なぜ消費者物価指数よりも「物価高」を感じるのか?
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
25年2月5日の報道では物価の変動を反映した働く人1人当たりの「実質賃金」が3年連続でマイナスになったという記事がありました。
現金給与総額が前年比2.9%アップに対して、「実質賃金」は、前の年を0.2パーセント下回ったそうです。
ですが、皆さん必ず1回は思ったと思うんです。
「物価上昇は2%や3%なんて絶対に嘘だ! もっと上がっている!」
とね。
質問者:
確かに物価10%以上は確実に上がっている印象がありますね……。
筆者:
以下の図は株式会社第一生命経済研究所の首席エコノミストである熊野英生氏が作った、人々が実感する物価上昇率の平均値(青色)と消費者物価総合(オレンジ色)と消費者物価食料品(灰色)の推移を2011年3月から2024年8月までを示したものです。
この図を見ると、ほとんど常時「実感物価上昇率」の方が「食料品の物価指数」をも上回っていることが分かります。
特に22年以降は15%前後上がったと体感している方が多いようです。
質問者:
体感の方が当たっている感じがありますよね……。
お住まいの地域によっては、もっと物価が上がっていると思われている方もいらっしゃると思います……。
一体どういう事でこんなにも差が出てしまうのでしょうか……。
私が思うに、例えば5個入り商品が4個入りになった場合に、
消費者の視点としては「2割増し」だと思うのに統計では「上がっていない」と判定されるとか……。
筆者:
それは、いわゆる「ステルス値上げ」や「隠れ値上げ」と言われているものですが、
それについては2018年頃から物価高に考慮されるようになったそうです。
総務省統計局の『消費者物価指数に関するQ&A』というページの「G-10」の答えでは、
『消費者物価指数では、調査している製品(銘柄)が製造中止になって後継の新製品が発売された場合には、出回りの多い製品に変更し、新製品の迅速な取込みを図っています(G-1参照)。この際、調査している銘柄の品質に変化はなく、容量や重量のみが減った(あるいは増えた)場合は、その分を実質的な価格の上昇(あるいは下落)分として評価し、消費者物価指数に反映しています。
例えば、ジャムについて、価格は変えずに、重量だけを165gから150gと少なくしたような実質値上げの場合、重量の比(165/150)を新たに調査する150gの価格に乗じることで、実質値上げの影響を指数に反映させる処理を行っています。
なお、ポテトチップスやオレンジジュースなどの食料品のほか、洗濯用洗剤などでは、100gや1000mLといった単位重量や容量当たりの価格を調べていますので、重量や容量が変わったことによる実質的な価格変化は、随時、指数に反映されています。』
とあります。上にある通り名前が変わっても後継名として調査されるために、この文面通りに信じるのであればステルス値上げの多くは反映されていると思います。
質問者:
え……「ステルス値上げ」がしっかり物価上昇としてカウントされているのならどうして……。
筆者:
僕は統計の担当者でも無ければ、小売店を経営しているわけでも無いので「推論」でしか語れないのですが、僕なりに結論が出たので述べていこうと思いますね
簡潔に言うのであれば「商品が消滅すれば上昇とカウントされない」という事です。
質問者:
え……どういうことですか?
筆者:
先ほどの総務省統計局のページのG-4の回答では、
『消費者物価指数は、品質の変化による影響を含まない純粋な価格の動きを測定することを目的としていることから、価格の調査対象となっていた商品の新商品への入替えなどがあった場合、新旧両製品の機能、特性、容量等の違いを吟味した上、品質の違いによる価格差が指数に入り込まないようにするための品質調整を行っています』
とあります。品質が変われば価格に織り込まないという事です。
そして、品質調整についてF-1では
『消費者物価指数は純粋な価格の変動を測定することを目的としていることから、同一の商品の価格を継続して追跡することを原則としています。
しかしながら、企業戦略や世帯の消費行動は常に変化し、売れ筋も移り変わることから、これに対応した調査銘柄の見直しを適時適切に行うことも必要です。このとき、新旧の商品の間にある機能・特性などの品質やパッケージ容量の違いによって生じる価格差が、指数に入り込まないようにする必要があります。』
とあります。
つまり似たような商品でも「品質特性」が違えば別カウントだという事です。
※企業側としても『値上げをした会社』としてフォーカスされたくないために工夫をしていることでしょう。
質問者:
つまり、「後継商品」では無く「品質向上」と認められれば「値上げ」には該当しないという事ですか……。
筆者:
そういうことです。
むしろ「品質低下」させながら値上げをし、別物にしているケースすらあるでしょうね。
(※別の仮説があれば是非ともコメント欄でお願いします)
また、似た商品でも「別物」としてカウントされている可能性はあります。
例えば純チョコレートの「割安商品A」が市場から消えてナッツ入りのチョコレートである「Aと似ているものの割高な商品B」に統一された場合でも消費者としては「値上げ」と思っても「統計上は据え置き」になるという事ですね。
※現在カカオが高騰しているのでこういうことはあり得ます。
質問者:
確かにそれなら「データ上は物価が上がっていない」状態でも「体感では上がっている」ことになりますね……。
筆者:
もちろん、「体感」が「実情」と違うことはあり得ると思います。
しかしながら、常時「消費者実感」が上回っている状況で、
近年では消費者実感と数値で大きく乖離しています。
もはや「消費者物価指数」は機能しているとはいえず、この指数で「物価上昇度合い」を推し量ることはやめた方が良いと思いますね。
ところが、現在政府や日銀は経済政策や金融政策と言った、日本国民に直接影響を与える大きな指標の一つにしているんですから、本当に問題だと思います。
◇「総合知」が大事になってくる
質問者:
仮に「15%物価上昇」の上で「消費が横ばい」の状況が本当だとするのなら、買いたいモノを相当数買えないという事ですよね……。
利上げや増税をしている場合ではとてもないと思うのですが……。
※実質消費は僅かながらですが低下している月が多いです。
筆者:
実際にそういう場合では無いからこそ僕が日課のように「増税(負担増)はいけない! 減税をしろ!」と色々エッセイで書きまくっているわけです。
質問者:
では、どういったデータで判断すれば良いんでしょうか?
筆者:
面白いデータがありまして2024年の「ふりかけ売上高」が過去最高水準だという事です。
しかも普段はふりかけの売り上げが低調にも拘らずこの局面で売上げが上昇しているという事です。
かつて、ふりかけの売り上げが急上昇していたのは1993年の『平成の米騒動』でタイ米が緊急輸入された時や、バブルが崩壊して日本経済がデフレ基調になった2000年代の時でした。
このように、収入減少や食料品の値上げなど『食卓の危機』が発生すると、安くておいしいふりかけは“庶民の味方”として再浮上してくるという事です。
これは、値段の高いおかずの数を減らす又はご飯の量を減らすことに対して「ふりかけを買う」ことで食べた際の満足度を下げないようにしている事だと思います。
質問者:
なるほど、そう言ったデータは大事ですね……。
筆者:
ただ、これも「一側面の事実」のデータに過ぎず今後は経済状況を知るためには様々な分野の売れ行きをどういった時に売れるのか? 売れないのか? を総合的に判断する必要があります。
こういう分析を 「総合知」としての判断が重要になってくると思います。
例えばエンゲル係数も過去最高の割合(つまり食費が会計を圧迫している)になっていることでしたり、
日銀の調査で現在の物価が1年前と比べて「かなり上がった」と答えた人の割合は69.2%(前回9月調査63.8%)となり、比較可能な2006年9月以来、過去最高であり、
物価高を「どちらかと言えば、困ったことだ」と答えた人は86.7%
こういった複数のデータを組み合わせていって判断することが大事なのです。
質問者:
確かに一側面では事実でも複数の側面で見た場合違って見えることはあらゆることで言えていますよね……。
筆者:
「GDP」についても同じことが言えると思いますけど、一つの指標で「豊かさ」を測ったりするのは危険だと思います。
「減税の財源」についても「減税による経済の好循環による増収」と言うのも全く考慮されていなかったりもします。
今はAIなども発達していますから総合的に様々な分野の指標を多角的に分析して結論を出すという事もやり易いと思うんです。
しかし、残念なことに政治家や官僚の方々は「国民の生活を良くしたい」という「善意」で政策を進めているというより、
「我田引水」「地位の保持」のために働いているようにしか見えないのでこの方法を採用してくれるとは思えないですけどね。
質問者:
以前筆者さんのお話では株価上昇や大企業の賃上げによって「好景気に見せかける」ことで、
「増税路線」と「自己責任論」を押し付けることが目的だとおっしゃっていましたよね……。
筆者:
指標を絞れば国民に対して「ミスリード」をする事もやり易くなりますからね。
その中で大企業の株価や賃金のデータは一番都合よく操作しやすいです(献金の見返りを与えれば良いだけのため)。
今後もこのようなデータのみを使う事が「異常」であることを指摘していき、
増税を防ぐ風潮を作っていきたいと思いますね。
僕は「総合知」で多角的な視点から物事を分析し、作品に反映させていければと思いますね。
という事で今回は「物価指数と体感の乖離」は「商品の消滅」がもたらしているのではないかということ。
様々な分野の複数のデータ・指標をAIで分析して総合的に判断していくべきだという事をお伝えしました。
今後もこのような政治・経済について個人的な意見を述べていきますのでどうぞご覧ください。