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変な二人組②

「リーダーが変なところに植えたせいじゃないですかー!」


「サキ、うるせえ。いい加減、静かにしろよ」


 若い男の名はサキ。姓はない。表情がコロコロと変わる彼とは違い、ムスッと顔を顰めていることの多い男の名はヴィルグだ。サキにはリーダーと呼ばれ慕われている。そんな二人はとある事情からある草を探していた。それはヴィルグが数年前に植えたものだった。だが、必要になった今、どこに植えたのか思い出せず、たどり着いた先がシルルの家だったのだ。


「でも、どうするんですかー? 俺たち、急いでいるんですよー」


「チッ」


「舌打ちー」


「俺だって、あんなにヤバそうなエルフが住んでいるなんて思いもよらなかったんだよ」


 ヴィルグはせいぜい、軽く魔法が使える程度の盗賊ぐらいが住んでいると思っていた。だが、実際はとんでもない強いエルフと小さな獣人の子供が二人。頭を抱えていた。


「ですよねー。しかも、あんなに小さな子供をリーダーのせいで風で吹き飛ばしてしまったし……」


「そっ、それは……しょうがないだろ」


 苛立った様子を隠そうとしないヴィルグに呆れたような顔を向けたサキ。そんな二人の会話に割り込むように目の前に温かな湯気が立つスープが置かれた。それを思わず食い入るように見つめたのはサキだった。


「えっ?」


 そこに立っていたのはシルルだった。無表情な上に何の感情も浮かべていない冷たい視線が二人に注がれた。


「……ニーナが……あの子が貴方達がお腹を空かせているって心配しているから……」


 シルルの視線が一瞬、窓の方に映った。その視線を追うように二人の視線も窓へと向く。すると、そこにはジッとこちらを見る小さな少女がいた。だが、ニーナはサキとバッチリと目が合ってしまい、すぐに隠れた。


 気づかれた。私を見る目が羨望の眼差しだった気がしないでもない。そう思い、もう一度、窓の外を覗き込むと、縄が解かれてスープを食べている姿が見えた。


「良かった……」


 二人が食べている姿を見て安堵していると、隣にルイスがやって来た。


「一日ぐらい食べなくても大丈夫だ」


「でも、お腹空いたら……可哀想」


「…………あっそ」


 ルイスは私の言葉に対して思うことでも合ったのか、その場を離れてまた、本を開き直していた。その事に少しだけ悲しくなってしまった。本当に少しだけだが、私の言葉の何が駄目なのかわからなかった。


 ルイスは本を開くふりをしながら、そっとニーナを覗き見た。別に彼女が悪いわけではない。少し前の自分を思い出してしまっただけだった。お腹が空いたら……可哀想。その言葉に自分は可哀想だったのかと想像してしまった。ただ、それだけだった。


「……お腹空いたら……嫌だもん」


 その言葉は誰の耳にも届かなかった。一方、ニーナが見ていない窓の外では凍える空気が漂っていた。


「べっ、別に俺たちは怪しいものではないんです!」


 スープを食べ終わったサキが懸命に弁明をはかるが、彼女は未だに怒っていた。理由があるにしろ、結界を壊して入って来た人間だ。それも、小さな子供二人を吹き飛ばしてだ。


「なら、さっさとこの場から出ていく事ね。そして、二度とこの森に立ち入らないで……」


 シルルの指が森の奥を指差した。さっさと行けという意味だと理解したが、二人は動かない。


「……あのー、エルフのお姉さん。俺たち、探し物があるんです。だから……」


「だから?」


 シルルの冷たい声にサキが一瞬押し黙りそうになったが、ヴィルグが彼女に向かって頭を下げた。


「すまないが、あの庭を探させて欲しい」


 あの庭というのは、シルルの薬草園だ。最初に目にした時にもしかしたら、という希望を見出していた。


「…………何を探しているの? あそこは薬草しか植えていないわ」


「……獣人に使う薬草だ」


 獣人。その言葉がシルルの耳に入った瞬間、二人の頬が切れた。二人の間に鋭い風が通り抜けたのだ。彼女の魔法だった。サキは苦笑し、ヴィルグは深いため息を吐いた。


「誤解はするな。獣人の薬に使うものだ。奴らは人の薬が効きにくい……」


 そう話すヴィルグは顔を顰めた。


「…………毒草が?」


 シルルは彼らがいう薬草に心覚があったのだ。


「そうだ。人には毒草になる場合があるが、逆に毒に侵された獣人に使うと、毒と毒を消し去る作用に変わる……あんた、その薬草を持っているだろ?」


「そうね。昼間、私の家の小さな子供達が見つけたわ」


「なっ、なら……」


 サキの嬉しそうな言葉にシルルが言葉を被せた。


「貴方達が怪しい事には変わりないわ」


「そっ、そんな……」


「……だから、貴方達が何者なのか……教えて欲しい」


 その言葉に二人は顔を見合わせた。

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