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魔王の娘ですが皇子に惚れたので世界と戦います  作者: ヒカリ
第4章  君に惚れたので、世界と戦います
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第27話  神への宣言

祈ることしか、できなかった。


彼が傷ついていくのを、ただ見ているしかなかった。


けれど――


それでも、私の中に残っていた“願い”が、

ひとすじの光となって、動き出す。


これは、誰かを想う気持ちが、世界すら変えるかもしれないと信じた、

ある少女の“祈り”の物語。

私は、祈っていた。

ただ、彼の無事を――それだけを、願っていたはずだった。


 

……でも違う。


 

私は、選びたかったんだ。

彼と、生きる未来を。



ーーーーー



ペンダントが、完全に砕けた。


細かな欠片が宙に舞い、三日月の彫刻は光の粒子へとほどけていく。

けれど、その中心からあふれ出した光は、まるで意思を持つように私を包み込んだ。



風が吹いた。

世界が、私を中心に震え始める。



これは怒りじゃない。

破壊でもない。


 

ただ一つの――祈り。


 

お願い……ユウトを返して

あなたたちの痛み全てを、私が代わるから

だから……



そのとき。


私の身体の奥が、熱を帯びた。

心臓の底、血の流れの中から――何かが、目を覚ます。


 

……この感覚……


 

私は知っている。

これが、“血の記憶”。

魔王の娘として受け継いだ、輪廻りんねの外にある力。


 

記憶が流れ込んでくる。

剣ではなく、破壊でもない。

“誰か”のために力を使おうとした魔王たちの祈り。



かつて父は、破壊によって世界を変えようとした。

母は、祈りによって共存を願った。


 

私は――そのどちらでもない。


 

けれど、どちらの“願い”も、確かにこの胸に宿っている。


 

風が吹いた。

ひとすじ、長い髪が宙を舞う。


 

亜麻色の髪がほどけて――白銀に還っていく。

魔法で覆っていた翡翠の瞳も、深紅の光を取り戻す。


 

この手で守りたかった人に、届くと信じた“本当の私”へと、今――還る。


 

「私は、すべてを受け継ぐ。

愛も、力も、この名も……サクラとして」


 

足元に浮かぶ、黒い紋章。

かつて父が振るい、母が祈り、歴代の魔王たちが遺してきた力が、私の内側で共鳴する。


 

黒と紅の衣が翻り、背中に伸びた光と影の翼が、世界を照らした。


 

その姿は、恐怖でも威圧でもない。

ゆるしと、決意をまとった――“大魔王アルティマ”。


 

天使たちが一斉に顔を上げる。

その無機質な仮面の奥に、かすかな変化が生まれる。


認識――否、警戒。


 

でも、もう迷わない。



私は立ち上がる。

魔力が渦を巻き、空が呼応する。



私は、選ぶ。たとえ世界が拒んでも――彼を守る!


叫びが、海に響いた。

それは、神への宣言だった。


 

「私は、大魔王アルティマサクラ。運命になんて、従わない!!!」



その瞬間、天使たちが一斉に剣を構えた。


 

――光が、世界を包み込んだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


このお話は、サクラというキャラクターが、

“魔王の娘”という血と、

“愛する者を守りたい”という想いの、

どちらも否定せずに受け入れる回として書きました。


偽りの姿を捨てるのではなく――“本来の自分”を肯定すること。


そして、ついに訪れる「ふたりの覚醒」。


次回、第33話では、サクラの力によりユウトが目覚め、

世界のことわりに抗う“ふたり”が並び立ちます。


運命に従うのではなく、運命を超えて、ふたりで“選ぶ”未来へ――


どうか最後まで、お付き合いください。


コメント・評価、大歓迎です!

初めての長編執筆で、皆さまの声が大きな励みになっています。

もっと良い物語に育てていきたいので、どうぞよろしくお願いします!

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