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新しい国②

 船から降りると、時計の針の音がした。


「時計?」


 私の問いに隣に立っていたヴィルグが答えた。


「シュートバルグは時計の国と言われる」


「時計の国……?」


「そうだ。この国はあちこちに時計塔がある」


「へえ」


「あとは……基本的にこの世界は魔法が存在する。それなのに、この国は魔法石を使った魔道具ではない独自の方法で発展させた国なんだ。その一つがカラクリ時計だ。この国はたくさんの時計台が多くある。カラクリ時計は見たことはあるか?」


「うん」


 私はもう一度、奥に備えたつ沢山の時計塔に目を向けた。


「ニーナ、ルイス」


 シルルが私達に声をかけた。そして、私たちの前にしゃがみ込むとこちらを真っ直ぐに見据えた。


「……約束は覚えている?」


 その言葉に私達は顔を見合わせた後に頷いた。


 約束。それは……シルルの側を離れない。何かあったら、声をかける。フードを取らない。知らない人にはついていかない。必ず、ルイスと手を繋いでおく事。などだ。


「じゃあ……行きましょうか?」


「うん!」


 そして、私達は街へと向かおうとした時だった。何処からか視線を感じたのだ。だが、そちらに視線を向けても何もない。


「…………?」


 立ち止まった私にルイスが声をかけた。


「どうした?」


「……何でもない」


 私の気のせいだと思い、首を横に振った。


「……何かあれば、絶対に言えよ。それと、フードもしっかりと被れよ」


 彼は私のフードを被せ直した。そんな彼にお礼を言ってから、手を繋ぎ直した。


「ニーナちゃーん! ルイルイ! 待って!」


 私たちの後を追うように船から降りたサキが叫んだ。だが、シルルはそんな彼を一度だけ見ると、無視して歩き始めた。ヴィルグも一緒だ。


「いいの?」


「別にいい。あいつは勝手について来るだろ」


 それもそうだと納得して、私達はサキを置いて街へと向かった。


 街へと着くと、沢山の時計の針の音が聞こえて来る。だが、一定の音ではないのでそのズレが少し耳に残り気になった。


「時計がたくさん……」


 時計塔が沢山立っている。その事に改めて感心していた時だった。


「引ったくりよーー!!」


 その声は響き渡り、その声が耳に届いたと同時にこちらに向かってくる人影があった。


「どけよ!」


 私に勢いよくぶつかりそうになった瞬間に、ヴィルグが私とルイスを持ち上げたため、ぶつかることはなかった。だが、引ったくり犯を見逃してしまった。


「サキ」


 そう思っていると、ヴィルグが名前を呼んだ。


「はーい」


 そして、その名の持ち主がその犯人を捕らえていた。


「お兄さーん。駄目だよー。人の物を取ったら」


「なっ⁈ 離せよ!」


「あはははは。勢いがいいなー」


 私は楽しそうなサキの様子に引いた。ルイスも同様だった。その証拠に声が引き攣っている。


「あいつ……笑ってるな」


 そんな私達の様子にヴィルグは深いため息を吐いた。そして、シルルはそんなサキの元へと向かっていた。


「あれ? シルル姉さん、どうしたの?」


「……お灸が必要な気がするわ」


 その声は冷たい上にその瞳も同様に冷めていた。そんな彼女の様子にサキは苦笑した。だが、それはヴィルグによって、止められた。


 引ったくりの犯人はこの街の警備隊に任せた。そして、引ったくりにあった女性からお礼として、時計を貰ったのだ。


「綺麗だね……」


 サキが受け取ったのは懐中時計だ。カチカチと規則正しい音をさせている。


「真ん中にあるのって……」


 懐中時計の真ん中に綺麗な赤い宝石のような物が付いていた。


「何だろうね? 魔法石に近いけど……」


 サキもどうやらわからないようだ。魔法石に近いようだが、シルルに聞くと違うと返ってきた。


「ニーナ! 行くぞ」


 懐中時計はサキのポケットの中にしまわれた。そして、私達は街の散策を再開させた。初めて来た国ということもあり、沢山の物に目を奪われた。

 そのため、私達の様子をジッと見ている存在に気づくことはなかった。


「エルフ……そして、獣人の子供が二人……に強そうな男が二人」


 そう呟いた青年はその場から消えた。

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