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「消えた……か」
『隕石』がクルセーマに直撃すると同時に、その存在ごと消えた。
別に『隕石』は周りに影響されるセレマではない。敵とされる対象物にのみダメージを与えるセレマだ。
「無事?」
「ああ、一応クローンの肉体だったが、それでも問題なく戦えた。しかし……この惨状は少し言い訳がつかないな」
辺りを見渡すと多少の惨劇だが、戦ったという痕跡は残っている。それに、クルセーマはどこに行ったのだろうか? この国全体をセレマで探しても、その存在は察知できない。
おそらく、察知できないほど遠くに移動したのだろう。死んではいない。
そして、私の皮膚が爛れる。横を見ると、朝日が昇る。神に愛されたこの惑星の中心にいる恒星、ダンマ。その光は神聖さを帯びていて、私の体を侵していく。
別にアメリさんは大丈夫だ。他の仲のいい神に守られているっていうし。どの神かは知らんけど。
またトアノレスの家に戻る。まだみんなは起きていなかったようだ。
グラマースを無理矢理起こし、事情を説明する。
「な……? なんと……」
「だあから、今日からお前が王だ」
クルセーマが居ない今は、二番目に偉いとされるグラマースが王となる。クルセーマは事故死ってことで。まあ、実際隕石が落ちたのだ。事故っていえば事故だな。
ってなわけで。ドワーフ国に通達が渡る。
『クルセーマ国王、逝去。新たな王、グラマースが即位』
もちろん、国民は突然の訃報に混乱。だが、前日の隕石を見たものは何人かは居たようで、その認識が浸透していってる。
まあ、そんなに早く浸透何てしないから、少しセレマをしている。
横を見ると、セレマを使用するアメリが眼を開眼していた。
アメリは支配系が得意だ。そして、アメリが支配系のセレマをしているときは特殊な眼を開く。
───"彗眼"。僕らはそう呼んでいる。実際に、ステータスを見てもその名前になってるからな。
手で払うほどに簡単に、まるで虫を見るようにあしらう。その様をいつ見ても、ぴったりな名前だと思う。この時のアメリさんはあまり戦いたくないしな。
国民は、クルセーマは隕石で死んだという偽の情報を徐々に信じていっている。そして、それは一見するとゆっくりに見えるが、四方八方に、ありとあらゆる情報と共に風に乗せられるようにそれは真実となっていく。
「『鳳凰広報』」
淡々と、そして全てを見透かしているような声に、私はいつも恐れを抱いている。まあ、この体の所為もあるかもしれないが。
───この風に乗って、遠くまで届く。
魔王。お前は一体なにを企んでいる。
……って、この流れ前にもしたな。
僕的には、ぶっちゃけ誰がどうなろうと関係ない。私達は私達のペースで進んでいく。
目的のために。まずはこの戦争を止めないといけない。
セレマを発動させると、半透明の青いプレートが何枚も僕の周りを回る。私が手を目の前に挙げると、ある一枚のプレートも止まる。
『人魔大戦開戦まで、残り2日』
***
星王は震えていた。それは、先日パルが襲撃したこと。パルは、あのとき星王以外の者をあの日の記憶を消した。
だが、星王は戒めとして記憶を残していた。ある制約を課して。
『これで、僕たちは協力関係だ。だが、今日のことを誰にも言うなよ? ああ、そうだ。お前、確か子供がいたよな? 妻とか何人も……いいよな? そんなに持てて……な?』
半ば脅しのような言葉。その言葉に、星王は頷くしか選択肢が無かった。
───化物。
人は、なにも秀でた能力がないものを、凡才という。
人は、類まれな才能をもつものを、天才という。
人は……人を圧倒するものを"化物"という。
この世界で、最強と言われる星王の息子、ヴェルトレンターヴが、ものの数秒であしらわれる。
それは、たとえ勇者であっても、あってはならないほどの理不尽な力だった。
神ともいえない邪悪な力で、目の前の邪魔者を潰す。天災、そう称するのが正解だろう。
星王は昔から国のトップを立つ人間として、さまざまな人の在り方を見てきた。その中でも、多種多様な犯罪者や人の憎悪の塊のようなやつでさえその目で見てきた。
だが、あそこまで混沌していた存在を見たことがなかった。
方や幾千年も修行していた僧。方や武を追究した武人。方やセレマを極めし賢者。
考えれば考えるほどに、その存在は姿形を変え、その度に創造をはるかに絶する力を持つ。
星王はあの日のことを思い出すと、パニック障害に陥ってしまう。
……だが、そんなことはお構いなしに時間は過ぎていく。家臣は星王に魔族を進行しろと催促をする。星王がこうなってしまって以降、事情の知らない家臣たちは星王への信頼を日々失い続けている。
人族が、混乱に陥っている。今では、星王の息子であるヴェルトレンターヴが秘密裏に動いていた。
ヴェルトレンターヴは、魔族に進行しようとしている。
星王が使い物にならない以上、彼は独断で動くほか道は残っていなかった。
だが、ヴェルトレンターヴたち"聖人"では、到底魔族に太刀打ちできない。
「勇者を探す」
それが、今後の方針として、部下たちに知れ渡った。
しかし、それを探すのは非常に困難なことだ。全ての戸籍をかきあさり、どこか不明な点を見つけるしかない。
だが、それは昔からしていたことだ。不明瞭なところがあれば、すぐにその人物のことを徹底的に洗いざらい調べ、勇者かどうか判断する。
そして、候補者が今までに5人現れた。
一人は貴族、一人は商人、一人は平民、一人は鍛冶士、一人はスラム人……スラム?
と、彼は思案する。
(そうだ。何故今まで気づかなかった。ここまで勇者がでてこないとなると、実力を隠しているか気づかれない環境にいるはずだ。スラム街はその環境にぴったりと合う。ケーラという名前だったか……今はどこにいる? もしかしたらもう自身の実力を把握し、隠れたか? そうなると厄介だ。すぐに彼の所存を……)
「ドワーフ国……?」
ヴェルトレンターヴは部下からの報告に少しばかり煩瑣な感情を覚える。
ドワーフ国は、エーテル同盟に加盟しておらず、中立として君臨している。
特に私情でいうとヴェルトレンターヴはあそこの王が嫌いだった。不気味な笑顔。なにを考えているかわからない言動。全てを見透かしているような瞳など、全てが苦手だった。
しかし、背に腹は変えられない。
「ケーラの居所を調べるぞ」
この判断が、再びパルたちと関わりを持ってしまうことを、ただ一人しか知る由もない。
ここって何書く欄なんだろって考えてたら宇宙ってなんなんだろって考えが導き出されました。どうも、悟りです。




