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救出②

 シルルが来てくれたことを喜んだ私はルイスの腕から離れようとしたが、突然現れたシルルに彼は警戒して距離を取ろうとした。そのため、私をさらに強く抱きしめた。


「私の……可愛い子に何をしたの? 聞こえないの?」


「ぐっ……」


 壁に押さえつけられた青年はくぐもった声しか出せない。そんな彼の様子を見た女は叫んだ。


「かっ、彼を離しなさいよ! わっ、私達はただ、かっ、彼らを助けようとしただけよ!」


 その言葉にシルルは彼女に一瞬視線を寄越した後にルイスに目を向けた。だが、シルルの目に映るのは怪我をした少年。そして、その彼が抱いている小さな茶色い塊。


 シルルさん! 私は彼女に向かって鳴いた。すると、シルルは青年から手を離してルイスの元へと向かった。


「なっ⁈」


 それに驚いたのは、ルイスだ。


「くっ、来るな!」


 大きな声で彼女に向かって叫ぶが、そんなことでシルルの歩みが止まるはずがない。何故なら、彼女の瞳には1匹の子供にしか目が入っていないからだ。


「ニーナ」


 優しく呼びかける声に私は身体を動かした。


「おっ、おい……大人しく……」


 だが、ルイスがどんなに止めようとしても結局は彼の腕から離れた私はシルルの元に走った。


「……ニーナ」


 私、今……レッサーパンダの子供だよ? 私だって、わかるの?


 そんな思いで小さな声で鳴くが、それは心配無用だった。シルルは私を抱き上げて優しく抱きしめた。


「分かるわ……。ニーナ。私の可愛い子。良かった……無事で……」


 優しい抱擁に私の目から涙が溢れた。そして、何度も彼女に謝った。ごめんなさい、ごめんなさい。勝手にいなくなって……ごめんなさい。


 その場には小さな可愛らしい動物の声が響き渡った。その様子を見ていたルイスは安堵していた。シルルが昨日ニーナと一緒にいた人だと気づいたからだ。そして、ルイス一人じゃどのみち助かることができなかった。だから、シルルが来た事で力が抜けたのだ。


「……よかった……」


 私はルイスのことを思い出して、そちらに目を向けると、彼は倒れていた。


「っ!!」


 私はシルルの手から抜け出し、ルイスの元へと向かった。そして、ひどい汗に苦しそうな様子の彼に焦り、周りをウロチョロと動き、額の汗をぺろぺろと舐めた。


「ニーナ?」


 助けて! シルルさん! ルイスを助けて! シルルに向かって鳴くと、彼女の視線は倒れている彼に向いた。そして、ルイスの元に行き、彼の様子を確認した。


「……ひどい怪我……」


 そして、次に視線を向けたのは青年と女性だ。


「おっ、俺達は助けようとしただけだ!」


「そっ、そうよ!」


 今すぐにでも逃げようとしていた彼らをユナが退路を塞いで逃がさないでいてくれたのだ。


「おいおい。私の目が悪いっていうのか? 怪我した子供とその子供が抱いていた小動物。そんな子供達を足蹴にしていたお前が助けようだって? そんな嘘が通じると思ってんのかよ?」


 その声は不機嫌で今すぐにでも彼らに手が出そうだった。


「くっくそ……」


 青年は言い逃れできないと察したが、女性の方は違う。声高らかに叫んだ。


「そのたぬきの子供は知らないわよ。だけど、そっちの怪我したガキは私たちの店のもんよ」


「あっ?」


 耳をほじりながら、女性を睨みつけたユナに身体を震わせたが、さらに叫んだ。


「だっ、だって……ルイスは私達親子が買った()()だもん! どう扱おうが勝手でしょ? それに、そいつ獣人だし、それも……忌み嫌われるカラス!」


 彼女の顔は歪んでいた。だが、それよりも彼女の言葉に目を見開いた。怒りが腹の底から湧いてくる。私は気づいたら、彼女の元に向かっていた。


「ニーナ?」


 そして、その足に小さな口で噛みついた。

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