受け継がれる魂
**あらすじ**
ルナは家で一人留守番をしていたが、トラブルが起きても警察を呼ぶことができず、怯えていた。
近隣住人も騒ぎを傍観するだけで助けを呼ばず、翔太が加害した騒音男ほか1名は救急の到着が遅れた上、翔太の不適切な心臓マッサージも原因となり命を落とした。
翔太は警察に「喧嘩を止めた」と供述し、咎められることなく帰宅。
その後、騒音男は生活保護の不正受給者、ほか1名女性は彼の長女だったと判明した。
地域に生かされた、受容された翔太。祖父の言葉を胸に、翔太はルナをライバル視することをやめ、年明けの高校受験の季節を迎えようとしていた。
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母が弟を病院へ連れて行き、そこへ下の子たちも付き添ったという経緯から、1人で留守番をしていたルナ。
そのルナは15歳にもなって、あのような状況下に於いてさえ、警察を呼ぶという機転が利かなかった。
体も心も硬直させ、ドアの向こうで怯えて過ごしていた。
マンションの住人たちも、予てからオッサンは騒音トラブルを起こして面倒臭い人物だったので、ドアを閉ざして、家族には帰宅を遅らせるよう忠告の電話をしていた。
煙草を吸う為に駐車場の端を横切って敷地外へ出た住人も居たが、遠目に騒ぎを傍観するだけで、助けを呼ぶ事は無かった。
救命救急が遅れ、更には翔太が体位を変えて不適切な心臓マッサージをした事が原因で、オッサンと女の人は亡くなってしまった。
翔太は警察署で、この2名がケンカしてたのを止めたと供述した。
翔太は何も咎められる事が無く、夜遅くに母親の車で帰宅した。ビデオに録画されていた忠臣蔵を少しだけ視聴しながら遅い夕食を食べて、久々に祖父と一緒に風呂に入って、それから就寝した。
翔太は後日、ルナが住むマンションは全国的に有名な依存症治療施設が住戸の半分を賃借しており、また、オッサンは施設利用者でないけど生活保護の不正受給者で、女の人は書類上同居していないオッサンの長女だったと聞いた。
隣のマンションには外国人の麻薬取引グループが潜伏していて、深夜早朝の騒音が無くなって、捜査がし易くなったという噂も聞いた。
祖父は、名を信幸という。自分の農具には、誇らしげな金色の明朝体で信幸と印字している。「学校、つらかったら田圃に出ろ。でも、引きこもりはアカンぞ」と祖父は言う。
あの日、オッサンたちがどうしてルナの住戸の前で、ルナが泣いて硬直するような事をしていたのかは謎のままだ。
ルナが本当に恐怖で動けなかったのか、それとも別の理由からルナは事態を放置していたのか、それも謎のままだ。
だが、翔太はルナをライバル視する事をやめた。翔太の卒業の季節は近い。




