アカツキ
「アカツキ」
「何や? イケメン野郎」
「ニーナちゃん達が逃げた理由を教えてあげようか?」
二人が話しているのを見ながら、私は鼻辺りを手で触った。
「どうした?」
変な匂いが鼻に残っているの……。彼の匂いがいつまでも鼻に残り、不快感が続いている。
「ヴィルグ。あいつ、変な匂いがする」
私の代わりにヴィルグに報告するルイスはアカツキと呼ばれた男を警戒した。
「やっぱり」
サキの言葉にアカツキは首を傾げた。
「ええ? 僕、臭いん?」
自分の白衣の匂いを嗅いだ彼にサキはさらに言葉を付け足した。
「薬の……薬品の匂いがしているんだよ。ほら、アカツキって、暇なら薬品を触っているでしょ?」
「あっ……誰も何も言わへんから気づかんかったわ……」
彼の言葉に私は首を傾げた。薬品?
「ごめんなー。この匂い、僕は慣れてるけど、鼻がいい獣人はきついよなー。ジンもいつも顔を顰めるわ」
そう言ったアカツキは懐からアメを取り出した。
「仲直りの印にこれ、あげるから……許してくれへん?」
だが、匂いがきついのはきつい。私は彼が近づくと、その距離を離れた。
「あははははは! アカツキ、嫌われた!」
「まっ、まだ、嫌われてへん! 白衣、白衣を脱いだらええんや!」
そう言うと、着用していた白衣を脱ぎ捨てた。確かに、白衣に匂いが染み付いていたようで、脱いだら、匂いが和らいだ。
「これでどうや?」
私はゆっくりと頷いた。それを見た彼は「良かったー」て叫ぶと安堵していた。
「さて……獣化から戻れない理由やね?」
彼に獣化した後に人型に戻れない事をサキが話した。勿論、そうなる前に飲んだスープの話も加えてだ。
「そのスープに問題があるのは確かやね」
そして、すぐに彼は何かを思い出した。
「昔、君たちみたいな症状を見た事があったわ」
そして、ルイスと私に「口を開けて」と指示を出した。そのため、言われるがままに口を大きく開けた。
「可愛いお口」
すると、すぐ側からサキも口の中を覗いてきた。
「やめろ」
だが、すぐにヴィルグにより、サキは私から引き離された。その事にホッと息を吐いた。乙女の口の中を覗くのは如何なものかと思う。
「やっぱり……口の中から魔力が微量に流れ出とるね」
ええ⁈ 私は自分の手で口を押さえた。
「お腹の中に魔力の塊ができてしまって、人型にならへんのよ。スープの中に入ってたのは魔力が含まれた薬草。薬草は体内の中で溶けるけど、魔力だけが体内に残り、塊になってしもうた。これが、僕の見解やね」
そう言って、アカツキの手が私のお腹を軽く触った。
だが、突然の事に驚き、立ち上がり威嚇した。
「え? 抱っこ? 抱っこして欲しいん?」
違うよ! 威嚇だよ! エセ関西弁男!! ずっと気になっていた。関西弁に似ていて異なる話し方! 違和感がすごい。まるで詐欺師みたいだ。
「おい。エセ関西弁? 野郎。ニーナは怒ってるんだよ」
私の鳴き声は動物のそれなので、代わりにルイスが代弁をしたが、その話を聞いたアカツキはショックを受けたような顔をした。
「ええ? エセ関西弁? よう分からんけど、僕は君たちに嫌われるのは嫌や! 僕は君達同様、獣人やで!! 獣人やで!!!」
二回も言った。えっ? 獣人?
その場で首を傾げたのは二人だけ。私とルイスだ。と言う事は……彼の言っている事は嘘ではない?
「じゃあ、何で薬品の匂いに敏感じゃないんだよ」
ルイスの言葉に私もそうだ、そうだと片手を上に上げた。すると、それを見たアカツキは大袈裟に鳴き真似を始めた。
「そんなの当たり前やろ! 皆んなの病気を治すためや! 僕の医術の師匠が薬品を扱う人やったから、匂いには慣れたんや! その技術を僕は受け継いだから今も薬を作るために薬品を触ってるわけ! それに、この話し方は師匠の真似を見よう見真似したせいや!」
「…………じゃあ、何で、クマの人の毒は取り除く事ができなかったんだよ。薬品を使うなら、治せるだろ。怪しい奴」
またしてもルイスの言葉に賛同した。
「それは……僕も……実は毒にやられて……寝込んでいました。えへ?」
鳴き真似をやめて首を横に傾けた彼を信じられず、代わりにヴィルグに視線を向けると、大きく頷いていた。
「……なら、獣化してみろよ!! 獣人なら、出来るだろ!」
「…………えっ? 獣化……? 僕の? 本当に見たいん?」
アカツキは獣化する事に抵抗があるみたいだ。渋る彼を見ていると、獣人など嘘のように思ってしまう。そう考えていると、サキが側にやってきて、私に耳打ちしてきた。
「アカツキが獣人なのは本当だよ。でも、彼自身はその姿が好きじゃないんだよ」
何で?
「それはね……」
サキが説明する前にアカツキが叫んだ。
「分かったわ! そんなに言うなら、見せたる! よーく、その目を見開いて見ていろよ!!」
そして、彼本来の姿になった。




