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モヤモヤする気持ち

 何度思いましても心がモヤモヤする。ベッドの上でゴロゴロと端から端に転がっていた。すると、近くから「あっ」と言う小さな声が聞こえてきた。

 ベッドの上で横になりながら声の方に視線だけを向けると、表情は変わっていないが、瓶を持ったまま動かないシルルがそこにいた。瓶の中身は何かの薬だろう。そして、机の上にはその瓶がいくつか入った籠が置かれていた。


「……シルルさん。髪を乾かさないと風邪を引くよ」


 ベッドから起き上がり、シルルの横まで行った。彼女の髪からは水滴がポツリと落ちた。私の髪は彼女の魔法によって乾いているが、シルルは瓶を持ったまま固まったままで動かない。


「どうしたの?」


 その言葉に隣に私が立っている事に気づいて、ゆっくりと視線を合わせてくれる。


「薬を納品するの……忘れた」


「えっ⁈」


 納品するの……忘れた? それって……大丈夫なのかな?


「明日……また、街に行かないと……」


 珍しくガックリとしているシルルの様子は初めて見た。街に行くのが嫌いなのだろうか?


「間に合うの?」


「……ええ。一応は明日が納品日の締切だから……」


 その言葉にホッとした。薬なので、もしかしたら早く必要にしている人もいるかもしれないからだ。


「間に合うなら、良かった」


 ホッとしていると、シルルは私の頭を撫でた。その手を振り払うなどせずにされるがままにしておいた。彼女に撫でられるのは嫌いじゃない。


「じゃあ、明日も街に行くの?」


 その言葉に彼女は頷いた。


「街に行くのは嫌なの?」


「……そうね。正直、面倒くさいわ」


「そうなんだ」


 確かに、面倒くさがりな彼女は森を抜けて街に行くのは面倒くさいのだろう。だけど、私は明日街に行けるのは正直嬉しい。このモヤモヤした心の原因である少年が少し気がかりだからだ。別に会えるわけではないのだが……。


「シルルさん」


「何かしら?」


「私も一緒に……その……」


 一緒に行きたいと言ってもいいのかな? シルルは仕事で行くのに……邪魔になるかも……。そう思ったが、彼女の優しい瞳を見ると自然と言葉が出てきた。


「私も街に行きたい」


「いいわよ。だけど、約束はしっかりと守れる?」


 シルルはしゃがみ混んで視線を私と合わせた。それに大きく頷いて返す。


「大丈夫だよ。フードはしっかりと被るし、シルルさんの手は離さないよ」


 その言葉に彼女は口角を少し上に上げて、目元を柔らげた。


「じゃあ、明日は朝早くから出るから……」


「早く寝ないとね!」


「そうね」


「その前に、シルルさんは髪を乾かしてね! 風邪を引いちゃうから」


 その言葉に彼女は目を少し見開いたが、すぐに髪を魔法で乾かしていた。そして、二人でベッドに横になった。


「ニーナ。おやすみ」


「シルルさん。おやすみなさい」


 目を瞑ったがなかなか寝られず、隣を見ると寝息が聞こえてきた。彼女は寝るのが早い。その様子を見ると、自然と笑みが溢れた。


 朝になると、先に目を開けたのは私だった。隣の彼女は未だ夢の中だ。急いで時間を確認すると昨日とは違い朝早くだった。もしかしたら、寝過ごすかもしれないと不安だったのでホッと息を吐いた。そして、隣の彼女を起こした。


「シルルさん。起きてー」


 彼女の身体を揺らした。すると、一瞬だけ目を開けたが、すぐにまた目を閉じた。


「シルルさん! 起きてくださーい」


 しかし、彼女は寝るのが好きな人だ。この後、何度も起こしても一度起きるがまた目を閉じるを繰り返した。そして、彼女がしっかりと目を覚ましたのは今から一時間後だった。

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