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魔法の解除

「僕はシュール。君の隣のお姉さんの弟だよ。よろしくね」


 シュールは私の前にしゃがみ込み、手を差し出してくれた。それに恐る恐る手を伸ばした。


「ありがとう。僕とも仲良くしてくれると嬉しいな」


 その言葉に何度も首を縦に振った。彼はシルルとよく似ている。だが、一見冷たく見えるが、表情が豊かだ。それに、私に話しかける声が優しい。


「シュール。この子がルイスよ」


 シルルに言われてシュールの前にルイスが立った。


「彼の足に施された魔法を見てほしいの」


 ルイスはズボンの裾を軽くあげて奴隷紋を彼に見せた。すると、それを見たシュールは顔を顰めた。そして、その魔法に手を伸ばして確認し始めた。


「……どうかしら?」


 彼女の言葉にルイスは息を呑んだ。私もそれを静かに見守った。


「複雑ですね……」


「……無理かしら?」


「いえ……。時間を要することになりますが、一つ一つ解いていけば、大丈夫ですよ」


 シュールはルイスに向かって安心させるように微笑んだ。


「本当に? 本当に解けるのか?」


 ルイスは信じられないようで何度も彼に問いかける。彼はその問いに何度も頷いて「大丈夫」だと答えていた。彼の言葉を聞いて、私は小さく息を吐いた。もしかしたら……とネガティブなことを考えてしまっていたのだ。そのため、よかった。本当によかった。緊張が少し解けた。


「ルイス。よかったね」


 私は彼女は彼の側に行き、手を握った。その手を彼は握り返してくれる。そんな二人の様子を見たシュールは小さく微笑んだ。


「仲が良いんだね」


 その言葉は私達には聞こえなかったが、シルルの耳には届いたようだ。


「そうね……ニーナに友達ができてよかった。シュール。ニーナの友達をよろしくね」


「圧が強いな」


 シュールは苦笑しながらも、彼に施された魔法を解くことに専念した。


「ルイス君。少し痛みが伴うこともあるけど、大丈夫かな?」


「ああ」


「わかった……姉さんとニーナちゃん。僕達は隣の部屋を借りる事にするよ」


「えっ?」


 私は彼の手を握ったまま首を傾げた。すると、彼は困ったように笑ったが、すぐに真面目な顔をした。


「この魔法を解くには時間がかかる上に痛みも伴う。だから……」

「俺はそんな姿をお前達に見せたくない」


 シュールの言葉に被せるようにルイスが私の手を強く握り返してから言った。


「でも……」


 私は心配である。シュールを信じていないわけじゃない。だけど……どうしても、ルイスと二人にきりにするのは心配してしまう。だが、そんな私に対してルイスはゆっくりと手を離して私を軽く押した。


「俺は大丈夫だから、大人しく待ってろ……」


「…………わかった」


 私はゆっくりと彼から離れた。すると、シルルが私の側に来てその身体を持ち上げた。


「ニーナ……シュールは出来る子よ。信じて待ちましょう」


 私は彼女の背中に手を回して、小さく頷いた。それを見たシュールは小さく安堵の息を吐いた。


「じゃあ、行こうか? 覚悟はいいかな?」


「当たり前だ」


 私はルイスとシュールの背中を見送った。次に部屋から出てくる時はきっと彼に施された魔法が解ける時だろう。そう信じたい。

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