表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/6

2 初登校

マリとして振る舞いつつ、この世界に慣れるように過ごしていたら、あっという間に一週間が経過してしまった。


「ここの生徒になるのか」

マリの父親が感慨深そうに呟く。

視線の先には、荘厳な門と数えきれない程の人々。

これら全てが学生とその家族だ。

私も含め、指定されたグレーの制服を着用している。

「頑張ってね、楽しく過ごすのよ」

「うん!行ってくるね!」

マリの両親にそれっぽく挨拶を交わして、門をくぐる。

確か会場は、この先を真っ直ぐ行って。

考えながら見取り図を開くと、ざわざわと周囲が一層騒がしくなった。


釣られて視線を上げる。

その先にいたのは、燃え盛るような赤毛の女性。

その顔立ちは、精巧な人形の様に美しい。

釣り上がった琥珀色の瞳が、そこにあるだけで威厳を纏っていた。

不自然に開けた道を、堂々と歩いて進む。

着用している制服は白く、わかりやすく貴族の証。

誰もが道を譲り、彼女の権威こそが絶対だと信じて疑わない。

彼女こそがリリィ・フールレクス。悪役令嬢だ。


中身は確かOLって設定だったかな。


「おい、あれがあの‥」

「俺初めて見た‥」


周囲の話題が一瞬で塗り替わる。

ちなみに他にお偉い人はいない。

時間がズラされていて、フルーレクス様が意気込みすぎて早く来ただけだ。

テルルは対照的に遅れてくるので、キャラクター性がわかりやすい。


彼女の姿が見えなくなってから、早々に会場へ入り、指定された番号の通りに椅子に座った。


荷物を置いてからあたりを見回す。

会場には、チラホラと人が集まり始めていた。


「ここって2041の席?」

「‥えっ?」

上から声が降ってきた。

ぼーっとしていたからか、反応が一拍遅れる。

「あ、そうですよ」

そう返事をすると、声の主の少女は「ありがとー」と笑って、私の隣に座った。


「なんかこう言うのって緊張するよね」

「そうだね」

彼女はそのまま話を続ける。

聞いて終わりかと思っていた。


「クラスってどこだった?」

「私はCだったよ」

問いに答える。

そう言えば、この席ってクラス順で並んでいるのかな。


「どこだった?」

聞かれっぱなしも良くないと思って、質問を返す。彼女は少し思い出すようなそぶりを見せて「Bだったと思う」と答えた。


「え、すごい」

優秀な人なんだろうな。上のクラスだ。

私と変わらない年齢なのに、ここまで差があるのか。


「そうかな?ありがと」

彼女は何でもないことのように答えた。


「‥‥」

「‥‥‥‥」

自然に、お互い無言になった。

‥ここからどうしたら。


先ほどだって険悪なやり取りはなかったと思う。

ただ、話す話題が尽きただけ?


ぼんやりと、前世でもそうだったなと思い出す。


別の誰かになったからといって、根本的な性格まで変わるとは限らない。


良いことでもある反面、何となく。

それが残念でならないような気がした。


会場全体にアナウンスが響き渡り、式の開催を盛大に告げた。


学園生活のスタートだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ