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4000兆回目の転生日記  作者: ゆるん
三冊目《監禁魔女王の解放》
77/102

4ページ,遇人

 ───クライシス家、パル=ヴァデレード───


「さて、と」


 家に戻った俺は、やつを探す。が、いない。やっぱりなにか隠しているな。


 アメリさんはずっと私の袖をつかんでいる。そんなに今日見た夢が怖いようだ。他に恐怖があるかこの前聞いてみたのだが……


『私に恐怖なんてない。……でも、もしあるとするなら…………あなたが、あなたじゃなくなること」


 その言葉に、どう探っても分からない。やっぱりアメリ(ごころ)はわからない。


 エーテルを辿り、奴を探す。私の考えでは、奴はここら辺に……ビンゴ。


「アメリ、スラムに行くよ」


「……他人の恋心なんて、ほっとけばいいのに」


「俺が情で動けない人間なんて、とっくにわかってるだろ」


「……ごめんね」


「謝らなくていいさ」


 とっくに壊れたんだから。


 僕が歩き出すと、アメリさんは後ろからついてくる。『転移(レザス)』で一緒に転移する。


 そこはあっという間に"元"スラム街であった。そして、とある声も聞こえた。


「ケーラおにいちゃん! こんなにいいの!」


「悪いねぇ、こんなにもらっちゃって……」


「いいんだよ、さつきのおばあちゃん。今まで世話になったんだから」


 王がここを正式な都市へと認めようとしても、ここはスラム街。そう簡単に覆せるほどはない。経済に関してはアメリがやっている。


 もう少しで大丈夫だが、そのもう少しで救えない命も、もちろんある。


 だから、こうやって救おうとする命も、大切だ。


 ケーラは話し終わると、薄暗い所へ行く。とても怪しげな雰囲気だ。少なくとも、勇者が行くようなところではないな。


 道を進むと、ピタピタと雫が落ち、日の光は遠ざかっていく。進めた先に、人影がある。それは、ベッドで横たわっている。髪は恐ろしいほど整っている。


 ここで育ったとは思えないほどに、容姿は優れており、寝ている姿ですら様になっている。


 ……本当に、人間か?


 色欲の悪魔といわれても、納得できる。


 辺りは魔素で充満しており、常人の人間では居るだけで廃人になる。


 ケーラは、彼女に近づき、声をかける。


「ただいま。調子はどうだい?」


 手を取り、彼女の顔を見ると、死人のように動かなかった彼女の瞼が、ゆっくりとあがる。


「おかえり、ケーラ。いつも通りよ、ケーラの方は、最近どう?」


「それがね───」


 そこからは、他愛のない話が続く。二人は、とても幸せそうだった。だが、急に二人は黙りだす。会話から察するに、彼女から先に黙りだした。


 ケーラは困惑している。


「───いつから、ここは見世物小屋になったのかしら?」


 笑いながら目を閉じる彼女に、流石に騙せないかと僕は思った。


『いくよ、アメリ』


 姿を隠すセレマを解き、二人に姿を現す。


「クー……?」


 ケーラは突然現れた僕たちの姿に困惑を隠せない。


「ようこそ、ケーラのお客さん? こんな住みにくい場所だけど、ゆっくりしていってください」


「いやいや、長居する気はないよ」


 僕たちは歩き出す。って、痛い痛い、アメリさん。つねらないで。えっ喋りすぎ? たった13文字しか喋ってないじゃん!


「失礼ですが、名前をお聞きしても?」


「ルーラよ」


「なんでこんなにも魔素があるのに、ここにいるんですか?」


「ルーラは、魔素がないと生きていけないんだ」


 ケーラが暗い顔をして答えた。


「原因は?」


「今でもわからない」


 勇者は、聖の代表。だいたいの病気やなんやらだったらセレマで吹き飛ばせる。


 ということは、病気ではない、ということか。


「なんで今まで言わなかったんだ?」


「……───それは」


「私が言わないで、って言ったんですよ」


 ケーラの言葉を遮るように、ルーラは答える。その目は、"ケーラを責めないでください"と訴えているような目だった。


 私は肩を(すく)める。


「まあいいでしょう、俺は喧嘩しにこの場に来たわけじゃない」


「そういえば、クーの来た目的ってなんなのさ」


「そ、れ、は、最近お前がトレーニングに意欲的じゃないからだ」


 その言葉を聞くと、ケーラは目を見開く。


「……僕のせいだったか。悪かったね」


「でも、このままだと、なにも変わらない。そこで……」


「「……?」」


 僕は、ルーラの目を見る。


貴女(あなた)も、私達と一緒に来ませんか?」


「……私も、できるなら、そうしたかったですね。ですが、私はここから動くことができません」


 ほう、そう来たか。でも、それだとケーラはここまで来るのに(うつつ)を抜かし、力が向上しない。


「では、俺が見ましょう」


 有無を言わさず陣を展開。こういうセレマを使う診療は陣を使った方が正確性が高い。


「ちょ───……⁉」


 何か喋ろうとしても邪魔なのでお口はチャックしてもらう。


『解析鑑定……術式補助……重点集中……相互対比……───異常検索……完了』


 ……なるほどね。


 全てわかったけど、さてさて……どうしようか。


 ルーラを見ると、彼女も察しがついているような表情をしている。


「……クー……?」


 考え事をしている僕に、ケーラは恐る恐る私の顔を除く。


「いや、どうやらこれは魔素(まそ)(ゆう)障害(しょうがい)だ」


「魔素優障害?」


 オウム返しにケーラは尋ねる。


「通常、魔素を変換してエネルギーに換算する器官があるんだ。その器官の働きが常人よりも何千倍も悪い障害だ」


 実際は、違う。そんな障害なんて今作ったデタラメだ。


 ルーラは驚いた顔でこちらを見つめている。


「そ、それって……治るものなのか?」


「……任せろ」


 若干、()()の扱いは不安だが……。


『アメリさん、補助よろしく』


『かえったら、あたらしい"おしおき"、ついかー』


 ……勘弁してください。


 新たな陣を追加。ベースは、人形の改良をするセレマ。


 魔素を還元してエネルギーにする部位だけを改良して……あとは少量の魔素だけで足腰も動けるように……


「よし」


 ルーラは、まるで嘘かのように、指を動かす。目は見開き、徐々にその脚を、地面に着ける。


 ゆっくりと体が起き上がり、その地面に、体重をかける。


「……ル、ルーラ……?」


 信じられないものを見るかのように、ケーラは彼女を見上げる。


 ルーラは、立っていた。


 その状況に彼女自身も驚いていた。


「ケーラ……?」


「あっ……あぁ……ルーラ……」


 彼女に近づき、その体を抱きしめる。雫が、重力に従った。


「これしきのこと、私ができないと思った?」


「っ……! ……思ってないよ……ありがとう……」


 ケーラはその体を、大事に、大事に、確かめた。


『アメリさん……これって……まだ物語の後半じゃないよね⁉』


『……』


『なんでこんな展開にしちゃったのよ! もうこれからどう物語を展開すればいいの!』


『パル……なにを言ってるの……?』

あ、セレマとかエーテルとかはカタカナに変えました。

次回はケーラ泣いた理由とか書こうかな

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