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イベント・秋

温泉旅行と食べ過ぎと

作者: 雪陽炎
掲載日:2026/10/11




「あー!体重増えてるー!」

 自宅の体重計に乗った女性が叫び声をあげる。

 玄関には旅行ケースがあった。

「おいしいからって食べ過ぎた……」

 へなへなと崩れ落ちながら女性はつぶやく。

「忙しい毎日に潤(うるお)いをって友達と行く温泉旅行……」

 体重計の隣のノートに今の数値を記録する。

 

「もー!こうなったら最終手段!」

 女性はそう言って顔を上げると走り出す。

 そのままダダダっと階段を駆け上がり自室に戻る。


      ☆            ☆


「えーっと確かこの辺に……あった!」

 女性はベッドの枕もとをきょろきょろと探す。

「迷子のおばあさんを案内して貰えた懐中時計……」

 女性は先日のことを思い出す。

「これを使うと止めておいた日に戻れるのよね!」

 懐中時計は旅行する前日の浅の時間を指していた。

「早速使って戻ろう!旅行前に!」

 

      ☆            ★

 

「草津に伊香保(いかほ)……これで二回目ですか」

 水鏡(みずかがみ)から女性を見ていた女性が水鏡に手を添える。

 手を水面(みなも)に当てると水面は空を映し出していた。

 

「の?面白いじゃろ?」

「見ている分には面白くはありますね」

 後ろから声をかけてきた老婆に女性は答える。

「このためだけに時戻しの時計を貸し与えました?」


「左様。純粋な子じゃし下界も見たかったし。それに」

「それに?」

 なにか言いたげな女性の機先を制し老婆は口を開く。

 

「明日への活力となる娯楽になるじゃろ?」

「……まあ確かにそうですね」

 女性は納得した様子で湯のみにお茶を注ぐ。

 

「ほっほっほ」

 老婆は楽しそうに笑うとお茶を口にした。

 

      ★            ★

 

『また体重増えてるー!』

「今度は水上(みなかみ)……同じことやってますねえ」

「歴史は繰り返すものなんじゃよ」


 水鏡がおいしそうに料理を食べる下界の女性を映す。

 二人はお茶を片手にまったりと見守っていた。


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― 新着の感想 ―
日々の生活の煩わしさから解放された旅先。 そこで美味しい料理を食べ過ぎてしまうのは、ある意味では必然ですね。 しかも旅館やホテルでしたら基本的に上げ膳据え膳で自分で支度する必要もないのですから、より体…
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