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鶴の恩返しHappyEnd

作者: 和no名
掲載日:2025/07/20

ある山奥に嘉六かろくという炭焼きの男が独りで暮らしていました。

ある日、嘉六は罠に掛かって逃げ出せずにいる鶴を見つけました。


「これは気の毒に。どれ、俺が外してやるから行け。もう罠に掛かるんじゃないぞ」


鶴は一度だけ嘉六のほうを振り返ると、ケーンとひときわ高く鳴いて、空へと戻っていきました。

それから数日経った嵐の晩のことです。




『ドンドン、ドンドン』



「もうし、もうし」


「誰だ?」


「こんな夜更けに申し訳ありません。どうか中に入れてくださいまし」



嘉六が戸を開けると、そこには美しい娘が立っていました。



「道に迷ってしまいました。一晩だけ泊めては頂けないでしょうか」


「若い娘さんが寛げるような家ではないが、寒かっただろう、

朝になったら俺がふもとの町まで送ってやるから、中に入って火に当たるといい」


「ありがとうございます」


「ところでお前さん、名は何という?」


「ひろみと申します…」




嘉六は娘を泊めてやることにしました。

そして夜が明けました。




『とんとんとん…』


『コトコトコト…』




「ん…?」


嘉六が夢うつつでいると、ご飯と味噌汁が炊けるいいにおいがしてします。


「お目覚めになられましたか。もうすぐ朝餉の準備ができるので、お待ちくださいませ」


ゆうべ泊めた娘…いや、ひろみが、朝ご飯を作ってくれているのです。


「む、そうか…」


一宿一飯の礼のつもりでしょうか。嘉六はありがたく頂くことにしました。

誰かに食事を作ってもらうなんて、一体いつ以来でしょう。


「おいしかった。さあ、ではお前さんを町まで送っていこう」


「私、決めました。あなた様の嫁になってここで暮らしていきます」


「いや、突然言われても…」


「止めても無駄です。私、言い出したら聞かない性分ですので」


「えぇ…」


一方的に押し切られる形にはなりましたが、

嘉六も悪い気はしなかったので、そのままひろみと夫婦めおとになって暮らすことにしました。


なんということでしょう。

ひろみは、炊事・洗濯・掃除はもちろんのこと、

養蜂をして採集したハチミツでお菓子を作り、

家に隙間風が入ってきて寒い所は補修して塞ぎ、

壁が崩れかけている所は土と藁を混ぜて塗りつけ左官仕事をし、

床下には湿気防止と冷気が上がってくることを防ぐために炭と藁を敷き詰め、

水汲みの手間を解消するため、藪から竹を切り出してきて中の節を抜いて筒にし、

それを何十本も繋げて家まで山水を引いてくるなど、TOKIOばりの万能ぷりを見せます。


物が散らかり、昼間でも光が差さず、冬のように寒々としていた我が家が、今では、ほら。

ああ、なんということでしょう。


そうして数か月が過ぎ、年の瀬が近づいてきました。


「正月には、せめて餅でも買いたいが、金がない」


「それならば、私がブルマを織りましょう。それを売って正月の準備をしてください」


「ぶるま??」


「一部で愛好する殿方がいる女性の下着です。

 三日間、こちらの部屋で籠って作業をするので、決して中を覗かぬよう…」


「わ、わかった」


ひろみの、無表情だが静かな気迫に、押し切られる嘉六。




『きい…ことん…ぱたん…。

 きい…ことん…ぱたん…』




ブルマとやらを織る音が聞こえてきます。

糸も無いのにどうやって布を織っているのか、嘉六は不思議に思いましたが、

独りで集中して取り組みたいタイプなのだと思い、ひろみの言いつけを守り、中を覗くことはしませんでした。

そして三日が経ち、ひろみが、少しやつれた様子で部屋から出てきました。


「さあ、ブルマが織りあがりました。

 これを殿様のところに持って行ってください。二千両にはなりましょう」


嘉六はひろみの言葉に従い、町の殿様のところにブルマを持って行きました。


「ほう!これは見事なブルマじゃ。一見するとただのブルマじゃが、

 光の加減で緑がかって見えたり桃色がかって見えたりするとはの。

 二千…いや、三千両出しても惜しくない。わしにこれを譲ってはくれぬか?」


嘉六は、殿様からの大金の提示に驚きましたが、

これで正月の準備もできるし、ひろみの頑張りも報われると思ったので、殿様にブルマを譲ることにしました。


「それで相談なのじゃがな。前金で三千両払うから、またわしにブルマを譲ってはくれぬか?」


「殿様、これは家内が身体を壊しそうになりながら織ったものでして」


「女なら主人の言いつけとなれば聞くだろう。では確かに三千両渡したからな!頼んだぞ!」


殿様の権力と迫力(と性癖)に押し切られる嘉六。

ともかく、合計六千両もの大金を持って家路に尽きました。

ひろみもさぞかし喜ぶことでしょう。


「それはようございました。またブルマを持って行けば、殿様が贔屓にしてくれるかもしれません。

 今度は一週間ください。立派なブルマを織りましょう。何度も言いますが、決して中を覗かぬよう…」


ひろみはまた部屋に籠ってブルマを織り始めました。




『きい…ことん…ぱたん…。

 きい…ことん…ぱたん…』




はじめの三日間は、淀みなく一定のリズムで織物の音が聞こえていたのに、




『きい………ことん…ぱた…ん…。

 き…い…こと…ん…ぱたん………』




それから日が経つごとにだんだんと途切れ途切れになってくる音に嘉六は心配が募って言いつけを破り、

ついにひろみが籠っていた部屋の戸を開けてしまったのです…!


「こ、これは…!」


「………決して覗いてはいけないと申しましたのに、見てしまいましたね」


「それはお前のことが心配になってだなあ!」


部屋の中では痩せ細った一羽の鶴が、自らの羽をむしり取って、それを糸にしてブルマを織っていたのです…!!


「私はあのときあなた様に助けて頂いた鶴。恩返しをしに人の姿となりこうして参りましたが、

 本当の姿を見られては、もう、あなた様のお傍には居られません」


「いや待て、どうしてそういう発想になる」


すると、鶴…いや、ひろみは堰を切ったように泣き始めました。


「だってだって!あなた様が好いたのは人間の姿の私でしょう!

 鶴の姿の私をあなた様が好いてくれるはずがありません…!

 それでも私は、心優しいあなた様が大好きなんです…!ぐすっ…」


「たとえお前の正体が人間でなかろうが、俺はお前が大事なんだ。

人付き合いが苦手で押しが弱い俺に、文句ひとつ言わず寄り添い、

甲斐甲斐しく立ち働き尽くしてくれるお前に俺は惚れた。

身を削ってまで機織りなんかしてくれなくていい。別に贅沢な暮らしがしたいわけではない。

俺は、もうお前なしでは生きていけない」


「くすん…。そういえば、なんだかんだでエッチはまだでしたね。鳥姦とはなかなかの妙味をお持ちで」


「違うって」


「わかりました。私、あなた様のタマゴを産みます(ポッ)」


「話を変な方向に持っていくなって」


「有精卵を生命と見るか否か?永遠のテーマですね」


「そーじゃなくて」


「あっ、お口でされるほうが好きです?」


「頼むから俺の話を聞いてください」


こうして嘉六は、ひろみを引き留めて、人の姿にさせてから寝かしつけ、

見よう見まねの料理を作っては「あーん」して食べさせ、

遠い村に滋養のある木の実などがと聞きつけると、山を三つも四つも越えて手に入れて与え、

寝させてばかりも体に悪いので、日や風に当たらせたり景色を見せてやろうと、

天気の良い日には薪を背負う背負子しょいこにひろみを乗せて散歩に連れて出たり(散歩デートともいう)して

一生懸命看病しました。

今まで自分に尽くしてくれたことへの感謝…恩返しの恩返しです。

そんな毎日が1か月ほど続いて………。


「完・全・復・活!」


「なんかちょっと前とは人が変わったな…」


「もう吹っ切れましたから!これまで以上にあなた様のお世話に精を出しますので!」


「ありがたいが、頼むからもう無理はしてくれるなよ」


「はい。最後にもう一度だけお聞きしますが…私の正体が鶴であっても、ほんとうによろしいのですか?」


「男に二言はない。どうかずっと俺の傍に居てくれ」


「ところで、栄養のあるものをたくさん頂いたので、お胸が急成長しましたv」


そう言うとひろみは、前かがみになって両腕で自分の胸をぎゅっと挟み込んで見せます。

着物の合わせから見える、深ーい胸の谷間に、嘉六は思わず生唾を飲み込みました。

嘉六も男子ですから、これからのひろみとの生活に思いを馳せると、いろいろと楽しみでなりません。


こうして嘉六とひろみは幸せに暮らし、一生を添い遂げ、

その後は嘉六もまた鶴となり、ひろみと共に天に昇っていったそうな。

嘉六が殿様に譲ったブルマは宝具として後の世に伝わることになったそうである。

めでたしめでたし。

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