問題ありません。
しかし日本の6月と言えば梅雨。お世辞にも結婚に適しているとは言えません。
実際、昔は雨ばっか降って蒸し暑いこの季節にわざわざ結婚式をやろうとする人はあまりいませんでした。式場はいつもガラガラでした。
それを何とかしようとした業者サイドが、「ジューン・ブライダル」という考え方を広め、6月の挙式はお洒落でロマンチックみたいなイメージを植えつけて宣伝したら成功した、という感じらしいです。
つまり、宣伝の結果がいつのまにか定着した、ということです。たくましい商魂です。本来日本で結婚に適した季節は春か秋でしょう。
余談ですが、もはやこれはたぶん死語ですが、婚約指輪の「給料の3か月分」も元は宣伝文句です。たいした根拠はないと思います。
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さて、鰻に話を戻しますが、これも少々似たようなエピソードがあります。あくまで説の類で、色々あるうちの一つですけど。通説としてしばしば紹介されますので、ご存じの方も多いかもしれませんね。
土用丑の日に鰻を食べる習慣は江戸時代に定着したらしいです。
「丑の日」は「うしのひ」であり、この日には「う」のつく物を食べると体に良いという民間伝承が存在していたそうです。
そう、「鰻」も「う」がつきますね。でも「う」がつけばよいのだから、鰻じゃなくても良いのです。
うどん、うめぼし、うり、ういろう、うど、うるめなど、いろいろあります。
そして鰻は先ほど書いた通り、痩せこけて美味しくないので、むしろ夏は売れない季節だったらしいです。
そこで登場するのが、江戸時代屈指の天才、平賀源内さんです。
彼の知り合いに鰻屋さんがいました。鰻屋さんは、夏になるとさっぱり売れなくなるのをどうにかできないか、と源内さんに相談しました。
そこで源内さんは一計を案じます。
――「本日、丑の日」という看板を店先に掲げるのはどうか。(貼り紙だったかな?)
鰻屋さんが言われたとおりにすると、なんと飛ぶように鰻が売れたではありませんか。
平賀源内さんは町中に博学、物知りで知られる人物です。
「あの源内さんが言うんだから、間違いないだろう」
ということで、みんな鰻を食べたようです。
それを知った他の鰻屋も競って丑の日に鰻、という宣伝をするようになり、いつしかそれが習慣として定着しました。
だいたいこんな感じだったと思います。
「ジューン・ブライダル」と少々似てますよね?
ただし、旬ではなくても鰻はビタミン豊富で夏バテ防止に効果があります。なので、この時期に食べることに充分意味や根拠があります。
そうした食材の特性と、名前に「う」がつくことを加味して考案された宣伝。
しかも「この時期の鰻は美味しい」なんて嘘を一言も言わずに大成功。この話が本当なら、平賀源内という男はやはりただものではありませんね。
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ちなみに「土用」というのは、夏だけではありません。
もともと五行思想に基づく暦の考え方です。
五行思想については詳しくないですが、簡単に言うと世界は全て5つの元素から成り立っているという思想だと思えばいいでしょう。
5つの元素とは、「木、火、金、水、土」です(順不同)。
季節もこれら元素の「気」を内包していると考えられ、春は木気、夏は火気、秋は金気、冬は水気となります。
さて、季節は4つ、でも元素は5つ。一個余ってしまいます。
残った土気は、各季節の変わり目の18日間(間違ってるかも)に割り当てられます。それを「土用」と呼びます。
つまり、年に4回土用はあるわけです。
そんな中で、夏だけ鰻という習慣が今もあるのは、やはり宣伝の結果によるものなのかな、と思わせてくれます。
他にも、江戸時代の文人で平賀源内さんとも面識があったっぽい狂歌の達人、大田南畝という方が、鰻屋さんから相談を受けて、「丑の日に鰻を食べると薬になる」という趣旨の狂歌を詠んだ、という逸話もあるようです。
これもいわゆるキャッチコピーによる宣伝、というわけですね。
まあ、とりあえず、宣伝云々は別にしても、この時期に食べるのは栄養的にも理にかなってるわけですから、好きな人はたくさん食べて夏を乗り切りましょう。
私も大好きです♪
ちなみに、それなら鰻の旬は? と調べてみたら、概ね秋後半から冬前の時期が、脂がのってて美味しい、だそうです。