17ページ,国の絶体絶命
流れる静寂。目の前にいるドワーフの国王は、静かに私達を見ていた。その永久にも思える時間。先に手を出したのは、こちらだった。
不気味に見えるその笑顔に渾身の一撃を加える。───が、負けたのは私。
腕がボロボロと崩れおちていく。一方、俺が殴ったはずの国王の顔は、ただ不気味に笑うだけで、かすり傷一つついていなかった。
俺はアメリのところまで下がる。
「状況は最悪だ。相手は後ろに神がついてる。───……とびっきりの」
「邪神?」
「ああ」
まったく、ここまで及んでいるとは。しかも、先手を打たれてしまった。まだこちらは準備すらしていない。相手はきっと俺たちと別れたあと、早急に準備していたはずだ。
こちらのほうが不利だ。しかもここは部屋。いくらトアノレスの部屋だからって戦うには狭い。
「一回外に出るぞ。トアノレス」
俺がそう命令すると私達三人はドワーフ国の広場に転移される。
「ほう、転移か。これはまた厄介だな」
「……ひとつ、答えてもらいたい」
「ふむ?」
「なんで私と同盟を組んだ?」
「そんなの、今から死ぬのだから、同盟なぞ関係ないじゃないか」
なるほど。僕たちの同盟なんて、非公式の場だ。破ったからといって、他国が干渉なんてしてこない。
もともと、俺たちを殺す予定なら、あそこで同盟を組み、警戒心を解いたほうがメリットだということか。
「確かに。私も焦ってたな」
……目の前の敵が見えず、ただがむしゃらに進むのは、愚者がすることだ。
髪をあげる。うん、こころなしか視界が広くなったか?
むろん、視覚なんて持ってないがな。
ボロボロの腕を無理矢理再生をし、相手をみつめる。いつの間にか、クルセーマの手には槍が添えらていた。
一発でも当たればこの体はおしゃかだな。
「私も手伝う?」
「いいや、それは無理だって知ってるだろ?」
それに、アメリさんを守っているほうが心理的にも負けられなくなってくるからな。
私は軽くジャンプする。そして、戦闘モードに切り替える。
核を高速で動かし、体を俊敏にする準備をする。他の臓器は最小限の動きしかさせない。
筋肉の一筋……その先の細胞すら自身のエーテルで扱う。
「流石にこれ以上は破裂するか」
構えは……クラウチングスタート。
「?」
クルセーマは不思議そうにこちらを見つめる。
「よーい……どん!」
その限界の速さで射出された僕は光の速さとも見れる速度でクルセーマの懐まで迫る。
瞬間にトアノレスを召喚し、燕返しのように上段の閃撃を刻む。
はいった、そう思えた閃撃は、いとも簡単に素手で防がれた。
(せめて槍ぐらい使えよ)
ぐぐぐと二人の力は拮抗していた。
通常、下の方が地面があるため、力が増す。逆に上の方は浮かされる感じなので、ふんばれない。
だが、それでも力は拮抗していた。
「やっぱり、この体じゃこれしか使えないか」
転移をし、後ろに回る。完全に死角。トアノレスを最短で最速の一刀をかます。
それに対し、クルセーマは完全に体を捻り、トアノレスを跳ね返す。やっぱり、コイツ……
「その槍もたいがいじゃないな?」
「邪神に見初められた原初の槍───紅蓮だ」
邪神に見初められた、ねえ。
「そんな大層な槍を持つなんて、そちらの邪神様とやらを知りたいよ」
「おや、そちも興味があるのか。どうだ? そちも教えを説いてもらえ」
「ああ、そうさせてもらうよ。……その邪神を倒してからな!」
「不敬な!」
こちらは薙ぎ。むこうは突きだ。さっきの力の関係からいって、こちらが負けるのは当たり前だ。
だから、一工夫いれてもらう。
『形状変化』
トアノレスもそうだが、トアノレスは命令すれば変化する。ここで変化するのは私の体だ。
無論、無理矢理にでも体を弄れば、エーテル量は削れていくし、体も最悪折れる。
まあ、多少の我慢だ。
縦に割くその太刀筋は横に変化する。
予備動作なしの完璧な不意打ち。
一刀。一筋がその体に通る。手ごたえはあった。……しかし、なにか違和感が……ッ!
───刹那。僕の体に槍が突き抜ける。
「……そちは血が出ないのか?」
背後に聞こえる声。ゆっくりと、それでも確実に命を刈り取る一突き。
「ゴハ……ッ」
「不思議な生命だな。そちは」
分身。気づかないわけがない。だが、目の前の奴はそれを僕に感じさせる気もなく、使ってきた。……これも、邪神の賜物か。
「……ッ、それは褒め言葉として受け取っていいかな?」
「いや、軽蔑さ」
蹴り。その攻撃を、私は避ける術もなくその身で受ける。
「……はあ……まさか、ここまで劣勢を強いられるとは」
転がり、そして起き上がる私が、そう愚痴る。
「絶望したか? この私の圧倒的な力に」
「ああ……絶望したよ。───お前の圧倒的な弱さに」
「……? お前はなにを言って───」
再びクラウチングスタートを構える。それをみて、クルセーマは嘲笑う。
「ふっはっはっは! また、それで来ようとしているのか? 私にかなわなかった癖に───」
「【神速】」
その速さは、先程とは比べられなく、光すら置き去りにする。
……光を超えた速さとは、どうなるのか。人間は、光を通して物質を見る。しかし、光を超えるた物質は、人間の目にはその物質がまだ移動していないように見える。
つまり、その速さは、過去へと至る速さの一閃となりえる。
───クルセーマが、自身を移動しているのに気付いたのは、もう200mも突進させられていた時だった。
「⁉」
余りの速さに周りの状況がわからずにいたクルセーマだったが、自身が僕によって斬られたことは気付いたみたいだった。
「ふっ、ふっはっはっはっは! 余には邪神様から頂いた一日一回限定に発生する《刻印能力》である《絶対神盾》があるのだ!」
なるほど、厄介だな。
「ならそれごと突き破る」
ミシミシと、周りの何かが軋む音がする。そして、私の刃がもう少しというところまで来ていた。
「⁉ な、なにをする! や、やめろ! 『やめろと言っているだろ!』」
他のスキルを行使していたために外していた〈支配無効〉が無かったため、私は言霊に少しだけ従ってしまう。
地面に着地する僕ら二人は、互いに見つめる。
「もう終わりだ。クルセーマ」
「まだ終わっていない! まだこちらには!」
「諦めろ」
上へ指さす。クルセーマのそれに従うように上を見上げる。そして、驚愕の顔を現す。
「なっ……!?」
その顔は本当に開いた口が塞がらないを体現したかのような顔だった。
なにせ───そこには隕石がきていたから。
「『隕石』。シンプルながら膨大のエーテルと破壊力を有するセレマだ」
「や、やめろ! こんなことをして、ここに住んでいる者どもがどうなるかわかっているのか!」
「ああ、もちろんさ。だが───そんなこと、知ったこっちゃない。俺は邪魔するものをぶっつぶす。それが例え───世界を壊すとされる邪神でさえも」
その岩石が地面に着地する。静かに。鮮やかに。この暗がりの夜が響くこの国に、光が届く───。
こういうのはすぐに思いついて一夜で書けるのになあ……




