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挨拶

「ニーナ、ルイス」


 シルルに呼ばれて彼女の元へと向かうが、サキは図鑑に夢中なのか椅子に静かに座っていた。


「どうしたの?」


「……ユナ達に一応伝えておこうと思うの」


「そうだね」


 ユナには伝えておく方がいいだろう。いつまで彼らの元にいるのかわからないのだから。


「旅の準備を終えたら、街に行くつもりよ」


 その言葉に私達は頷いた。そして、また、準備に戻った。


「ニーナちゃん。この本、ありがとう」


「もう読み終えたの?」


「うん。本を読むのは好きなんだ」


 以外な事実に驚いていると、彼は苦笑していた。


「そんな風には見えない?」


 素直に頷くと、彼は笑っていた。


「大丈夫だよ。よく言われるからね」


 ニコニと笑うサキに私も笑みを返した。すると、彼は顔を手で覆い隠した。


「笑ってくれた……嬉しい」


 彼は喜怒哀楽がはっきりとしている。そして、明るく元気な彼を好ましく思う。だが、今は準備の邪魔はしないで欲しい。そのため、近くにあった本をまた彼に渡した。


「……じゃあ、行きましょうか」


 その言葉に私とルイスは頷いたが、その横にはサキも立っていて「はーい!」と大きな声で返事をした。そのため、シルルは冷めた目を彼に向けたが、その視線をものともせずに私達に向かって「楽しみだね」と笑みを向けた。そんな彼にルイスは顔を顰めて距離を取ったが、彼はそんな事も気にせずににこにこと笑っていた。


「サキさんは精神が強靭だね」


 彼に向かってそう言うと「褒めてくれた!」と喜んでいた。別に褒めてはいないと言おうと思ったが、やめた。面倒くさい事になりそうだと思ったからだ。


 私とルイスは手を繋いだ。そして、前を歩くのはシルルだ。本当は彼女と手を繋ぐ予定だったのだが、ルイスがサキと手を繋ぐのは嫌だと言って、私と手を繋ぐことで話は落ち着いた。そんなサキは鼻歌を歌いながら、最後尾を歩いていた。


「ユナ」


 そして、ギルドに立ち寄ると探していた彼女が椅子に座っていた。だが、一人ではない。彼女の目の前には体格が良い男性が座っていたのだ。


 だが、シルルの声が届いていないのか、彼女は突如、男の胸ぐらを掴んで立ち上がった。


「えっ……?」


 驚愕したのは私とルイスだけで、シルルは平然とし、サキは笑っていた。そんな彼の様子に私は距離をとってしまった。


「ルイス」


 そのため、彼の名前を呼び、繋いでいる手を強く握ってしまった。そんな私にルイスは何も言うことはなかった。それどころか、サキから距離を取るために私を背に隠したのだ。


「ええ⁈」


 だが、その行動にサキは驚いていた。


「何で⁈ 俺から距離を取るの? ひどいよー」


 そんな彼にルイスは冷めた目を向けた時だった。


「テメェ!! もう一度、言ってみろよ!!」


 ユナの大きな声が響き渡った。それと同時に体格が良い男が壁に叩きつけられた。


「ぐはっ⁈」


 私とルイスは目を見開いてその光景に釘付けになり、言葉が出てこなかった。それなのに、サキはユナに向かって拍手を送り、シルルに至ってはもう話しかけてもいいよね? と言う感じでユナに話しかけに行っていた。あれ? 私達が変なの? と思っていると、ルイスが私の手を繋いだまま、ギルドの隅まで移動した。


「ルイス?」


「あそこは危ない。やばいやつばっかだ」


 それはそう。私も同意見である。


「危ないやつばっかだよねー」


 それなのに、サキまでも私達について来て、側に立っている。


「子供達だけじゃ危ないでしょ?」


 私の心を読んだように答える彼をジッと見つめてしまった。本当に心が読めるかもしれない。


「どうしたの? そんなに見つめて……サキくん。照れちゃうよ」


 クネクネとした動きをしながら、瞳を潤ませる彼に呆れた目を向けてしまった。


「はあ……」


 その時だった。ユナの大きな声がこちらまで届いて来たのだ。


「はあああああ!! お前ら馬鹿だろーー!!」


 その声にシルルは顔を顰めていたが、彼女の驚きは当たり前の事だろう。私も、一緒について行くとなって、驚いているのだから。それに、シルルの事だ。説明もなしに簡潔に「家を出て行く」と言ったのだろう。


「あははははは! 彼女、面白い人だねー」


 私は隣に立っているサキの楽しそうな様子に頭を抱えそうになったのは内緒だ。


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