待っている間に
彼らが部屋に篭ってから一時間は経った。その間、シルルと共にいるが、何度も扉を確認してしまう。何故なら、部屋から物音一つしないからだ。
「……大丈夫かな?」
私のその問いにシルルは「大丈夫よ」と答えてくれる。その度に扉を見て頷く。だけど、少ししてまた、私は彼女に聞くのだ。
「……大丈夫かな?」
「……ニーナ、おいで」
すると、彼女が私を手招きした。そして、椅子に座らすと目の前に湯気が立ったコップを置かれた。
「温かなミルクよ。それと、ユナが持って来たクッキーもあるわ」
目の前には美味しそうなクッキーも置かれた。それを一枚手に取り、口に入れる。そして、少し冷ましてからミルクも飲み込んだ。
「……美味しい?」
目の前に座るシルルが優しげな瞳を私に向けた。その言葉に小さく頷いた。
「もっと、食べて」
だが、その言葉には首を振った。
「あっ、後から……ルイスが戻って来てから食べる」
こんなに美味しいのだ。きっと、彼も食べたい筈だ。食べている彼の姿を思い浮かべて小さく口角を上げた。
「わかったわ。このクッキーは彼が起きてからね……」
私はもう一度、彼らがいる扉を見つめた。
「どうして、音がしないの?」
「……私が防音の魔法をかけての」
シルルが私の問いに答えてくれる。だが、その答えに私は首を傾げた。
「どうして?」
「シュールに頼まれたからよ」
防音にして欲しい……。そんなことを頼む理由は一つ考えられた。ルイスの声を聞こえないようにするためだ。魔法の解除に痛みがないとは限らない。そのため、痛みから出たルイスの言葉に私が反応しないためだろう。
「……魔法を解くのは……痛い?」
小さな声なのに、シルルの耳にはしっかりと聞き取った。
「……ルイスなら、大丈夫よ……」
その言葉で魔法の解除に痛みがあるのだとわかった。私は自分が何もできないことに悔しい気持ちになった。
「私にも……何かできることがないかな?」
その言葉にシルルは立ち上がり、私の手を引いた。
「どこに行くの?」
シルルは私の手を引いて外に出た。ついた先は薬草園だ。そして、彼女はすぐ側でしゃがみ込み、雑草のような見た目の草と可愛らしいが珍しい形の花を摘んで私に見せた。
「……これを集めてくれないかしら?」
「これは……?」
彼女からその草と花を受け取り、首を傾げた。
「この二つを混ぜると……甘いものに変わるのよ」
「……甘い、もの?」
「ええ……甘いお茶になるのよ。クッキーのお供にするの? だから、ニーナ。手伝ってくれないかしら?」
その言葉に私は首を何度も縦に振った。そして、すぐにその二つを見つけるために動いた。そんな私の様子を見たシルルは気づかれないように安堵の息を吐いた。だが、探すのに夢中でそんな彼女の様子に気づかなかった。
シルルから教えられた草は雑草と見分けがつきにくい。その上に、生えていても枯れかけているものが多く、中々見つけるのに苦戦した。だが、花の方は草よりも多く生えており、たくさん取ることに成功した。そして、摘み終わると部屋に戻って、彼女と一緒に二つの草花の茶葉作りを始めた。彼がクッキーを食べて、このお茶を飲んで笑っている姿を想像しながら。




