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シルルはやばい人?

「何だと⁈」

「あいつが燃やしたって?」


 ほら、やっぱりやばいよ。目を見開いたままシルルを見ると、彼女は首を傾げていた。えっ? なんで? そんな疑問が頭に浮かんだ時だった。彼女は口を開いた。


「貴方達の小屋は燃やしました」


 シルルは激怒している彼らが見えていないのかと思うほど、淡々とした様子で同じ言葉を繰り返した。

 すると、先頭に立っていた大柄な男が大股で歩いてきて、私達の前に立った。顔には大きな傷がある。それに、目の前で見るとその男がどれだけ大きいかよくわかる。その鋭い視線には背筋が冷えた。シルルの服を掴む手に力が入る。


「シッ、シルルさん……」


 私の瞳には涙の膜が張っている。それを見た大柄な男は大きく笑った。


「がははははは! たぬきが泣いているぞ! 可哀想になあ」


 それに釣られるように男の仲間達が大きな声で笑い始める。そして、大柄な男はそのまま嫌な視線をシルルに向けた。上から下までをジロジロと見て、まるで商品でも見定めるような目だった。


「燃やしたなら……その責任を取るのが……筋だろうよ」


 大柄な男はそう言うと、下卑な笑みを向けた。


「あんた……エルフだろう。それに、そのチビは獣人だ。二人合わせて高く売れるだろうよ」


 その言葉にシルルのこめかみがピクッと動いた事に気づいたものは誰もいなかった。私は男の言葉に震えるだけだったからだ。これからの生活が一気に不安になった。そして、男たちも目の前のか弱そうな女子供、二人よりも自分達の方が上だと余裕をかましていたからだ。


「それは良いな!」

「こんな小屋よりも良いところに住めるぞ!」


 大柄な男の仲間達は一気に騒がしくなった。誰もが私達を商品としか見ていないのだ。


「大人しくしとけよ。そうすれば、痛い目には合わないからな。まあ……エルフの姉ちゃんはわかんないがな……がははははは!」


 そう言って、大口を開けて笑う男は私に向かって手を伸ばして来た。


「この世は弱肉強食の世界だ。強い者が偉いんだ。だから……お嬢ちゃん。恨むなら、この世の中にしろよな」


 ギュッと目を強く瞑ったが、いつまで立っても何も起きない。そのため、ゆっくりと目を開くと、シルルの綺麗な手が男の口を押さえたまま、その大柄な身体を片手で持ち上げていた。


「えっ?」


 シルルは苦しそうにもがく男に冷めた視線を向けていた。その顔は無表情なため、私は彼女に恐怖を感じてキュッと口を閉じてしまった。


「小さな子供に何をしようとするのかしら?」


 そう呟いたシルルは掴んでいる男をそのまま仲間達に向かって投げた。


「ボッ、ボス⁈」

「なっ、何て力だ!」


 驚いている彼らは大柄な男を取り囲みながら、騒いでいた。


「何をしているんだ! はっ、早くあいつをやっつけろ!」


 大柄な男は起き上がり、叫んだ。すると、男たちは武器を手に持ち、こちらに視線を向けた。


「ここで待っていて。私が守ってあげる」


 シルルは小屋と男たちから少し離れた場所に私を抱っこで移動させた。そして、男たちに対峙した。


「シッシルルさん!」


 心配だ。例え、力が強くても相手が多い。そう思って、叫んだのだが…………心配無用だった。

 何故なら、彼女は強かった。物理もそうなのだが、魔法で一瞬だった。あっという間に男たちを倒してしまったのだ。


「ええ……」


 シルルは男たちを縄で縛ると、ゴソゴソと男たちの衣服や持っていた物を漁り始めた。


「えっ⁈」


 驚いて、彼女の元へと急いで走っていくと、シルルは「走ると危ないわ」とだけ言って、手元を動かすのをやめなかった。


「なっ、何をしているんですか?」


 恐る恐る彼女が何をしているのか気になって聞いてみると、返って来た答えは淡々としていた物だった。


「この世は弱肉強食らしいから……勝った私は彼らから持っている物をもらおうと思って……生活するにはお金が必要でしょう?」


 確かに必要だが……そんなことをしても良いのかと不安になる。


「大丈夫よ。近くに立ったとしても貴方に危害を加えないように叩きのめしているから」


 私の不安を別の意味で捉えた彼女の言葉にチラッと縄で縛られた男たちを見ると、目を閉じて気絶していた。


「この人達はどうするの?」


 シルルは男たちから奪った物を手に持ったまま、パチンッと指を鳴らすと大きな音を立てて空に花火が上がった。


「わあ……」


 指先一つで花火が上がった事に感嘆の声と共に目の前の彼女の存在が異質に感じてしまった。


「これで、この街の警備隊がやってくるはずよ」


 シルルは私に手を差し伸べて来た。


「さあ、帰りましょう」


 差し出された手と彼女の顔を交互に見た。帰ると言われても私には帰る場所がない。


「どっ、どこに帰るの?」


 震える声で聞くと、シルルは目元を和らげた。そして、彼女は穏やかな声で私に言った。


「私の家よ」


「えっ?」


「さあ……一緒に帰りましょう」


 その言葉に自然と手が伸びた。彼女の手は冷たいと思っていたのに、想像していたよりも暖かかった。

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