2ページ,騎士団長の兄
「なるほど。現在は魔族が優勢ということか」
今までにも、魔族と人族ではいざこざがあった。二種間は互いに不可侵条約を結んでいたが、それを人族が先に破ったという感じか。
戦争が始まって二週間が経つ。互いに硬直状態が続いていたが、戦争に参加していた帝国が私達のせいで改革が始まり、戦争どころではなくなったため、大幅の戦力低下。
「そして、現在は聖教会の聖人どもが動き出そうとしている、ということか」
「うん、そういうこと」
「この戦争の件はファスト家も参加しているということは王国もこの戦争に賛成ということだな?」
「うん、そうだけど?」
「わかった。行くぞ、アメリ」
「……はい」
再び『転移』を使い、今度は王宮へと向かう。光に包まれ、次に視界へと入り込むのはどうやら王宮の中らしい。まあ、指定した通りだ。
「───だから! なんでそうお兄さんは頑固なんですか!」
「星王が絶対だからだ。それは、国よりも優先されるべきことでもある」
「だからって国民の命を危険にさらすことはできません!」
突然、声が響き渡る。女性の声の方はカムトリエさんだ。あともう一人は、どうやらお兄さんらしい。揉め事かな? でも国民の命とかいってるし重要な話かも。
「こんにちは、カムトリエさん、そちらの方はお兄さんですか?」
「あっ、クライシス殿! そうこちらの方は───」
瞬間、俺は間一髪というところで避ける。どうやら、剣が通ったみたい。私は反射で避けたけど、危なかったな?
「……お前は何者だ?」
冷徹な目を向ける彼は、カチンと剣をしまう。
「……どうも、クライシスと言います。エムラビエさん? いえ、様はつけたほうがいいですか?」
僕の言葉に、エムラビエの目はさらに凍り付く。
「……───貴様は───」
「───なにしてるんですか! 兄さん!」
バシン! と、どこからか持ってきた張り扇でエムラビエさんを叩く。いいツッコミだ。
「クライシス殿に謝ってくれ! この方は国の救世主なんだ!」
「「……救世主?」」
エムラビエと俺の声が重なる。だってそんな話今までに出たことなんてなかったのだから。
「国に迫っていたワイバーンを討伐し、戦争がおきそうだった帝国を改革させ、その他にも冒険者としてはかなりの実力者! そのクライシス殿のことをご存じない⁉」
……そんな風にカムトリエさんから言われるとは思わなかったな─……。いやまて! それよりもだ!
───俺っていつの間に冒険者でかなりの実力者って言われることになったの……⁉
よく考えろ……最後に冒険者活動したのっていつだ……? 思い出せる限りだと樹海捜査……。つまりベルゼブブと戦ったのが最後……!
あの時も、活躍のほとんどはキャルに吸われたから、僕の冒険ランクは無名のままだ。あれ? 活躍してなくね?
ということはつまり……
───カムトリエさんは嘘を吐いている……!(この間、コンマ0.0002秒)
「……そうか、そなたがクライシスか。失礼した」
よかった! 冒険者のことは突っ込まれなかった! 言及されてたら終わってた!
「……パル、いい加減話聞いたら?」
あっ、そうだった。気づかせてくれたアメリさんには感謝の意を込めて念動力で頭を撫でる。むふ─とアメリさんは満足げだ。可愛い。
「頭をあげてください、エムラビエさん。それよりも、二人はどうして争うことが起きていたんですか?」
「えーっと……その……」
珍しくカムトリエさんが歯切れが悪い。
「ここは吾が話そう。まず、魔族進行が進んでいるということは知っているな?」
私は頷く。
「そこで我らが星王が満13歳以上の冒険者の男女を戦争に出すことにした」
「そこが問題なのだ!」
カムトリエさんが大きく口を開ける。
「その徴兵制は二つ問題がある。まず年齢だ。最低でも13歳というのは明らかに若すぎる。そんな子供を戦争に駆り立てるのは間違っている! そして次に、それをこのカイメルス王国だけがする、ということ。他の国もこの戦争は加担している。なのにこの国だけが人民の被害を負うことになる」
「それは明確に一つの理由で片付けることができる。それは、この王国民が以上に強いということだ。世界でも類を見ない程の冒険者率。それは、四人に一人と言われるほど。そして、平均冒険者ランクも高い。それほどまでに、王国民は強いというのが星王の意見だ」
ちなみに星王というのは、人が決めた、この星のトップだ。起源といえば、確かこの星を作った創造神の子供、と言われてるが、真相は分からない。それこそ、何万というほどの昔だからな。
「だからって───」
「はい、俺は二人の口喧嘩を聞きにきたわけじゃないよ」
僕は手をパンッと叩き、その場を静かにさせる。
「まず、カムトリエさんは話を聞こう。エムラビエさん? さっきから自分の意見はまるで星王の意見だ、って言ってるけど……エムラビエさん個人としては、この意見は賛成なの?」
「……」
彼は無言を貫き通す。まあ、そうだろうな。
「まあ、自国の民が危険に晒されるっていうんだ。いくら主の言うことでも、躊躇うんだろうね」
「……これから、王のところへ行くところだ。どいてくれ」
エムラビエさんはそう言い、不安そうな顔で王室へと向かった。
「……すまぬ、クライシス殿。こちらにも、非があった」
「ちょっと! 辛気臭いのやめてくださいよ! こっちが悪いみたいじゃないですか!」
私がそう言うと、カムトリエさんは目を丸くする。そして、思わず笑い始める。
「ふふっ、そうでした。クライシス殿はそうでしたな」
「では、俺はこれで。連れとこれから用事があるので」
本当のことだ。これ以上話すとアメリさんに何時刺されるかたまったもんじゃない。
今だって、後ろに核法を構えられているんだから。ちなみに、核法というのは放たれたらマナ融合と同等の威力が辺りを襲う。いや、多分それ以上かな。<法>の中で一番の威力と言ってもいい。
いやー、冷や汗止まらん。
「……話過ぎ」
「はいはい、わかったよ。取り敢えずその物騒なものは解除してくれないかな?」
「はい、は一回。あと、次他のやつと話したらこれ、放つから」
「恐ろしい事いうね……」
もう今日は男女問わず誰とも喋らないようにしよう。
「……で、あとはなにをするの?」
「そうだな……魔族のところに行こう」
ちゃんと見ててくれよ!なるべく投稿頑張るから!