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4000兆回目の転生日記  作者: ゆるん
三冊目《監禁魔女王の解放》
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9ページ,ドワーフ国、向かう

 私は、『朝』を知りません。夜は、暗いものだと教えられてきました。だから、私に、朝というのはありません。


 明るい夜には、休まずに来る患者のお世話をしないといけません。


 そして、暗い夜には異端者と日々殴られ続ける毎日です。


 なんでこんなにも辛いことをしないといけないのか。


「あんたなんか国に言われなきゃここにいることすらできないんだからね!」


 私は孤児です。昔にお父さん、2年前にはお母さんが居なくなってしまいました。両親は聖教に属していました。二つの派閥に分かれる聖教。その中でも少数で、異端とみられている"改革派"。それが両親のは罰でした。


 さらに、改革派は現在、主流となっている"保守派"と対立しています。


 改革派の両親の下、生まれてきた私は、保守派にいる叔母のもとへと匿われています。


「だから、アンタはこんなところで、てんやわんやしてたのか? おっさんと」


「……は、はい……」


 目の前にいる痩せ細った少女は力なく頷いた。そして、こちらを見る。そう、怯えた目で。


 なぜって? そんなの───


「事情はわかった? アメリさん」


「うるせえぞ、(はらわた)引きちぎられたいんか?」


 こっわ。


「もうゆるさない。今度という今度は……」


 縄をビシッと、(くら)げな目でこちらを見る。アメリさん、怖いです。


 僕の後ろにいる少女はプルプルと震えている。


「と、とりあえずアメリ。僕が急がなきゃいけないのは知ってるでしょ? アメリはこの子を私達の家に連れて帰って」


「はあ───了解」


 ただ、家に帰ったらお仕置きね、と一言おいてアメリさんは帰っていった。


 はあ、一難去ってまた一難、という言葉があるが、実際にこんなことが起きていいのは稀だと僕は悟ってしまった。


「……急いでいかないと」


 そして、数分後。私は思い知る。


「また、救えなかったのか?」


 数分前。まだ走り回り、もう少しだというとき。異変が起きた。それは───魔族。


 しかし、様子がおかしい。


神敵(しんてき)には天罰を」


 赤い目をグルグルして、なんの技にもなっていない武具を振り回す。理性がなっていない。


 にしても気味が悪い目だ。力も、魔族の一、兵士としてはだいぶ強い部類にはいるだろう。


 まあ、そんなことを相手している場合ではないのだ。───トアノレス。


「切り捨て御免」


 腕だけ断ち切る。あの人は〈再生〉持ちだったし、まあ生き延びれるだろう。にしても、人種で〈再生〉持ちって本当に人種なのかな?


 まあ気にしない。


 走り続ける。たとえ体が壊れようと知ったことではない。今更だ。


 そして、草木をかき分け、視界がようやく晴れる。月夜に照らされた───血まみれの現場を。


「は?」


 明らかに、素っ頓狂な声が漏れる。キャル、ケル。それ以外にも多数の人間が大量出血で倒れている。


「………………」


 だいたいは、腹部になにか突き刺さっている。


 大丈夫。全員気は失っているが、ギリ生存している。


 にしても、なるほどな。


「やってくれたな」


 とりあえず、みんなの治療だな。


 ***


 応急処置を済ませたキャルとケルは家に寝かせてある。他の重傷兵は王宮に放っておいた。極端にキャルとケルだけが重傷だったので、付きっ切りで二人は見ないといけないが、他は別に応急処置程度でなんとかなった。


 キャルとケルにはナイに任せてある。まあ、堕ちても元は下級天使だ。任せていいだろう。


『任せてください! こういうのは得意なのであります!』


 胸張ってたし。大丈夫だろう。失敗しないのを祈る。


『あれ? こういう時ってどうしたらいいんだろう? って! あわわわわ! えととととt……』


 ……ドジっているのが目に浮かぶ。……大丈夫だろう。うん。


 そして、今は朝だ。そう、ドワーフの国に行く。


 みんなリュックサックを持って───


「いや、デカくね?」


 そこには、見上げるほどのリュックサックを携える祐介。


「ゴリラ、なにをそんなに持っていく必要があるんだ?」


「それはもちろん! 100日分の食料にカメラに陣紙に魔銃に───あと俺の(浅田ちゃんの)お守り(写真集)!」


「「「……」」」


 全員が祐介に白い目を向ける。


 俺は香穂里(かおり)を見る。


「浅田ちゃんは私達の世界でアイドルやっていて……まあ、祐介の推しです」


 だそうだ。説明ありがとう。


「とりあえず片付けてこい」


 シュンとした顔で祐介は戻っていった。ゴリラの事は結局突っ込まれんかったな。あいつ自身も自覚しているのか?


 戻ってきた祐介のリュックサックは小さくなっていた。


 自然な形で出発した。座標がわかない所は転移できない。つまり、一度足で訪れないとそこには転移できない。


 まあ、ちょうど聞きたいこともあった。


「さて、歩きながらだけど、話してもらうか」


 法線でつないだ先にいるのは、昨日の少女。名前を尋ねてみたところ、リマというらしい。


『はい』


 彼女には、昨日も手伝ってもらった。


 大量の重傷兵を癒すのに、この子は最適だった。癒す力だけに特化している。


 ちなみにだけど、どっかから隠し撮りされて新聞に聖女と呼ばれたのは別の話。


 まあ、そんなこんなでリマは家で観戦中。ちなみに転移者たちを連れている理由は修行だ。コイツらは、まだ戦闘技術がまるでなっていない。


 多少鍛えられたようだが、それでも、これからの戦いにはついていけないだろう。


 今は魔物と戦っているが、全然だめだな。あれくらい一撃で倒せるレベルにならないと。


 全体的に見ても、子供のようなレベルだ。時間が惜しい。今は分身を全力で動かしている。これが倒れた場合、この星は終わる。


 だが……


「ここはもう少しこうした方がいい」


 ……ああ、いつも通りだ。


 もっと焦ろよ。もっと救えよ。もっと……


「パル?」


「どうした?」


()ってる?」


「───え?」


「■■■■?」


 辺りが、グラつく。視界と感じるものが、ざわつく。


「■■! ───パ■! ───パル!」


「!」


 やばいな。疲労がすごい。転移者たちも飛んできた。


「どうしました? クライシスさん!」


「なにかありましたか?」


 よろめいた私は力を振り絞って立ち上がる。


「なんでもないよ、さあ、まだ訓練だよ」


 続けよう。


 そして、ドワーフの国も、刻一刻と迫っていった。

全力出せません。モチベ湧かないんでもう少し待って

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