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魔王の娘ですが皇子に惚れたので世界と戦います  作者: ヒカリ
第4章  君に惚れたので、世界と戦います
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第29話  世界の理(ことわり)

愛とは、赦しの名を借りた、最も強い“拒絶”かもしれない。


運命に従うことを拒み、定められた役目すら打ち捨てて、それでも選びたかったものがあった。


今回は、理を壊してでも、愛を貫こうとする者たちのお話です。

 そのぬくもりが、確かに腕の中にある。


 ユウトの声も、まなざしも、全てが夢ではないとわかっている。


 ……けれど。


 それでも私は、彼の背を抱きながら、目の前の空から目を離せなかった。


 


 オーロラが、音もなく揺れていた。


 天の裂け目から溢れ出す光が、夜空を静かに満たしていく。


 それは祝福のように見えた。

 けれど、その中心で佇む六翼の天使が、“異変”の始まりを告げていた。


 


 仮面の裂け目が、縦に、ゆっくりと開いていく。


 その中に瞳はない。唇もない。

 ただ、感情なき“空洞”が、命令の器として口を開く。


 


 ひとり、またひとりと、周囲の天使が歩き出した。


 まるで迷いなく、導かれるように。


 六翼の天使へ――吸い込まれていく。


 


 痛みも、悲鳴もなかった。


 ただ“存在が消えた”というだけの静けさ。


 


 私は、ユウトの手を握りしめる。


 


 「これは、祝福なんかじゃない……」


 


 心の底に沈んでいた不安が、確信へと変わる。


 これは“統合”。

 世界が、理を修正しようとしている。


 私たちという“逸脱”を、なかったことにするために。


 


 「サクラ……」

 ユウトが、かすれた声で私を呼んだ。

 私は静かに頷いた。


 

 ――私は戦う。


 

 六翼の天使が、すべてを取り込んだ瞬間。


 空気が震えた。


 


 《解析完了。存在情報、統合》


 


 仮面の奥から響く声は、命令というよりも、“削除宣言”に近かった。


 この世界に、私たちの居場所はない。


 


私は立ち上がる。

 そして、ユウトの手を引く。


 


 「奪わせない。もう二度と、絶対に」


 


 魔力が、身体の奥から沸き上がる。


 紫紺の光が、足元に紋章を描き、背中に再び翼を呼び覚ます。


 


 天使が動いた。

 六翼の影が、地上に降りてくる。


 


 私は前に出る。


 


 「私は、ゆるされたわけじゃない」


 「ただ、“赦さない”と決めただけ」


 


 風が、世界を裂く。


 空を貫くような紫の閃光が、闇に向かって放たれた。


 


 私はもう、逃げない。


 彼と生きるために。

 その祈りが、たとえこの世界にとって“異常”だったとしても。


 私は信じる。


 “愛”が、世界の理よりも強くあれることを。

 

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


この話では、“奇跡の直後”の静かな余韻と、

それに続く“世界の拒絶”という、運命との対峙を描きました。


祈りが届いたとしても、それは“物語の終わり”ではなく、

むしろ“愛を貫く戦い”の始まりです。


次回、サクラとユウトが「ともに立ち上がる」本当の意味が明かされていきます。


ぜひ、引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。


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