訪問者②
私は玄関で話す彼らの様子をしっかりと目を開けて見つめた。先程まで眠気に襲われていたが、訪問してきた人間が隣で寝ている彼を連れて行ってしまうかもしれないと不安に駆られたからだ。そのため、寝ている彼を隠すように横になった。彼らの会話も聞こえたら良かったのだが、所々しか聞き取ることができなかった。
「そっ、それで……俺たちが来た理由なんですが……」
アレクは説明するために、身体を横にずらして、二人を呼んだ。もちろん、エレナとラルフではない。
「……誰?」
シルルは現れた二人に警戒心をあらわにした。何故なら、彼らはこの国の騎士団の制服に身を包んでいたからだ。
「私達は第三騎士団に所属している者です」
警備隊ではない彼らが一体? そんな疑問が浮かび、訝しげな瞳を彼らに向けた。
「騎士団が何のようだよ?」
ユナが現れた二人に鋭い視線を向けた。
「獣人の子供が奴隷として店で働かされていた話についてです。その子供本人に話を聞くことはできますか?」
シルルとユナは顔を見合わせた。
「……聞いて、どうするの?」
「奴隷商を一網打尽にするためと、きっと彼の身体のどこかに付いている……奴隷紋の確認をするためです」
彼らの話は嘘ではない気がしたシルルは部屋に入れた。そして、件のカラスが寝ている場所まで移動した。
こっちに歩いてきている。どうして? それに、昨日の冒険者じゃない! 二人の腰には剣もある!
私は彼を守るように両手を上に上げて立った。彼らを威嚇するためだ。
「そのコダヌキは?」
「……ニーナ」
「?」
「だから、ニーナよ」
シルルは騎士の二人を真っ直ぐに見て、そう言った。
「えっと……」
彼女の答えに困惑している騎士にもう一人の騎士が耳打ちした。
「先輩。多分名前です」
「あっ、ああ……なるほど」
そして、先輩と呼ばれた彼はもう一度コダヌキに視線を移した。
こっちを見ている! 彼は私が守らないと! そう思って、彼らに警戒するような視線を向けた。すると、私の目の前にシルルが立った。
「抱っこかしら?」
違う! 違うよ! これは、威嚇だよ! あと、私はレッサーパンダ! そう言いたいのに、口から出るのは動物の鳴き声だ。そこでふと、思ってしまった。どうやって人型に戻ることができるのか? と。そう思っていると、身体が浮いた。
「っ⁈」
「ニーナ」
シルルが私を持ち上げて抱っこしたのだ。
「やっぱり、コダヌキの名前でしたね」
「そうなのか……コダヌキの名前……」
シルルさんが私を持ち上げてしまうと、後ろにいたカラスが丸見えになってしまう。
「この子が例の子ですか?」
騎士の問いかけにシルルは頷いた。だが、騎士が触ろうとした瞬間にカラスの目が開いた。そして、差し迫る手に驚いて、慌てた様子でバタバタと暴れ始めた。
「あっ! こらっ、やめ……」
必死に抵抗する彼を止めようとする騎士達だったが、興奮状態の彼には周りが見えていなかった。そのため、シルルが魔法を彼に向かって放った。すると、彼は大人しくなった。
騎士二人はそれを見て、驚いた後にシルルに向かって頭を下げていた。私も驚きすぎて、固まってしまった。
「大丈夫よ。眠らしただけだから……」
彼からは小さな寝息が聞こえてきた。私は彼の隣に行こうとシルルの腕から逃れようとした時だった。
「先輩。この子の足に奴隷紋を見つけました」
騎士の一人が彼に触れて足を確認していたのだ。それに対して、触るなという思いをこめて威嚇するために鳴いた。すると、先輩と呼ばれた騎士の彼がこちらに視線を寄越した。
「すまない。君の友達に勝手に触れてしまって……」
そして、私に向かって頭を下げてきたのだ。驚いて、シルルにしがみついた。すると、彼女は背中を優しく叩いた。
「ニーナ。彼らは第三騎士団の騎士で……その子の話を聞きにきたのよ」
話を聞きにきた……。チラッと謝ってきた騎士の彼に視線を向けると、微笑まれた。
私は恥ずかしくなり、もう一度、シルルにしがみついた。




