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空手! 逆境の10代に一筋の光を!!  作者: X
第三章:闇と光
10/20

過去との対峙

**あらすじ**

翔太が「セルフ泣き寝入り」と呼ぶ、翔太から受けた被害を被害者が頑なに黙して自損事故にしてくれる現象。

この現象に助けられて来た翔太だが、ついに地域社会が動き出し、翔太は窮地に追い込まれる。

先日、不良グループに命じられたとウソをついて、小学校6年生の女の子のグループへイタズラをした翔太は、中学の生活指導室で教員たちに詰め寄られていた。

その席で続々と、翔太がケガを負わせた人たちの話が話題になった。

翔太は絞り出すような声で「どうして、ぼくの事ばかり、いじめるの…?」と言ってみせたが、事なかれ主義から本気対応にシフトした大人たちは甘くなかった。

次に人を加害したら施設へ入れる前提で両親と話をする事になると警告され、この日はお開きとなった。

翔太はこの日の帰り道に於いても、しぶとくいじめ被害者の立場にしがみつき、母親に自動車で中学へ迎えに来るよう電話した。

********

翔太が自ら「セルフ泣き寝入り」と呼ぶ現象があった。彼がこれまでの生活の中で引き起こしてきた数々の暴力事件は、不思議と「被害者が黙って自損事故として処理してくれる」形で収束していた。翔太が拳を振るった相手が、彼にやられたとは決して言わず、ただ黙して耐えることで、自らのプライドを守る道を選ぶ。それによって、翔太はこれまで大きな問題に発展することなく、己の「強さ」を証明する場を維持してきた。

だが、その均衡はついに崩れ始めていた。地域社会が、彼の存在を危険視し始めたのだ。

ある日の放課後、翔太は中学の生活指導室に呼び出され、硬い表情をした教員たちに囲まれていた。彼の目の前には、担任教師、生活指導の教師、さらには教頭までが居並び、厳しい視線を送っている。教員たちがここまで本気になるのには、それなりの理由があった。

数日前のことだった。翔太は、小学校6年生の女子グループに対して「不良グループに命じられた」と嘘をついて、イタズラを仕掛けた。直接的な暴力ではなかったが、幼い子供たちにとっては恐怖心を煽る行為であり、当然ながら親たちは激怒した。これまでの翔太の行動を知らずにいた大人たちも、地域で起こる「小さな事件」の点と点を繋ぎ合わせ、彼の問題行動を見逃せなくなっていた。

「翔太、お前はもう限界だ」

生活指導の教師が低い声でそう告げる。翔太は椅子の上で小さく身じろぎしながら、視線を床に落とした。

「君が関与したと考えられる暴力事件がいくつもある。けがを負った生徒たちはみんな、君にやられたとは言わなかったが、周囲の証言を集めれば、もう言い逃れはできない。今回の小学生へのイタズラも含め、君の行動はすでに地域の問題になっているんだ」

翔太の喉が乾く。

彼は無言のまま、これまでの「セルフ泣き寝入り」の現象が今度ばかりは通じないことを悟った。

「どうして……ぼくのことばかり、いじめるの……?」

しぼり出すような声で、翔太はそう呟いた。

これまでは、こう言えばなんとか大人たちは黙ることが多かった。彼がいじめられていた過去は確かに事実であり、同情の余地はあった。だが、今日の生活指導室にいる大人たちは違った。彼らは事なかれ主義の枠を超えて、本気で対応しようとしていた。

「翔太、お前のやっていることは、もう許される範囲を超えているんだよ」

担任の教師が、静かに、しかし確実に翔太の心を締めつけるように言った。

「次に人を加害したら、もう普通の学校生活は送れない。施設へ入ることも考えなければならない。お前の両親とも話をする。これは警告だ」

翔太の胃の腑が激しく蠕動する。

「――今日はここまでだ。帰れ」

生活指導の教師のその一言で、翔太は無言のまま立ち上がり、廊下へと歩み出た。

冷たい夕方の風が吹きつける中、翔太は校門の外へと歩を進めた。頭の中では、これまで自分がやってきたことのすべてが、まるで走馬灯のように駆け巡っていた。

――俺は、何をしていたんだろうか?

これまで、「いじめられた過去」が免罪符のようになり、どれだけの暴力も、それが原因であればある程度は許されると思っていた。しかし、今の彼の立場は明らかに「加害者」だった。

帰り道――しぶとくしがみつく「被害者」の立場。

「……くそっ」

舌打ちをしながら、翔太は事務局へ向かい公衆電話の前に立ち、母親へと電話をかけた。

『翔太? どうしたの?』

「……迎えに来てくれ」

母親は一瞬の間を置いた。普段なら翔太は一人で帰宅することが多く、わざわざ迎えを頼むようなことはなかった。だが、この日は違った。翔太は、まだ「被害者」の立場にしがみついていたのだ。

『どうかしたの? 何かあったの?』

「……もういいから、迎えに来て」

短く言い放つと、翔太は通話を切り、校門の前でじっと母親の車を待った。

彼は、生活指導室でのあの場面を思い出しながら、今後の自分の行く末について、漠然とした不安を抱いていた。これまでのように「セルフ泣き寝入り」に頼ることは、もうできないのかもしれない。そして、次に問題を起こせば、本当に「施設」に送られるのかもしれない。

だが、そんなことを考えながらも、翔太はまだ自分が「いじめられていた被害者」だという立場を完全に捨て去ることはできなかった。

「俺は、まだ負けていない」

心のどこかで、そう信じたかった。

遠くから、母親の車のライトが見えてきた。翔太はゆっくりと歩き出し、その光の中へと足を踏み入れた。

彼の心には、未だ拭えぬ迷いと、これから待ち受ける「本当の試練」への恐れが、渦巻いていた。

――そして、翔太はついに、自らの過去と真正面から対峙する時が迫っていた。

翔太は女の子を抱き寄せてパンツに手を突っ込む等した。女の子の『具』が塗れて臭くなったので、童貞の翔太は衛生上の恐怖を覚えて、本番はしないで穏当に交流を続けた。

不良グループというスケープゴートをキープした翔太は普段からこういう事を繰り返していたが、この日は調子に乗り過ぎて、優しさをどこかへ忘れて来ていたようだ。

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