新しい国
船が停まった。私は首を傾げていた。
「ヴィルグさん。船、止まっちゃったよ?」
私は現在、ヴィルグの仕事部屋で地図を見ていた。この世界の地図を見てみたいと呟いたら、彼が声をかけてくれたのだ。
「着いたようだな」
その言葉に何処に? と私が言葉に出す前に部屋の扉が開いた。
「ニーナ」
「リーダー! ニーナちゃん!」
そこにはルイスとサキが立っていた。何だかんだで二人は仲が良いと思う。何故なら、先程まで二人で何かコソコソとやっていたのだから。私を除け者にして。その事に私は少しだけ不服に思っているのだ。
「あれ? ニーナちゃん? そんなに頬を膨らませてどうしたの?」
そんな私の様子に気づいたサキはすぐ側までやってきた。
「何でもないです」
「何でもない顔してるよー。可愛いお顔が……」
「可愛くなくなった?」
「いや! 可愛ー」
サキは私に抱きついた。彼のこの様子はいつものことなどでされるがままにしたが、ルイスがその事に気づいて引き剥がした。
「何してんだよ!」
「ルイルイったら〜。ルイルイも抱きしめてあげるよー」
「ちげぇ! くそっ! 力が強えな!」
私はそんな二人のやり取りを無視して、ヴィルグに話しかけた。
「何処に着いたの?」
「シュートバルグ国」
シュートバルグ国。私は持っていた地図を彼に見せた。
「お前がいた国はここだから……シュートバルグはここだ」
「思ったよりも近い国なんだね」
「ああ。だが、この国は陸からは行けない島国だ」
そう言われると確かにそうだ。周りは全て海である。まるで、日本のようだ。
そう思っていると、ドアがノックされた。
「次から次へと……来すぎだ」
ヴィルグがため息をついた時だった。扉が開いて入って来たのはシルルだった。
「ニーナ、ルイス」
彼女の登場に私は表情を明るくさせた。
「シルルさん!」
その様子を見たサキは苦笑した。
「リーダーよりもシルル姉さんなんだね〜。リーダー残念」
「うるせえ。懐かれてないお前に言われたくない」
「ええ⁈ 俺は懐かれてますよー」
そうは言っても、小さなコダヌキの彼女は嬉しそうにシルルに抱きついている。
そんな彼女達の側にはルイスも駆け寄って行った。
「ルイルイまで〜」
サキはがっくしとわざとらしくショックを受けた様子を見せた。
そんな彼らの元へ、ミクリとアイミーが声をかけに来た。
「リーダー。私達、上陸しようと思うんだけど……」
アイミーが可愛らしいワンピースを翻しながら、準備万端ですと現れ、ヴィルグに話しかけた。そんな彼の隣で彼女も小さなリュックを背負っていた。
「ああ。わかった。ミクリ、材料の調達には何日ぐらいかかりそうだ?」
「三日……いや、四日はいるかもしれない」
「そうか。なら……一週間ほど、この国に滞在しよう。皆に伝えてくれ」
「わかったわー」
そして、二人は部屋から出て行った。
「私達も船から降りてもいいのかしら?」
シルルの言葉に私も目を輝かせた。初めての国。もしかしたら、見た事がないものを見る事ができるかも知れない。
「ああ。だが、夜には絶対に船に戻れ。そして、何か問題が起きた時も必ず相談するように」
「……わかったわ」
彼の言葉に私はシルルの手を掴んだ後に、ルイスに声をかけた。
「ルイスも一緒に行こうね」
「当たり前だ」
そんな私たちの様子を見たサキは叫んだ。
「俺も! 俺も一緒に行くよ! 置いていかないで!」
そして、準備を始めた私達。勿論、フードを被るのは忘れない。
「ニーナ、ルイス」
シルルさんに呼ばれた私達は並んで彼女の前に立った。すると、彼女の手にはポシェットが二つ。そして、その一つを私に、もう一つをルイスに渡した。
「中にはお小遣いが入っているわ」
「あっ、ありがとう!」
「ありがとう」
私達は彼女からもらったポシェットをしっかりと肩にかけた。その様子を見た彼女の口角は上がった。
実はこのポシェットは彼女の手作りだった。これから先、船を降りた時に必要になるかもしれないと思った彼女は手作りで作る事に決めた。だが、裁縫未経験者の彼女は困った。そんな時に彼女に声をかけたのはアイミーだった。
「あら? シルルちゃん。どうしたの?」
「裁縫は……難しい……」
シルルの手の中にはただの布のようなものやボロボロになった布がたくさんあった。それを見たアイミーは驚きながらも、話を聞くことにしたのだ。
「シルルちゃん! 私、手伝うわ!」
彼女の話に心打たれたアイミーは自然にその言葉が出ていた。
「ありがとう……」
そして、アイミーはジンも誘った。ポシェットは三人で一生懸命に作った物だった。勿論、二人には内緒でだ。そのため、最近のシルルは部屋にいなかったので、暇になったニーナはヴィルグの部屋へと入り浸っていたのだ。
もらったポシェットの形は私はたぬきで、ルイスは黒い鳥だった。私は嬉しくて、何度もそれを肩にかけたまま鏡の前でクルクルと見ていた。そんな私とは対照的にルイスは手に持ってジッと見つめていた。
「準備は終わった?」
シルルの言葉に私とルイスはしっかりと手を繋いで頷いた。そして、私達は船を降りた。




