魔法
掲載日:2026/07/02
あの日、あの瞬間。
私は確かに、大切なものを失った。
『瑠璃なんかだいっきらい!』
そう言って別れた、あの日。
あの日、私が側にいれば。
あんな喧嘩なんか、しなければ。
そう思いながら、目の前にいる瑠璃に言う。
「嫌いなんて嘘だから!大好きだから……戻ってきてよ、瑠璃」
彼の方を向いてはいたけれど、涙のせいで、彼の姿なんて見えなかった。
「無理だよ。もう、君のもとには戻れない」
どうして、と私が言う前に、彼が言う。
「僕以外と幸せになってね。愛してたよ、音緒」
大好きでたまらなかったはずの人。
そんな、彼との別れ。
嫌だ、返して、とどれだけ必死に祈っても、彼はもう、私のところには来てくれない。
「死がふたりを分かつまで」
魔法みたいなその言葉が叶うことは、もうない。
私にかけられた魔法が解けたとしても、
たとえ同じものが帰ってこなくても、
私は、あなたを愛し続ける。
偶然の産物。
30分で書き上げました。




