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4000兆回目の転生日記  作者: ゆるん
三冊目《監禁魔女王の解放》
95/102

22ページ,パルの言葉

 人魔大戦まであと三日。焦りながらも何もできないという無力感に襲われ、最悪な目覚めをするケーラ。


 そして、昨日机にあった置手紙の通りに動くことにする。まずは顔を洗い、朝食前に礼拝堂で祈りをささげる。ケーラは神も何も信じてなど居ないので、この間何をしたらいいのか分からなかった。


 取り敢えず転移組が言っていた”なんまいだー”を心の中でつぶやいた。


 実際には何も考えていない。ただ手を合わせて呟く。


(───スキル、〈一点集中〉を獲得しました)


 とかなんとかやっていると、天井の遥か彼方の上空から声がこだまする。スキルを獲得しているのだ。そんな光景にケーラは前にパルが言っていたことを思い出す。


『ケーラは勇者なんだから、何かするだけで簡単にスキルを獲得するだろうな。まあ、俗にいう天才というやつだ』


 でも。とパルは続けて言った。


『その力のせいで溺れていく勇者を俺は何万と見た。そして、その後は悲惨な光景が待っている者も何万といた。最悪、死すら後悔するほどの苦痛と屈辱がそこにはあった……お前はどうなるんだ? ケーラ?』


(……わかってるよ。大丈夫。僕はもう、決めたんだ。僕は───)


「祈りの時間はもう終わりですよ。勇者様」


 突如耳朶を打つ隣の席の者に、ケーラの思考は遮断される。音源の方へ首を向けると、そこにはテラが静かに微笑んでいた。


 その胸に輝くロザリオには、十字架ではなく、聖教のシンボルが輝く。


 そして、その何気ない笑顔にケーラはどことなく懐かしさを覚えながらも、なにか違和感を感じる。そう、テラはケーラが気づかずに隣まで移動していたのだ。


 勇者に気づかれず隣まで移動してくるというのは正直に言ってかなり異常といえる。


 もちろん、聖女にそんな力はない。だが、このテラはそこまで近づいてきた。が、ケーラはその焦りを表情に表せず、平常心で接した。


「そうなんだ。気づかなかった。それにここって時間制限あったんだ」


「そうなんですよ。はじめは気づかないですよね」


 そんな宗教は聞いたことがないとケーラは考える。


「にしても、早朝から祈りなんてお利口さんですね~勇者様は」


「教えの通りに動いているだけだよ。僕は」


「謙遜されるところも流石です勇者様」


 そんな機械のように尊敬される勇者ことケーラはああ、こんな感じなんだと勇者を実感していた。それは、スラムで経験したことでは手に入らなかったこと。


 どこか頬が緩んだ。


 二人は立ち上がり、礼拝堂を立ち去る。


「そういえば、教皇様がお見えになるそうですよ。何日後かに」


「! その情報は確かかい?」


 テラが発した有益な情報に、ケーラが食いつく。


「ええ、確か()()()でしたっけ?」


 その言葉に、ケーラはなにかひっかかりを覚える。そう、三日後は人魔大戦が始まる日。しかし、それはパルだけが知っているであろう情報。


「なにか式典でもあるから?」


「はい。三日後はラーゼ・クライシス様の生誕祭です」


「……なるほどね」


 生誕祭と人魔大戦。なにか関係性が見えるのか……? ケーラは、思案する。


(そう……何か共通点があるはずだ)


 ケーラだけが知っている情報だ。誰かに伝えても信用はできないだろう。


 二つとも、教皇が絡んでいる。こんなにも黒幕がはっきりとしているのに、手が届かないというのはもどかしい。


 他にも挙げるとしいたら、魔王のことだ。一応、勇者というのは魔王を倒すということが宿命であり、運命である。


 これまでに、一切として魔王の名があがっていない。


 逆に不気味なのだ。歴代の魔王は、ここまで陰に潜んで出てこない。いつまでも音沙汰がが無さすぎる。


 魔王の威厳を保つためにも、人族の前で力を出さない魔王はいない。人族に絶対悪だと知らしめるその力を見せしめる。


 だが、そういうことが一切として報告に上がっていないとなると、なにかあるのかもしれない。


 悪名よりも、優先することが。それが、人魔大戦に関することなのかもしれない。


「ケーラさん?」


「あ、はい」


「よかった。どこかぼーっとしてましたので」


 テラの声で、思案の渦から一気に現実へと引き戻される。


「ああ、ごめんなさい。そういえば、テラさんはこれからどこへ行きますか?」


「ワッチはこれから朝食に行きます! ケーラさんはどうしますか?」


「いや、僕はちょっと用事があるから少ししたら朝食にいくね」


「わかりました! 先に待ってます!」


 と、昨日のように後ろを振り向きながら手を振り、走っていく。その姿にケーラはやっぱり元気だな、と気づかされるような気持になった。


 さて、とケーラは後ろを振り向く。今日の朝、パルから一通の通信法(メール)が届いた。


『今日の朝は一番日当たりがよい部屋で太陽を見るといい』


 不自然なメールだが、これがヒントになるだろうと信じて、ケーラはナイから貰った地図を頼りに探索する。その中でも、メールの内容を考察する。


(日当たりが良さそうな場所……安直に考えるなら外だろう。だけど日当たりが良いというのはなんだ?)


 ぐるぐると聖堂を回っていると、ナイとカーラに出会う。


 そしてパルのことを二人に話す。


「うーん……あの人のことですしね……どうせてきt……」


 その瞬間、ナイは背筋をびくんっと悪寒が走ったかのように震わせた。


「……やっぱり……アメリ様の呪い……」


 ナイはなにかを恨んでいるかのようにぶつぶつと独り言をつぶやく。


 そのとき、カーラはケーラの袖をくいくいと引っ張る。下の方へ顔を向け、カーラと目を合わせると、不思議と惹きつけられるような眼と共に、口を開く。


「日当たりがいいってことは、太陽に近いところなんじゃないですか? それだったら、最上階……とか?」


 そのとき、ケーラに電流走る。


「カーラちゃんってもしかして……意外に頭いい?」


「意外ってなんですかっ! それなりに教養はありますよ!」


 ぷんぷんと頬を膨らませ、ぷいっと横を向く。その仕草がなんともまた子供っぽいと思いつつも、喉にしまっておく。


「よし、じゃあ最上階に行くか」


「決まりですね」


「なんでパルさんはそんなこと知ってるんですかね……」


「「クライシス(さん)だ(です)し」」


「……」


 二人の言葉に、ナイは呆れて額に手をやる。もうこの二人は催眠されているのだとつくづく実感すると同時に、ナイだけこの催眠が施されていないことに疑問を感じつつも、最上階の近くまで来ていた。


「最上階は普段立ち入り禁止となっている。まあ、だからこそ怪しいんだろうけど」


 上を見ると、そこには最上階へ続く扉が孤高に佇む。


「そこでなーにをしている?」


 低く、追い詰めるような声が、後ろで鳴り響いた。

ほんま遅れてすんません。ちょっと慣れない生活でダウンしてました

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