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探検しよう

「シルルさん……」


 泣きそうな声で彼女の名前を呼んだのは私だ。それも、浴室の扉の影に隠れてだ。無事、魔力の塊は身体から排出された。そして、それと同時に身体は人型に戻ったのだが……。


「それ、本当にアカツキさんに渡すの?」


 彼女が浄化魔法をかけて綺麗にした魔力の塊を二つ手にしている。ルイスも無事、身体から排出されたが、それをシルルの魔法により浄化された事が恥ずかしくなり、ベッドの上で布団に丸まり、隠れている。私も布団の中に隠れたかったが、彼の方が早かったため、浴室の扉の影に隠れたのだ。


「……ええ。今から渡しに行くつもりよ」


 彼が待っているとはいえ、恥ずかしい。私の身体の中にあった物だよ。


「……ニーナとルイスも一緒に行く?」


「いっ、行かない!」


 私は大きな声で叫び、浴室の扉を勢いよく閉めた。そんな私の様子に彼女は小さく口角を上げた後に、部屋から出て行った。それは、部屋の扉の開閉音でわかった。私はそっと、浴室の扉を開けた。


「もう……海の上、何だよね?」


 船が大きいお陰で、波の揺れはあまり感じない。それに、この身体は船酔いがないようでよかった。


「ルイス、ルイス」


 私はベッドの上に上がり、布団にくるまっているルイスの身体を揺らした。勿論、彼を連れて船の中を見て回るためだ。


「…………」


 だが、どれだけ声をかけても布団から出て来てくれない。私よりも彼はショックを受けているのだろう。男の子だもんね。私はうん、うんと彼の気持ちを考えて頷いた。すると、布団の隙間が少しだけ空いた。


「呼吸が苦しくなったの?」


 そういうと、また布団が閉じた。


「ルイスー。一緒に船内の探検をしようよー」


 もう一度、身体に触れたら、彼は身体の向きが変えた。


「探検ー。楽しいよ! だって、海賊船だよ? お宝が乗ってるかもしれないんだよ? ねえ、ルイスー」


 遊んでよー。一人じゃ怖いんだよー。そんな気持ちを込めて、彼の身体を揺らした後に、頭を乗せた。


「ルイス。一緒に行こうよ」


 小さな声でつぶやいた。だけど、嫌がる彼を強制することはできない。


「ごめんね……私、一人で行ってくるよ……」


 彼から離れ、ベッドから降りようとした時だった。


「…………俺も行く」


 布団から出て来たルイスの髪はボサボサだった。


「ありがとう。嬉しい!」


「……別に。お前一人で行かせる方が心配なだけだ」


 そして、二人でベッドから降りて、部屋の扉を開けた。廊下には二、三人ぐらいがいるだけで、あまり人がいなかった。


「お宝を見に行こう!」


「そんな物があるのか?」


 呆れた様子のルイスに私は言葉を続けた。


「海賊船だよ? あるに決まってるよ」


 私の中の海賊船はお宝を乗せているイメージなのだ。きっと、何処かに隠していると思う。

 でも、少し前の私なら、船の中を探検しようなど思わなかった。きっと、部屋の中で大人しく待っていた筈だ。だけど、この世界に来てから少しずつだが、積極的になって来た気がする。


「じゃあ、一部屋ずつ見ていくか?」


 差し出された小さな手に自分の小さな手を乗せた。そして、彼と離れないようにしっかりと握った。


「どの部屋から見る?」


「隣……と言いたいが、どう見ても誰かの部屋だよな。取り敢えず、もう少し先の部屋から見よう」


 その言葉に私は頷いて、二人して部屋を後にした。


 一方、その頃のシルルは医務室でアカツキを探していた。勿論、彼は彼女の登場に足音で勘付いてカワウソの姿になり、隠れているのだ。


「…………」


 だが、魔力の塊を置いて部屋を出るのもどうなのかと考えて、近くにあった椅子に座った。そして、手に持っていた魔力の塊をジッと見つめた。まるで観察するようにだ。


「…………同じ、魔力」


 魔力の塊から微量に漏れ出ているそれは二つとも同じ物だった。ということは、一人の人間が薬草に魔力を込めたと言うことだ。


「誰が……何のために?」


 その呟きはアカツキに聞こえていた。彼が隠れている場所はベッドの下だ。彼女が部屋から出た行くのを待っていたが、椅子に座ったため、彼も出るに出られないのだ。


「……おチビちゃん達だけに飲ませた……何でや?」


 アカツキは考え込んだ。まさか、奴隷商が関わっているなど思ってもいないのだ。だが、獣人が狙われた事はわかっている事実である。


 シルルとアカツキが考え込んでいると、部屋の扉がノックされた。その事にアカツキは身体を大きく反応させたが、シルルは無表情で扉の方に視線を向けた。


「アカツキー。入るよー!」


 彼は中の返事も聞かずに扉を開けた。


「あれ? シルル姉さんだけ? あっ! アカツキは隠れてるのか」


 サキは一人で納得しながら、シルルが持っている魔力の塊に視線を移した。


「それが……魔力の塊?」


「……ええ」


 サキはそれを興味深そうに見つめた。

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