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割れた魔道具

 部屋からシルル達が出てきた。


「シルルさん」


 私が駆け寄ると、彼女はすぐに抱きしめてくれる。


「大丈夫?」


「……私達は平気よ」


 私達は……その言葉はそれ以外の人。つまり、男の方には何かあったという事だろう。


「さっきの男はどうなったの?」


 サキの問いにシルルが素っ気なく答えた。


「死んだわ」


 その言葉に皆が息を呑んだ。何故、急に? 先程入った騎士団の男が殺したの? 様々な疑問が浮かび上がったが、彼女が無事ならそれでいい。

 しかし、ユナだけが顔を顰めていた。納得がいっていないのだろう。それに、二人以外は部屋から出てきていない。

 だが、私達が関わるべき話ではない。そう思ったのは私だけじゃなかった。


「それじゃあ……街で必要な物を買って、家に帰りましょうか」


「えっ?」


「挨拶は済んだでしょう?」


 首を傾げたシルルに苦笑した。彼女は男の死に興味がないのだろう。


「ユナ」


「ん?」


「じゃあ、しばらくは会えないから」


 そして、彼女に背を向けた。私は目を見開いて驚いた。


 それだけ? それだけなの? しかし、それは私だけではなかった。ユナがシルルの肩に手を置いた。


「説明は? 私に説明しろよ!!」


 その言葉にシルルはため息を吐いたが、彼女に説明を始めた。


「というわけなの。ルイスの羽が治ったら、戻ってくるわ」


「なるほどな……。よしっ! わかった!」


 ユナはニッと歯を出して笑うと、シルルの背を強く叩いた。叩かれた彼女は顔を顰めたが、激励だと感じたのか、目元を細めた。そして、ユナの背も思いっきり同じように叩いた。


「いてぇ!!」


「貴方も叩いたじゃない。それに……魔法をかけたの」


「何の?」


「内緒よ」


 シルルはそう言って、笑った。そんな彼女にユナも笑った。そして、私達はギルドを後にした。


 しかし、ギルド長の部屋では重苦しい空気が流れていた。


「魔道具から手が出たな」


 ディアナはそんな魔道具を見たことが無かった。その魔道具は空間を曲げたということになる。


「こいつは……確実に奴隷商と繋がっていましたね」


「そうだな。だが……口封じをされた……」


「この魔道具の残骸はこちらで預かっても良いですか?」


「ああ……私の手には余るからな。勝手にしろ」


 その言葉を聞いたヨハンは粉々になってしまった魔道具を全て回収した。しかし、それはもう、ただの石クズにしか見えた。


「それはどうする?」


 それというのは冷たくなった男の事だ。ヨハンは冷めた目で男を見た。


「後で引き取りに人を送ります」


「わかった」


 獣人の奴隷売買に関わった男だ。たとえ、亡くなったとしても皇帝は許さないだろう。そのため、男は安らかな場所で永眠はできないだろう。


「……それで? 彼女達と男の間で何があったのですか?」


 彼女達は事が起こった後にすぐに部屋から出した。奴隷商と関わりを持って欲しくないからだ。何故なら、エルフの彼女の側には小さな獣人が二人もいるのだから。


「実はな……」


 そして、ディアナはヨハンにギルド内で起きた騒ぎの事を話した。


「わかりました。後はこちらで対応します」


「……そうか。協力は惜しまないから、いつでも言ってくれ」


「ありがとうございます」


 そして、ヨハンもギルドから出た。リカルド達と合流するために。その時に、エルフの彼女とフードを被った少女、その彼女と手を繋いだ少年の後ろ姿を見かけた。


「皆が平和に暮らせる国に……」


 皇帝と初めて出会った時に彼が口にした言葉だった。その願いはまだまだ遠い事をヨハンは痛感した。

 獣人を人とも思わない人間がたくさんいる。許しがたい事だ。


「早く……奴隷商を捕まえてやる」


 握りしめる手に無意識に力が入った。だが、その事に気づいていないヨハンはすぐさまリカルドの元へと急いだ。その頃、リカルドは項垂れていた。


「うわあぁぁー」


 リカルドの目の前には粉々に割れた通信魔道具だった物があった。それは、少し前に遡る。


「リカルド様ー。何をやってるんすか?」


 ヨハンに頼まれて、男の通信相手を探すことになったリカルドは微量な魔力の流れを探していた。


「不可能を可能にしないと、某がヨハン氏に殺されるかもしれないから! 魔力の流れを必死に読んでいるの!!」


 アイラの目に映る彼はまるで不審者だった。地面に顔を近づけると、すぐに立ち上がり目を凝らしている。それを繰り返す彼を側から見ると怪しすぎて通報されるかもしれないとアイラはヒヤヒヤしていた。


「分かるんすか? 魔力の流れって……魔道具から出ている魔力っすよね?」


 魔道具という道具は元々魔法石から作られている。魔法石というのは魔力がこもった石である。そのため、魔道具を使うたびに微量の魔力が放出されるのだ。目では見えない上に感じ取れないほどなので通常は気づくことなどできない。


「そうだよ。どんな魔道具でも魔力は存在する」


「でも、男の魔道具の魔力知らないっすよね?」


「いや……男がいた辺りの魔力を見れば良い。某は魔力を見分ける事ができる天才であるため、その辺りで漂っている微量の魔力を追えばいいんだよ!」


 そして、そう言ったリカルドはまた地面に顔を近づけた。アイラはそんな彼の力はやはり本物なのだと改めて痛感した。何故なら、本当に男の通信相手まで辿り着いたからだ。魔塔主という肩書きは伊達では無かった。しかし、追い詰めたは良いが、突如通信伝達魔道具から手が出てきて相手の喉元を切り裂いたのだ。そして、魔道具は粉々に砕けた。


「ええーー⁈ 嘘でしょう⁈ 証拠がーー⁈」


 そして、リカルドは項垂れてしまったのだ。必死に手で魔道具だった物を集めるが、そこにあるのはただの石クズだ。


「リカルド殿?」


 そこで現れたのがヨハン。絶望的である。


「ヨッ、ヨハン氏〜? 早かったですな〜?」


 目を逸らした彼にヨハンは不審な目を向けるが、彼の側には倒れた人影を見てすぐに気づいた。


「そっ、某がやったんじゃないからね⁈」


 倒れた相手を見て自分がやったのではないかと疑われたと勘違いしたリカルドは焦ったように否定する。


「わかってる。それよりも……魔道具から手が出てきたりは?」


「えっ?」


「こちらでも似たような事が起きたんだよ」


 そして、二人の状況を照らし合わせた。


「ええ〜⁈ 同じ事が起きてるー⁈」


「ああ。そのため、王宮に戻って陛下に報告をしよう」


「良かった〜。某のせいじゃなくて……」


 小さな声で呟いたリカルドはホッと息を吐いた。


「何か?」


「何でもない⁈ 何でもないです! はっ、早く! 早く、戻りましょうぞ!」


 そして、三人は事態を皇帝に報告するために王宮に戻ることにした。

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