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大きな船

 あれ? サキさんは?


 問いかけるように鳴くと、ルイスが反応してくれた。最近では私の言葉をルイスが訳すと言う形になっている。


「あいつは忘れ物をしたとか言って、戻っていった」


 ええ⁈ 間に合う? 私達はもう、港まで来ていたが、後ろを振り返っても彼の姿はない。そのため、大丈夫かな? と不安に思っていると、こちらに向かって手を振っている彼の姿が見えた。


「お待たせー!」


 そんなサキにヴィルグが顔を顰めた。


「おせえぞ……」


「あはははは。ごめんなさーい!」


 全く反省した様子がない彼は私達の側までやって来ると、にっこりと微笑んだ。


「ようこそ! 俺達の船へ!」


 大きな音を立てて目の前に現れたそれは私を驚かせた。


 大きな船……。見惚れるほどの大きな船は目を見張る物で、私は言葉を失っていた。


「驚いた?」


 ニコニコと上機嫌なサキに向かって、小さな手を一生懸命に動かして拍手した。音は鳴らなかったが……。だが、仕草だけを見て彼はさらに口角を上に上げた。


「大きいな……」


 ルイスも驚いていたが、シルルは無表情で船を見ていた。永く生きている彼女は船を見た事があるのかもしれない。


「足元に気をつけて乗れよ」


 ヴィルグが、シルルに手を差し出したが、彼女はそれをジッと見つめて首を傾げた。


「手を貸してんだよ……」


「ああ……」


 だが、いつまでも手を取らない彼女に彼は困ったように頭をかいた。そんな彼の様子を見ながら、彼女は船に乗り込んだ。勿論、彼の手を借りずにだ。


「リーダー……振られましたね」


「うるせえよ。それに、俺は振られてねえ。お前もさっさと乗り込めよ」


「はーい」


 そして、船に乗り込むと、視線が痛いほど身体にささっている。多分、興味本位からの視線だろうが、気まずい。


「悪いな。みんな、お前達に興味深々なんだ」


 そんな私たちの側にヴィルグが立った。


「自己紹介をしていこう」


 彼の言葉に頷いた瞬間だった。


「あらー! 大変! 可愛い子がたくさんよー!!」


 野太い声から男性なのかと思ったが、現れたのは長い髪をポニーテールにし、体格が良い身体はワンピースを着ている。


 おん……おと……? お兄……いや、お、お姉……どっちだ?


「あらあらあら……」


 戸惑う私達のすぐ側まで音を立てずに一気に近づいた彼に私は鞄から上半身を出して、両手を上げ威嚇した。ルイスも毛を逆立てて警戒し、シルルは無表情のままだったが、警戒していることはわかった。


「この身体の模様……どう見ても、レッサーパンダじゃない!!」


 えっ? えっ? 彼の言葉に私は困惑した。


「アイミー」


 ヴィルグが名前を呼んだ。すると、アイミーと呼ばれた彼はジッと私を見つめた後に「ごめんなさいね」と眉を下げて謝ってくれた。


「可愛すぎて、興奮しちゃったわ!」


「アイミーは可愛いものが好きだもんね」


「そうなのよ。可愛い物に目がなくて……勿論、サキ達も可愛いわよ。だけど……ゴツいのよね……」


 彼は深いため息を吐いた。そんな彼にサキは笑い、ヴィルグは頭を押さえていた。


「すまない。驚かせた……あいつも悪い奴じゃないんだ。ただ、我が強いだけで……」


「…………別に大丈夫よ」

「あんまり近寄ってほしくはない」


 シルルはいつも通り、飄々としているが、ルイスは警戒心がとけていなかった。そして、私は彼の言葉に引っ掛かりを覚えていた。何故なら、私の事をレッサーパンダと言ったのだ。この世界で私はコダヌキと呼ばれるのが当たり前だったので、彼の発言はおかしい。


「アイミーだけ、先に挨拶するのはずるいよ」


 ゆったりとした話し方で現れた人を見て、私達はまた、固まってしまった。

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