温泉旅行と食べ過ぎと
「あー!体重増えてるー!」
自宅の体重計に乗った女性が叫び声をあげる。
玄関には旅行ケースがあった。
「おいしいからって食べ過ぎた……」
へなへなと崩れ落ちながら女性はつぶやく。
「忙しい毎日に潤いをって友達と行く温泉旅行……」
体重計の隣のノートに今の数値を記録する。
「もー!こうなったら最終手段!」
女性はそう言って顔を上げると走り出す。
そのままダダダっと階段を駆け上がり自室に戻る。
☆ ☆
「えーっと確かこの辺に……あった!」
女性はベッドの枕もとをきょろきょろと探す。
「迷子のおばあさんを案内して貰えた懐中時計……」
女性は先日のことを思い出す。
「これを使うと止めておいた日に戻れるのよね!」
懐中時計は旅行する前日の浅の時間を指していた。
「早速使って戻ろう!旅行前に!」
☆ ★
「草津に伊香保……これで二回目ですか」
水鏡から女性を見ていた女性が水鏡に手を添える。
手を水面に当てると水面は空を映し出していた。
「の?面白いじゃろ?」
「見ている分には面白くはありますね」
後ろから声をかけてきた老婆に女性は答える。
「このためだけに時戻しの時計を貸し与えました?」
「左様。純粋な子じゃし下界も見たかったし。それに」
「それに?」
なにか言いたげな女性の機先を制し老婆は口を開く。
「明日への活力となる娯楽になるじゃろ?」
「……まあ確かにそうですね」
女性は納得した様子で湯のみにお茶を注ぐ。
「ほっほっほ」
老婆は楽しそうに笑うとお茶を口にした。
★ ★
『また体重増えてるー!』
「今度は水上……同じことやってますねえ」
「歴史は繰り返すものなんじゃよ」
水鏡がおいしそうに料理を食べる下界の女性を映す。
二人はお茶を片手にまったりと見守っていた。




