騎士の二人
第三騎士団所属である騎士のジャン・ウェルダンは後輩の騎士であるヨハン・スムーズと共に昨晩捕まった女性店主とその娘が奴隷商人から買ったと思われる奴隷の子供について話を聞きにきていた。この国では奴隷制度は禁止とされている。それに、獣人差別もだ。さらに、人身販売などもってのほかである。それなのに、その親子は子供を買って奴隷として働かせていた。
「胸糞悪いな」
「先輩は子供好きですもんね。それに、小さな小動物も」
ジャンがこの件にあたったのは彼が子供に優し上に獣人に対しても差別意識が全くと言っていいほどないからである。ヨハンもそうだ。彼は誰に対しても平等に接する上に空気も読めるからだ。二人は奴隷商人を捕まえるためと奴隷には必ずと言っていいほ身体の一部につけられている奴隷紋を確認するために話を聞きにきたのだが……。
「先輩」
「何だ?」
「コダヌキを見過ぎです」
件の子供が寝ているため、起きるまで待つことにした二人は部屋でお茶をご馳走になっていた。共に来ていた冒険者達は依頼があるからと先に出て行ったが、二人は奴隷紋は確認できたので、そのまま一度去っても良かったのだが、シルルにお茶でもどうぞと言われ、そのまま席に着いたのだ。
シルルさん。何で、お茶を勧めたの? その彼女は現在、ユナと共に彼の足にあると言われる奴隷紋というものの確認をしながら、話し合っている。私は騎士達が変な行動をしていないか見張っている。今はお茶を飲んでいるだけだが、豹変して彼を襲うかもしれないと警戒しているのだ。……あんな微笑まれたぐらいで絆されないんだから! そう思いながら、チラッとシルル達を確認した。
……そもそも、奴隷紋? って、何? でも、奴隷と名前がついているなら、いいものではないだろう。そう思っていると、いつの間に近づいて来たのか、目の前には騎士の一人が立っていた。
シルルさん! シルルさん! 騎士が騎士が! 大声で叫びたいのに、驚いて声が出なかった。その代わりに立ち上がり、両手を上に上げて威嚇した。
「……っ!! かわいい……」
彼が何かを呟いたが、聞き逃してしまった。そのため、怖くてさらに威嚇した。すると、目の前の彼が手を伸ばしてきたのだ。
「……抱っこしてほしいのか?」
そんなことを呟いてきたので、伸びてきた手を払い落とした。
違う! 全く違う! 首を横に振り、さらに警戒して両手を精一杯上げて威嚇した。
「先輩。抱っこじゃないんじゃないですか?」
ヨハンが開かれた様子でジャンに近づき、私を目で確認した。
「どう見ても嫌がっているじゃないですか」
「しかし……先程、あのエルフの彼女が抱っこしていたじゃないか」
「あれは、信頼関係ができているからでしょう。俺たちは今日初めて会った上にコダヌキの友達に勝手に触れようとした変な奴らって認識だと思うんですけど」
正解! チャラそうな男に見えたけど、よく見ているね。私は彼の言葉に何度も頷いた。
「それに、俺らの言葉もわかってるみたいですしね」
「賢いな!」
「獣人だからでしょう」
私はさらに何度も頷いた。
ヨハンは目の前の何度も頷く獣人の子供を見ながら、首を傾げた。
「ヨハン、どうしたんだ?」
「ん? ああ。子供って言っても……人型になれるはずなんですけどね。この子は獣のままだなって」
私も人型になりたいんだよ……でも、戻り方がわからない。だんだんと不安になり始めた。そのせいで口から悲しげな声が出てきた。
「えっ⁈」
それに焦ったのはジャンとヨハンだ。
「何……してるの?」
そんな二人のすぐそばまでやってきたのは冷気を漂わせたシルルだった。そして……この後、怒ったシルルによって、二人の騎士は正座をさせられた。それを見ていたユナは大爆笑で彼らのことを揶揄っていた。




