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夜中にこっそり

 私はシルルとルイスが寝ていることを確認すると、二人を起こさないようにゆっくりとベッドから降りた。例え、起きたとしても「トイレ」だと言えばいいだろうけど、起きないに越したことはない。何故なら、今から向かうのは彼らのところだったからだ。

 部屋から出ると、床に軽く布を敷いて寝ている二人を見つけた。体格が良い二人の寝る場所の確保が難しかったので、床で寝かせることにしたのだ。サキだけは引き攣った顔をしていた。


 二人は寝ていると思っていたのに、私が近づいた瞬間にヴィルグが目を開けた。サキはぐっすりと寝ている。知らない所なのによく眠れるな……。危機感を持った方がいいんじゃないの?


「何か……用か?」


 目を開けた事にも驚いたが、声をかけてくるとは思わなかった。


「なっ、何で……?」


 すると、彼は身体を起こした。そして、私をジッと見据えると、手招きした。そのため、少しだけ彼の近くに寄った。


「俺たちに話があるんじゃないのか?」


「…………」


「ずっと、チラチラとサキを見ていただろ? その視線に俺たちが気づかない筈がない。だけど、チビはあの坊主にずっと守られていたからな。俺たちに話すことができなかった」


 坊主というのはルイスのことだろう。そして、チビは私のことだ。


「ニーナ」


「はっ?」


「私の名前はニーナで男の子はルイス」


「ああ、名前か……」


 初めは何を言われたかわかっていなかったヴィルグだが、すぐに察して小さく笑った。


「それは……すまなかったな。いい名前だ」


 この人は優しい笑い方をするんだな……それに、私に向けられる瞳も優しい。


「それで……ニーナは何が聞きたいんだ?」


「仲間はたくさんいるの?」


「ああ。大事な仲間はたくさんいる。ニーナのような獣人もだ」


 ヴィルグの手は優しく私の頭を撫でた。


「獣人がいるなら……つばさの治し方ってわかる?」


「つばさ?」


「羽だよ。背中に生えるものだよ。鳥とかの羽」


「つばさの意味はわかるが……羽を治すってどういうことだ? お前はどう見てもたぬきだろ?」


「たぬきじゃなくて、レッサーパンダだよ」


「レッサー? たぬきの中の振り分けか?」


 この世界にはレッサーパンダは存在しないのか? だが、今はそんなことよりも羽だ。


「羽……ルイスの羽は治せる?」


「話があまり見えねえが……ルイスも獣人のガキなんだな?」


 その言葉に頷いた。そして、ヴィルグは何かを考え始めた。


「ルイスの羽は切られたのか? それとも、生まれた時からないのか?」


「……切られた、と思う。詳しいことは教えてくれてない」


「そうか……」


「治す事は……できる?」


 ニーナの言葉にヴィルグはすぐに答えを出す事はできなかった。何故なら、安易にできると答えると希望を持たせる事になり、できなかった場合にショックを与える事になるからだ。そんな彼とは裏腹に先程まで寝ていた筈のサキが答えた。


「できるかもしれないよ」


「サキ!」


「本当?」


 顔を明るくした私の頭をサキが優しく撫でた。だが、ヴィルグだけが顔を顰めてサキを見ていた。


「お前……無責任にそんなことを言うな」


「無責任って……俺たちの仲間に得意な奴がいるじゃないですか?」


「ん?」


「小さな彼の羽が生え変わるまでの補助道具を作れそうな奴ですよ」


 補助道具? その言葉に私は首を傾げたが、ヴィルグは何かを考え始めた。誰だか見当がついているのだろう。


「……そうなると、ルイスを俺たちの船に連れて行く事になる」


「えっ……?」


 確かに治すとなると、ルイスを連れて行かなければいけない。その事実に私は目を背けていた。


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