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4000兆回目の転生日記  作者: ゆるん
三冊目《監禁魔女王の解放》
83/102

10ページ,鍛冶勝負

「ゴウルァア! なぁにウチの武具やってくれとんねん」


 ということでヌルッとドワーフ国にきていますが、来て速攻メンチ切られました。


「いや、別に強度の低いものを壊してもこの国は構わないだろう?」


「は? お前この武具を素手で───? いやまて、そもそもこの武具を壊すとか───」


 ブツブツと意味わからんことをほざいていますが、説明してあげましょう。


 まず、私たちがこの国に来た理由について。


 ここでは、主に装備の強化を主としている。もちろん、自分が創っていてもいいのだが、強度が曖昧で着れる人が限定的になる。


 だから、誰でもある程度の装備が着れる。ただ、こんな中堅でこのレベルとなると───


「誰が中堅だ! 俺は───」


「ああ、はいはい。わかったから。どうせ自分は偉いんだぞーだろ? そんなのもう分かり切った嘘なんだから自意識過剰はやめな?」


 テンプレは熟知しているのだ。


「違う! 偉いんだぞ、じゃなくて偉いんだ! 俺はミキレバ国宮廷鍛冶師! この国で二番目に凄い鍛冶師なんだぞ!」


「へーで? 一番は?」


「興味ないな! お前」


「いやー二番でこのレベルかって思ってな。一番もたかが知れてそう」


「ばッ⁉ お前、不敬だぞ!」


「じゃあ、勝負する?」


 実は、ドワーフは魔族よりも実力至上主義だったりする。


 強ければ、偉い。偉ければ、この国を支持できる。……それが、ドワーフでなくても。


 まあ、それでこの国は回ってきた。


 さて、そんなこんなで唐突に始まりました。鍛冶対決!


「……何勝手に始めてんの」


 そして、アメリさんのジト目を貰った。あざす


 ちなみにだけどあのドワーフと話しているとき、転移者たちは町を回っていたみたい。


 私を一人にしてんじゃねえ!


「ルールは簡単だ」


 一人、観衆の視線だけが漂う静かな空間に呟く。私が見据えるその先にいるドワーフは、やはり先程と同じようなものではない覇気を放っている。


 ただ鍛冶をするだけなのにそんな物騒なモン放ってんじゃないよ。


「今から二時間。より強い階級の武具を作ったものを勝ちとする」


 〈初級〉〈中級〉〈上級〉〈奥級〉〈聖・魔級〉〈王級〉〈皇級〉〈神級〉〈極致級〉


 もちろん、鍛冶物にも階級は存在する。


 まあより上の物を作ったら、私の勝ちなのだが……先程も言った通り、強度が曖昧だったり着るものが限られたりとなっている。これは、私の鍛冶系統スキルのレベルが私本来の技術と嚙み合っていないからだ。


 本来、スキルというのは技術だ。そして、レベルが上がるごとに技術も向上している、ということ。


 だが、転生を繰り返している私はスキルのレベルがぐちゃぐちゃになり、本来の技術とスキルのレベルが異なってしまう。


 まあ、要するに。


 私の鍛冶の技術を上げればいいだけのこと。


 しかし、それは一朝一夕(いっちょういっせき)で出来るものではない。そんなことができたら苦労しない。


 だけど、そんなときこそ技術(スキル)でカバーする。


「〈全選択眼カナーマファスト〉『模倣眼』」


 模倣眼。簡単に言うと見たものをコピーすることができる。そう、技術さえも。


(お前は利用されるんだよ)


「はじめ!」


 どっかの誰かが試合の合図を始めた。もちろん、今の段階では勝てる見込みはない。


 イカサマで勝つしかないだろ~?


「パル、悪い顔」


「だっからなんだ。バレなきゃなんでもいいんだよ」


 いっひっひっひっひ。っと、アメリが引いている。


 観客は私がなにもしていないから疑問の目を向けている。まあ、もうできてるし。


「おい小僧! ただ突っ立てるだけでは物は作れぬぞ? それとも戦意喪失でもしたか?」


「いやだから作ったって」


「また馬鹿なことをほざきおる。これだからワカモンは……」


「おい老害。いや、年的に言えば俺の方が老害か。もういいや。じいさん、できてるって言ってるやん。ほれ」


 〈念動力〉を発動して熱々のその武具をそっちに放り込む。


 ジュウゥゥウと冷やされる音を鳴らし、輝くその武具はやがてサファイアのように青く、長剣へと変貌する。


「……その武具の名は───」


 一つ、参考にしたものだ。そうキャルの、あの剣を打った巨匠。


『……お前に一つ、言いたいものがある』


(人生の中で、唯一忘れなかった言葉)


『この、設計図を、お前に託す。これは、純情な少女に打ったもの。だが、俺の打ったものは完璧ではない。殺生をあまりしてほしくない、そう願いを込めて、不完全なものを打った。だが、この判断が正しかったのか、俺は分からない。もし、彼女に会い、彼女が心身共に、立派に成長していたら、これを打ち直してほしい。この武具の名は───』


『「イメグラン」』


「……っぐ、ひっぐ、う、うぅぅ、ああああ……」


 ドワーフのおじさんは、柄にもなく目から雫をこぼす。その剣に手を伸ばし、まるで旧友の再会のように悲しげに、そして嬉し気に頬を緩ませた。


「……兄者」


 その一言に、周りに伝播し、動揺の声が生まれる。


「おい、あいつの兄って」


「ああ、世界の失われた(たから)といわれた、ガルム」


「あの剣を見ながらそれを言ったっていうことは……アイツは一体ナニモンだ?」


 だいたいは察している者達。


「答えろ」


 下を向きながらも、燃える瞳でこちらを睨むような感覚を醸す。


「なぜ、これを作れる……」


「……ただ、教えてもらっただけだ」


「……そうか……」


 彼はゆるりと立ち上がると、空を見上げる。


「ずっと、憧れだった」




『うーん』


『どうした? グラマース。なにを悩んでるんだ?』


『今日学校で将来の夢を発表しよう、って言われたんだけど……俺そんなのないよ』


『将来の夢か……確かに難しいお題だな』


『……そういえば兄者はなに作ってんだ?』


『クロックワーク、その中でもこれは目覚まし時計ってやつだ』


『? よく難しいことは分かんねえよ。兄者』


『はは……まだ分かんなくてもいいさ。お前はすぐに俺に追いつく。焦らなくていいさ』


『わかった! ……あっ! そうだ決まった!』


『?』


『俺の将来の夢は───』





「結局、俺は兄者を超えることなんて出来ない……憧れは、憧れのまんま終わっちまうんだよ」


「───んなことはねえよ」


「……どういうことだ?」


「この剣。見ただけで完成品は知らないんだよ、僕。もし、この剣を本当に完成できたなら、その時お前は兄者を超えられたと言えるんじゃないか?」


「……」


「なあ、グラマース。俺、実はあの剣。仲間が持ってるんだ。だから」


「……!」


「俺と一緒に完成させないか?」

ガルム意外と登場しちゃって僕びっくり

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