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プロローグ

 疲れた。その言葉だけが頭を占める。身体もそうだが、疲れた理由は精神的なものからきている。上司のパワハラに先輩からの小さな虐め。事の発端は先輩のミスを指摘したせいだった。だが、それが気に食わなかった先輩は仲が良い上司にある事ない事を吹き込み、そこから上司からのパワハラがはじまり、先輩は私が何をしても気に食わないのか、悪口からはじまり、幼稚な小さな虐めを始めた。それも、他の社員と共にだ。そんな日々が一年以上は過ぎた。仕事を辞めたいが、そうすると生活が厳しい。それに、辞めた後に仕事に就けるかわからないという心配もある。もう少しだけ頑張ろう、後少しだけ頑張ろうと頑張ってきたが……もう、疲れた。今日も上司と先輩に仕事を押し付けられて残業した。誰かに相談したいが、相談できる人がいない。少ない友人は結婚して子供がいるため、こんな事を相談する時間が彼女の負担になるのではと考えてできなかった。それに、仕事のストレスを発散することを見つければよかったのだが、何をしても休日が終わると仕事のことを思い出して、心が疲れるのだ。


「…………何も考えずに暮らしたい」


 そんな小さな呟きはすぐに空気として消えると思っていたのだが、返事が返って来た。


「本当に? じゃあ……この世界じゃないところでもいいの?」


 鈴を転がしたような可愛らしい声が耳に心地よく通って来た。


「……そうだね」


 今まで、ゆっくりと心を落ち着けた事がなかった気がする。両親も病気がちな妹に付きっきりで私は健康体だから、一人で何でもできるでしょ? それに、お姉ちゃんなんだから! とほっとかれる事が多かった。それに、社会人になった今は妹は病弱で働けないから、お金の仕送りも頼まれていた。どこにいても、心がすり減っていた。


「……この世界に居場所がないような気がする」


 自然と目から涙が溢れてきた。


「そっか! じゃあ、君を異世界にご案内!」


「えっ?」


 その言葉で今、自分は誰と話しているのか気になってしまった。私は今、誰と会話しているの? そして、可愛らしい声がする方に視線を向けると、そこには金髪の髪を靡かせた小さな妖精がいた。


「……貴方は?」


「私? 私は異世界の案内人だよ! この世界から違う世界に連れて行くために存在しているの!」


 ニコニコと可愛らしい笑みを向けた彼女に困惑を隠せなかった。


「……困惑しているね。それもそうだよね……だけど、この世界の均衡を保つために必要な事なんだ」


「どっ、どういう……」


「この世界で生きていける生物の数が決まっているからだよ。だけど、それだとせっかく生まれた命を消すハメになってしまう。それを避けるために、生物の数に余裕がある世界に飛ばすって事!!」


 わかった? とにっこりと笑うが情報が多過ぎて、パンクしそうだった。


「……大丈夫だよ。君以外にも異世界で暮らしている人は大勢いるよ。だから……せっかくなら、異世界を楽しみなよ!」


 そう言うと、何もない場所に大きな穴が空いた。それも、自分が立っている真下に。


「えっ……?」


「じゃあ、準備はいい?」


「えっ⁈」


「行ってらっしゃいませ!!」


 そして、そのまま下に落下して行く。


「きやっ、きゃあああああああ!!」


 怖い、怖い、怖い、怖い!! これは夢! 絶対に夢だから大丈夫だよね⁈


 そんな風に思わないと怖くて口から魂がこぼれ落ちそうだった。


「あっ! 言い忘れてたけど、新しい世界で君は子供の姿から始まるからね! いっぱい楽しんで!」


 何故、子供? そんな言葉は口から出てこなかった。何故なら、口からは落ちていく恐怖からでる叫び声しか出せなかったからだ。


「うんうん。嬉しくて、叫んでいるんだね」


 妖精の呟きはもう、私の耳には届かなかった。


 私、笹野 新菜(ささの にいな)。二十七歳は今日から異世界で生活を始める事になりました。


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