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一方その頃

 一方その頃、シルルは……未だ、ユナと揉めていた。


「私が火を上げた証拠はないじゃない」


 ユナを真っ直ぐに見つめるシルル。


「テメェしか、いないんだよ! 何度も言わせるなよ!」


「……他にもいるんじゃないかしら?」


 ユナとは対照的に淡々とした話し方はさらに彼女の怒りのボルテージを上げていく。


「何で、他の奴が私の火をあげるんだよ! 盗賊を捕まえたら、自分の手柄にするだろうよ!」


「じゃあ……私も自分の手柄にするはずよ」


「そうだけど! テメェは衛兵に事情を説明するのが面倒だからだろ!」


 シルルは彼女の言葉に一切表情を変えずに首を傾げた。


「テメェと話すの……マジでしんどい!!」


「じゃあ、もう……いいかしら?」


「駄目に決まってんだろ! お前のせいで、振られたんだからな!」


「はあ……振られたのは私のせいじゃなくて、貴方に魅力がなかっただけ」


 その言葉でユナのこめかみはピクピクと動いた。そして、無理矢理にっこりと笑った。


「私は美人だ。魅力がないんじゃない。テメェが盗賊を捕まえるたびに私の火をあげるもんだから……私に変なあだ名がついたんだ。『盗賊討伐専門。伐倒のユナ』ってな……」


「ぶっ」


 ソフィが思わず可笑しくて吹いてしまった。それをユナが睨みつけてきたので、静かに目を逸らして口を閉ざした。


「それにだ! お前……倒した盗賊から金品を強奪しているだろ」


「……強奪じゃないわ……。だって、奴らは言っていたの。この世は弱肉強食だって。強い奴が弱いものから奪っていいってことでしょ?」


「ことでしょ? じゃ、ねーわ!! 何だ、その悪役みたいな言葉は⁈ 駄目に決まってんだろ!」


「ええ……」


 シルルは不服そうな顔をしていた。


「お前……」


 ユナはシルルに不信者を見るような目を向けた。それに、さらに不服そうに頬を膨らませたシルル。


「ていうか! やっぱりテメェの仕業じゃねーか! お前が盗賊から金品強奪するもんだから、私は盗賊討伐とそいつらから金品を奪う女になっているんだからな! それが噂になって、いい感じになっていた男から『僕に君は制御不可能だ。もっと、素晴らしく強い人がいる。さようなら』って! それも、お前が空に火を打ち上げた時にだ。彼は噂と私が同一人物だと知らなかったのに! 近くにいた野郎達に『よっ! 伐倒のユナは流石だなー』って言われたせいで……彼が気づいちまった!」


 ユナはシルルの肩を強く揺さぶった。だけど、彼女の長い話に飽きていたシルルは冷めた目と声で言った。


「私じゃなくて、野郎のせいじゃない」


「ああん。元はと言えば、テメェが毎度、私の火を上げなければ良い話なんだよ」


 だが、ユナも負けじとシルルを睨み返した。だが、二人が睨み合っていた時だった。ソフィが慌てた声を出したのだ。


「大変! ニーナちゃんがいない!!」


「えっ?」

「はっ⁈」


 シルルは慌てて、辺りを見渡した。


「ニーナ? ニーナ!」


 珍しいシルルの大声に驚いたユナはソフィに話しかけた。


「なあ……ニーナって、誰だ?」


「ん? ああ。シルルさんが育てている可愛い女の子です。これくらいの背でフードを深く被った子供です」


 ソフィはニーナの背たけや格好をユナに説明した。だが、彼女はシルルが子供を育てていることに驚いていた。


「ふっ……あは、あははははは!! あいつが子供を育ててる? 無理だろ。無理、無理」


 ユナは大きな声で笑っていた。だが、シルルは無視して、ギルド内をくまなく探す。だけど、あの小さな子供はどこにもいない。表情があまり変わらないため、見た目にはあまり焦っているようには見えないが、シルルは焦っていた。もしかすると、誘拐されたのではないのかと不安に駆られていたためだ。そんな彼女の肩をポンッと叩いたのはユナだった。


「シルル」


 だが、ユナは名前を呼んだだけなのだが、シルルは彼女の頬を勢いよく叩いた。


「なっ⁈ はっ? えっ⁈」


 意味がわからないまま、唖然としたユナにシルルは言葉を放った。


「ニーナを攫った?」


 その声は地を這うように低く、その瞳は怒りに燃えていた。今のシルルは冷静さを失っていたのだ。


「はあ? 私がか⁈ 攫うはずがないだろ? そもそも、テメェが子供を育ててることすら知らないわ。というよりも……イテェだろ!」


 だが、やられたままでいるはずがないユナはお返しにとシルルの頬を同じように叩いた。


「とりあえず、テメェはまずは落ち着け。誘拐と決まったわけじゃない。自分で出て行ったかもしれないだろ」


「あの子はそんなことをしないわ」


「子供だろ? そんなこともあり得るんだよ。だから、まずはギルドの周りを探すぞ。子供の足なら、そんなに遠くにはいけない筈だからな」


 冷静なユナを見て落ち着きを少し取り戻したシルルは謝った。


「叩いて……ごめんなさい」


「そこは反省しろよ」


「貴方も叩いた……」


「初めにテメェが叩いたからだろ! …………悪かった」


 そして、ギルド内にいた人たちは二人の様子を遠巻きにして見ていたが、その中の一人が二人に恐る恐る話しかけた。何故なら、小さな子供が外に出て行ったのを見ていたからだ。その話を聞いた二人は外に出てニーナを探し始めた。

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