決めた心
ルイスと共に部屋を出ると、シルル以外の二人が落ち込んでいた。と言うよりも、困ったようだった。それもその筈だ彼らの目の前には焦げた料理があった。もう、元が何の食材かわからない。
「あっ……二人とも、おはよう」
心なしか元気がないサキから挨拶された。その横で「おはよう」とヴィルグも挨拶してくれる。
「「おはよう」」
私とルイスも彼らに挨拶をした後に、すぐにシルルの元へと向かった。
「おはよう! シルルさん」
「おはよう。シルル」
すると、焦げた料理を載せたフライパンを持ったシルルがこちらを向いた。
「……二人とも、おはよう」
ルイスはその焦げた料理を見て、軽く顔を顰めたが、すぐに呆れたようにため息を吐いた。
「ニーナ」
「手伝うよ」
ルイスはシルルからフライパンを受け取ると、料理を始めた。それを私も手伝うのだ。
「シルルさんは座って待っていてね」
シルルは私の言葉に素直に従って、椅子に座った。だが、私達の近くに椅子を置いてだ。その様子に笑ったが、今は料理に集中した。
そして、出来上がった料理はいい匂いが漂う朝食だった。それを見たサキとヴィルグは自分たちの目の前のそれと見比べた。
「ニッ、ニーナちゃーん」
苦笑いを浮かべたサキが私の名前を呼んだので、側に近寄ると、まるで内緒話をするように小さな声で話しかけてきた。
「……あっ、あのさー。俺達も、そっちを食べたいなーって……」
「えっ? せっかく、シルルさんが作ってくれたのに?」
「……あっ、あははははは。そっ、そうだね……」
サキはゆっくりと私から離れて焦げた朝食を食べ始めた。だが、意地悪はこれくらいにして、サキのお皿に焦げていない目玉焼きを乗せてあげた。ヴィルグも同様にだ。だが、彼はそれを乗せる前に全て平らげていた。
「だっ、大丈夫?」
心配で声にかけると、彼は苦笑しながらも私の頭を撫でた。
「一晩泊めてもらっておいて、朝ごはんに文句をつけたりしねーよ」
「かっ、かっこいいね」
思わず出た言葉だった。すると、彼は目を見開いた後に笑った。だが、その言葉を聞いていたサキは「俺だって、食えるよ! 見てて」と焦げた料理を一気に食べた。
「だっ、大丈夫?」
私が心配して声をかけると、ヴィルグが笑った。
「そこは何て言うんだ?」
「あっ……。サキさん! かっこいいよ」
すると、サキも私の頭を撫でて「ありがとうー。やさしー。優しさが身に染みるー」と叫んでいた。
「ニーナ。俺も、焦げた料理を食べれる」
そこにルイスが入ってきて、焦げた料理を食べようとしていたので、私は急いで止めた。
「身体に悪いからやめておいて」
すると、私の言葉を聞いた二人は頭を手で押さえていた。その意味がわからずに首を傾げた。
「俺達も心配して欲しい」
「サキ、うるせえ」
その二人の会話は私の耳には届かなかった。そして、皆が朝食を食べ終えると、私は二人に話しかけた。ルイスと共にだ。
「ヴィルグさん」
「どうした?」
「あ、あのね……昨日の夜の話は覚えてる?」
「ああ。覚えているが……お前はどうしたいんだ?」
ヴィルグはルイスに問いかけた。その問いかけに彼は真っ直ぐに見返した。
「俺は空を飛びたい! もう一度、あの大空を飛ぶんだ」
「…………わかった」
その言葉に私とルイスは顔を見合わせた。
「だとよ。……エルフの姐さんはどう考えている?」
「「あっ……」」
シルルには昨日の夜に話しているが、ルイスの決意については何も言っていなかった。それに、今の今までに静かにしていた彼女にゆっくりと顔を向けた。
「……私は……ルイスの羽を治すのはいい考えだと思うわ」
その言葉に私とルイスはもう一度顔を見合わせた。だが、彼女の次の言葉にこの場にいる彼女を除いた全員が驚く事になる事を今はまだ誰も知らなかった。




