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一緒に生活②

 あの日からずっと一緒に暮らしている。といっても一緒に暮らし始めて一ヶ月は経っていない。


「ここ……ついてるわ」


 シルルはこちらに手を伸ばして口元についた食べかすをとってくれた。自分が子供の姿であることはわかっているが、中身は大人なので少し恥ずかしい。彼女から視線を逸らしてつぶやいた。


「……ありがとう」


 すると、シルルは目元を和らげた。

 並んで一緒に食事をするのもだいぶ慣れた。


「今日は何をするの?」


 それは彼女と暮らし始めてからの私の口癖だった。別に好きな事をしていいと言われているが、どこまで……勝手に、自由にしてもいいのか計りかねているからだ。そのため、一日が始まる前に彼女に問いかける。


「そうね……。食べ物が減ってきたから……買い物?」


 買い物。その言葉に大きく反応してしまった。丸い耳もピクピクと動いた。一緒に行きたい。街に行ったのは初めの一回だけだった。私の日用品を買うために少しだけ街に行ったのだ。その時に魔道具を初めて見た。魔力で動く道具。初めて見たそれに興味を惹かれて、その場でジッと見つめていた。そして、シルルが隣で一緒にジッと見つめ始めたのを覚えている。


「私も、行き……」


 行きたい。そう言いたいのに言葉に詰まってしまった。一緒に行くのは迷惑になるかもしれないと思ったからだ。それに、薬草園の世話だってある。薬草園というのは庭で育てている薬草畑の事だ。そこまで大きくないが、沢山の薬草が適当に生えている。シルルには何が生えているかわかっているらしいが、私は全て同じ雑草に見える。だけど、何かしたいと彼女にお願いして任されたのが薬草園の世話だったのだ。基本的には水やりが主な仕事だ。それが終えると「子供は遊ぶのが仕事よ」とボールを渡される。絵本を渡された時もある。だけど、中身が大人の私は薬草園に生えてある薬草の見分け方を勉強している。


 シルルは育てている薬草を使って、薬を作っている。主に頭痛薬や風邪薬のようなものだ。彼女曰く、生きていくために必要な小遣い稼ぎに作るらしい。


「ニーナ。私、一人だと寂しいから一緒に行きましょう」


「っ!!」


 勢いよく顔を上げると、目元を和らげると同時に少しだけ口角が上がった彼女の姿があった。


「食べ終わったら……準備ね」


 その言葉通り、食事を終えると出かける準備を始めた。シルルが私の準備の手伝いをしてくれる。左右に結んだ髪は高さが少し違うが、彼女が結んでくれた事が嬉しくて鏡の前で何度も見た。


「シルルさん。寝癖……」


 しかし、私の準備ばかりを手伝うので彼女の準備が終えていないのだ。頭には大きな寝癖がついている。


「あら……」


 だが、シルルは髪を手で軽く空くだけでやめてしまった。そのため、少しは落ち着いたが、寝癖はついたままだ。


「私がしてあげる」


 彼女を座らせ、急いで台座を持ってきてその上に立った。手にはもちろん櫛を持ってだ。

 せっかく綺麗な髪なのだから、しっかりと櫛でとかさないと。そう思って、髪を櫛で通すが結構引っかかる。サラサラな見た目と違い、首を傾げてしまった。


「よしっ!」


 思ったよりも時間はかかったが、サラサラになったと思う。その間、彼女が寝ていたとしてもだ。


「終わった?」


「うん! 綺麗になったよ」


 シルルは立ち上がると、私の頭を手で撫でた。


「ありがとう。助かったわ」


 撫でられた場所にゆっくりと手を伸ばして触れた。きゅっと唇を噛んだ。にやけそうになるのを我慢しているのだ。その様子をシルルはジッと見つめたが、何も言わなかった。


「さあ……いきましょうか」


「うん」


 全てを隠すようにフードを頭からすっぽりと被って、シルルと手を繋いだ。


「外は危ないから、フードを外すのは駄目よ」


 それは彼女との約束だ。初めて一緒に出かけた時もフードを取るのは駄目だと言われた。子供の獣人は珍しく誘拐されるかもしれないらしい。それは嫌なので、フードを深く被った。


「私の側も離れちゃ駄目よ」


 それも約束の一つだ。シルルの側を離れないこと。これも安全のためだ。もちろん、彼女から離れることはしない。


「大丈夫だよ。私は約束は守れる子だよ」


「ええ。知ってるわ」


 繋いでいる手に軽く力を入れた。すると、それに気づいた彼女も同じように軽く力を入れて返した。そして、お互い顔を見合わせて笑った。

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