表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/64

怪しい男

 ユナがサキの元へと向かった後、シルルはソフィの元へと向かおうとしたが、壁に寄りかかった男が起き上がったのだ。別にそんな男に興味はなかった。そのため、彼の横を通り過ぎようとした時だった。


「くそっ……ユナの奴……ん? あれは……獣人の子供か……?」


 男はユナに胸ぐらを掴まれて壁に叩きつけられた男だった。そんな彼の視線は小さな子供二人に注がれていた。フードを深く被っているにも関わらず、二人の子供が獣人だと気づいた彼にシルルは警戒した。だが、まだ気づいただけだ。危害を加えなければそれでいい。そう思っていたのだが、男はそそくさとギルドの外に出たのだ。怪しい行動にシルルは彼の後に付いて外に出た。すると、男は周りをキョロキョロと見渡した後に懐から魔道具だと思われる道具をポケットから取り出した。魔道具など高価な物が多い。それなのに、身なりからして下級冒険者のように見える男が持つには不釣り合いだった。


「獣人の子供見つけた! 売れば、高値だ! 俺は、冒険者ギルドに戻って、そいつらの様子を伺う。奴らがギルドから出た後に狙おう」


 シルルは魔法で男の言葉を聞き取っていた。そのため、彼女の怒りは頂点に達する。


 男が隠れながら、ギルドに戻って来た瞬間だった。待ち構えていたシルルによって頭を掴まれて持ち上げられたのだ。細い腕のどこにそんな力があるのだろうかと不思議なほど、男の身体は宙に浮いた。


「私の子に何をするって……?」


 シルルの手に力が入る。男は何故、襲われているのかわかっていなかった。だが、口から出るのは苦しげな声だった。


「うっ……あっ……」


 騒ぎを聞きつけたギルド職員達がシルルの元に集まって来た。


「何をしているんですか?」

「ギルド内での争いは禁止しています!」


 何度も同じ言葉でシルルを止めようとしているが、彼女の手の力が弱まることがない。それどころか、さらに力が入った。そんな彼女の元に焦って来たのはユナだった。


「シルル! 何をしてんだよ!!」


 ユナの叫び声がやっとシルルの耳に届いたようだ。力を少しだけ緩めた。


「こいつは確かに最低な野郎だけども、お前が怒るのはおかしいだろ?」


 ユナは勘違いしていた。二人の子供を攫おうとした男ではなく、自分の元カレであり、付き合った後に他にも女がいる事がわかり叩きつけた男だと思っていた。


「どうして……? この男は……私の家族に手を出そうとしたのよ?」


「おっ、お前……私の事を家族だと思ってくれてたんだな……」


 シルルの言葉に照れたユナだが、すぐに我に返り、彼女の手を男から無理やり引き離した。離された男はその場で倒れ、咳き込んでいた。

 彼らの様子を遠巻きで見ていた私達の側にはサキが立っていた。ただ、いつもと雰囲気が違うのだ。ジッと男を食い入るように見つめているのだ。


「サキさん?」


 その様子が怖くて、彼の名前を呼んだ。すると、すぐにいつもの彼に戻った。


「どうしたの?」


「あっ……何でも、ない……です」


 だけど、様子が違うのは何故なのか聞いてもいいのか迷ってしまい、結局、言葉を飲み込んだ。


「そう? ニーナちゃんの質問にはいつでも答えてあげるから、何でも聞いていいよー」


 その言葉がどこまで本当なのかはわからない。その証拠に笑っているのに、視線は咳き込む男に向いている。


「だっ、大丈夫……です」


 私は彼から視線を逸らした。すると、男の大きな叫び声が耳に届いた。


「俺は何もしていないのに、この女がいきなり襲いかかって来たんだ!!」


 そんな男にシルルは冷めた瞳でジッと見据えた。少しでも動けばわかるな? と言っているようだった。


「うぐっ⁈」


 殺気にも似た視線に男はシルルから視線を逸らした。そして、すぐさま彼女の近くに立っているユナへと向ける。


「ユナ! 確かに俺はお前に酷いことをした。だけど、他の奴を使ってでも俺をどうにかしたいのかよ!」


「いや……私は何も頼んでねえよ……シルルが勝手に……」


 ユナの視線はシルルに注がれた。これでは、男に振られた腹いせに襲ったように見える。だが、シルルはそんな事はどうでもいいのだ。


「私の子供達を売ろうとしたでしょ……?」


 その声は酷く冷たい。そして、その言葉にユナは驚き、男を見ると、首を勢いよく横に振っていた。


「なっ⁈ おっ、俺は、そんな話しらねーよ!!」


「許さないわ……私の子に手を出そうとするのは……」


 ギルド職員はどちらの言葉が正しい物なのか測りきれなかった。そのため、一度二人を引き離そうとした時だった。


「……ねえ、お兄さん」


 サキが二人の子供を連れて男の前までやって来たのだ。そして、しゃがみ込むと、にっこりと笑った。


「こんにちはー」


 ニコニコとしながら、男に話しかけたサキの瞳は酷く冷めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ