目が覚めた彼
寝ていたカラスはゆっくりと目を覚ました。それに気づいた私はすぐさま彼の元へと向かう。
「ん……?」
ルイスは目覚めると、すぐ近くに座っている動く小さな茶色い塊に一瞬驚いたが、すぐにあのコダヌキだと気づいた。そして、そのまま人型へと姿を変えた。
「俺……」
起きた? 大丈夫? 身体はしんどくない? 何度も彼の周りをくるくると回った。すると、身体がふわりと浮いた。ルイスが私を抱き上げたのだ。
「ちょこまかと動くなよ。目が回るだろ……」
ごっ、ごめんね。気持ちをこめて小さく鳴くと、彼は呆れた様子でため息を吐いた。
「怪我は……大丈夫か?」
自分のことよりも私のことを心配してくれる彼に嬉しくて、彼の頬を舐めた。
「大丈夫なら……いい。それよりも……俺は……何、して……」
これまでのことを思い出そうとして、辺りを見渡した彼の視界に映ったのは倒れている三人と首を傾げたエルフの女性だった。
「えっ⁈ はっ⁈」
目を見開いて驚いた彼の様子に私は苦笑した。この様子を見たら、驚くよね? だって、シルルさん以外、倒れているんだもん。だけどね、彼らは寝ているだけなんだよ。
「何が……あった?」
息を飲んで様子を見渡している彼に安心してもらうために私はシルルさんを呼んだ。
すると、こちらに気づいたシルルは三人を避けながら、こちらにきた。
「起きたのね……。調子はどう? 熱は下がったと思うんだけど……」
だが、そんな彼女を警戒していた。私を抱きしめる手に力が入っている。
「……ニーナ」
シルルが名前を呼ぶので元気よく返事を返した。彼女は危なくないよって彼に伝わるように。まあ、そもそもの話、目の前で倒れている彼らのせいでもあるよね。彼が警戒するのは……。
彼らが倒れているのはシルルが作った特製の薬草スープのせいだった。ユナがお腹が空いたと騒ぐのでシルルが作ったのだ。そして、今回は火加減を成功させていた。だが、スープに入れた薬草がやばかったのだ。エルフの彼女は元気になるようだが、人が食べると睡眠作用が働くものだったのだ。それを本で読んでいた私は言葉を失ってしまった。だが、それを飲んだ後に起きると身体が軽くはなる。そのため、私とシルルは彼らを倒れたままにしていたが、そのタイミングでまさかのルイスが起きてしまったのだ。
私は彼の身体から抜け出して、シルルの元へと向かった。そして、彼女が私を抱き上げた様子を見たルイスは少し、警戒心を緩めた。
「……身体はらっ、楽に……なった」
ルイスはシルルから目を逸らして答えた。
「そう……」
彼女はそれだけ聞くと、彼から離れた。だが、それに焦った様子を見せたのはルイスの方だった。
「おっ、おい! 俺は……どうして……?」
彼はどうしてここにいるのか分かっていなかった。それに、倒れている騎士達を見て、これからどうなるのか不安に駆られたようだった。
私はそんな彼の様子を見て、彼女に向かって鳴いた。彼に説明してあげて! それと、助けてあげて! すると、シルルは私を見た後にルイスに視線を移した。
「分かったわ。何があったのか……説明してあげる」
そう言うと、彼女は私を彼に渡し、台所へと向かうと、コップにお茶を注ぎ、彼を手招きした。それを確認したルイスはゆっくりと彼女の元へと歩いて行った。もちろん、倒れている三人を避けながらだ。そして、彼女の前の席へと腰を下ろした。私を抱っこしたままで。
「じゃあ……説明しましょう」
その言葉通り、ルイスを助けた経緯と熱が出ていたので介抱した話、そして、騎士二人がやってきた理由などを簡易的に説明した。




