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桜姫の寵愛  作者: 知恵紅葉
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助さんの霊


暫くそうしていると雲に隠れていた太陽が顔を出し、未桜のいる場所に光が差し込む。


影だったところが少しずつなくなり、足の方から助さんの霊が現れた。


「未桜ちゃん」


太陽の光で姿を現す。


「助おじさん」


あり得ない光景を目に夢なのではと疑う。


陰陽師なら死んだ人間の霊を見ることなど当たり前だが、未桜の持つ微力な霊力では霊を見ることなどできなかった。


今、助さんの霊を見ることができるのは歴代当主達の霊力が微かに未桜の中に入ったからなのと太陽の持つ陽の力によって見ることができた。


本来の未桜の力ではな見えなかったが、偶然が重なって一時的に見えている。


一つでも欠けたら助さんの霊を見ることはできなくなる。


「ごめんなさい。私……、いっぱい助おじさんに助けて貰ったのに、私、私……」


ずっと我慢していたものが一気に押し寄せ溢れだす。ボロボロと目から溢れんばかりの涙が流れる。


「未桜ちゃんのせいじゃないよ」


首を横に振りそれは違うと言う。


「未桜ちゃんは何一つ悪くない」


優しい笑みを浮かべる。


「でも、私のせいで」


大勢死んだ、そう言おうとして助おじさんが手で制止した。


助さんの顔を見ると笑うに笑えず泣くに泣けず、そんな表情をしていた。


未桜はそんな顔をさせたかったわけではないのにと自分の不甲斐なさにまた失望した。


ーーきっと、母上だったらこんなことにはならなかったに。


そう思った。



未桜は時期桐花家当主として舞桜に育てられた。


時に厳しく、時に優しく、人の上に立つとはどういうことか、桐花家の当主とはどうあるべきか教えられた。


だが、未桜には陰陽師としての才能はなく自分は舞桜の期待には応えられない。当主になる資格が無いと諦めようとした時、舞う桜にこう言われた。


「それでもいいのよ。貴方は私にないものを持って生まれた。自分のやり方でやっていけばいい。貴方は誰よりも桐花家当主に相応しい。未桜、貴方はきっと誰よりも強い陰陽師になれる」


未桜には舞桜の言ったことが理解できなかった。


舞桜を未桜の表情で察したのか昔の桐花家当主にも霊力が未桜以上に無い人がいた、と教えてくれた。


未桜はその話を詳しく知りたいと舞桜にお願いした。


その人の霊力は微力だったが、町の人達、門下生、使用人、桐花家に仕える陰陽師達、全ての人から愛されていた。


最初は霊力が微力な事を他の家門に馬鹿にされていたが、その人は自分のやり方で桐花家を守った。


それは並大抵のことでは無い。


「その道は決して険しいけど未桜ならできるって私は知ってる」


舞桜から、いや歴代当主達から想いを託された気がした。


未桜は自分自身に誓った。


自分のやり方で大切な人達を町を必ず守ろう。


自分ならきっとできる。


そう信じていた。



だが、自分はその器ではなかったと思い知らされた。


桐花さんに忠誠を誓ってくれた人達も自分を信じてくれた人達も優しくしてくれた町の人達も大好きな母親も、誰一人未桜は守ることができなかった。


舞桜が死んで信近が当主になると町は変わった。


ほとんどの者がこの町から出ていき他の町で暮らすことを選んだ。


残った者達のほとんどは信近に盾付き殺された。殺されずに済んだ者達も病気や過労死で死んでしまった。


助さんが最後の一人だったが、今回の襲撃で舞桜がいた頃のこの町を知るものは誰もいなくなった。


今いるこの町の人達は信近が選んだ金持ちの人間が半分以上占めている。


平民もいるが性格は悪く自分のことしか考えない者達ばかりだ。


下民も信近の計らいでいるのはいるが、それは優しさでしているのではなく、自分達の自尊心を満たす為にやっているに過ぎない。


自分達は綺麗な着物を着て高価な小物を身につける。食事も豪勢で誰もが羨む生活をしている。


下民は着物も汚く何年も同じ物を着る。食事だって何日もまともに取れない日もある。


下民を見るたびに「自分はこいつらとは違う。選ばれた人間。上に立つべき人間」だと思うことができる。


簡単に言えば人を見下すことで優越感に浸っているのだ。


未桜は信近達の考え方が理解できなかなかった。


下民の人も町の人達も金持ちも同じ態度で接する未桜には人を下に見るという事をしたことがないから。


もちろん、中には未桜と同じ考えを持った者達も良心の呵責に耐えきれず訴えた者達もいたが、いつの間にか信近達によって殺されていた。


そんな事を数回繰り返す内にこの町には信近達にとって都合のいい人間達しかいなくなった。


この町はいつからか信近達にとっての楽園になっていた。


桐花家の代理当主としての役目を果たす事なく自分の欲を満たす事に夢中になる。


実の娘として恥ずかしくてたまらなかった。


でも、こんな事になったのは全て自分が弱いせいだと思った。


自分に力があれば信近の暴虐も妖魔の襲撃も大切な人達も全て守ることができたと。


そう思うと未桜は助さんの顔を見ることができなくなり下を向く。


顔を見るのが怖かった。


何もできなかった自分に腹が立って仕方なかった。


助さんが妖魔に襲われているとき、自分は気を失っていた。


気がついた時には全て終わっていた。


大勢の人が亡くなったのに自分は呑気に気を失っていたなんて許され無いと。


恥ずかしさと己の不甲斐なさに打ちのめされた。


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