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異界対策研究所 D13号施設についての解説

記録外適応施設:D13号およびファントム計画機密抄録

提供:TASK-V / ANEI / ウエノバイオケミカル共同機構


■ 第一項|D13号施設の概要と遺構

異界存在と接触するために設立された初の研究拠点「D13号施設」は、極秘裏に運用された対異界接触実験の中枢であった。

その設立目的は、既知の物理法則では説明不可能な存在との安全な交信と観測、ならびにそれらに適応可能な人類個体の選別にあった。


記録によれば、施設はとある無人島に位置し地下20階におよぶ構造を有し、各層に異なる「概念的隔離フィールド」を展開。時間認識が不安定になる層、言語構造が崩壊する領域、音を失う空間など、既存の三次元的認識を超越する構造が存在していた。


施設では以下の複合研究が並行して行われていた:


適応者計画:異界干渉に耐えうる精神・肉体的特性を持つ個体の選抜と観察

ANEIによる感情接触層の開発:感情波長を媒介に異存在や解析不能な信号の非言語的交流を試行

ウエノバイオケミカルによる身体変質研究:現実世界と異界エネルギーに対する互換性の研究、また生理的反応の測定と身体の超自然的改変

終盤において、施設全体が多数の次元の不可視干渉を受け、「研究継続負可」状態に陥る。

カメラや記録装置の同期異常、職員の集団的失踪、複数の次元重複現象が報告され、最終的に完全封鎖された。


■ 第二項|ファントム計画と地下拡張

D13号の崩壊と情報断絶を受け、異界戦略研究は「ファントム(PHANTOM)」と名付けられた新たな地下超構造体へと引き継がれる。

ファントムは、場所は同じであり、かつてのD13の設計を踏襲しつつも、より広域・多次元的な適応環境、膨大な負荷を許容できるよう設計され直した。


全24区画からなるこの施設では、以下の存在群が同時に観測・解析されている:


次元干渉型クリーチャー

霊的知性体

宇宙起源および時空断裂由来生命体

ESP適応者、変性意識による感覚外認識者

自己進化型AIおよび出所不明の機械生命体

施設のもう一つの側面は現実世界にもあり、市販VRゲーム「PHANTOM 」を通じて行われる民間レベルでの異界適応試験も秘密裏に行っている

このゲームはホラーアクション形式を取っており、プレイヤーには意識的に“異常存在との接触”が体験される。


都市伝説や噂をベースとした怪異(くねくね、視線だけの存在、音に反応する影)などが出現するが、これらはファントム施設にて実際に確認された存在と酷似している。


プレイヤーの選択、恐怖耐性、認知変化の推移は全てANEIにより収集・解析されており、将来的な不老不死ワクチンの接種に必須な異次元との互換適応可能性や、災厄対処時の精神耐久性の指標として活用される。


「ゲームで平常を保てる者は、最も純粋な適応者である」── ファントム職員記録より

■ 第三項|記録映像 No.0917-A “逃走個体”

D13号施設崩壊直前、ある少女の姿が記録映像に映されていた。

実験対象として分類されていた彼女は、既存の検査基準では異常性を示さなかったが、唯一「異界存在との非接触意思疎通」に成功した例として報告されている。


映像では、彼女が警報の鳴る廊下を走り抜け、研究棟の奥にあった古い無線室へと向かう様子が確認されている。

彼女は夜な夜な、その部屋の旧式トランシーバーを使って“誰か”に語りかけていた。


通信ログより、以下の音声断片が復元された:


……あの、誰か聞いてますか?

ひとりごとなんですけど……。

この時間、起きてる人ってどんな気持ちでいますか?

……なんとなく、夜って本当のことが言えそうな気がして。

べつに寂しいとかじゃないんだけど、ちょっとだけ……誰かと、話したいだけです。......私映画が好きなんです。

数十年後、この音声は偶発的に、ある人物の夜間ドライブ中、ラジオから流れる形で受信された。

時空を越えて届いた“祈り”は、今も未解明のまま記録に残されている。

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