表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4000兆回目の転生日記  作者: ゆるん
三冊目《監禁魔女王の解放》
74/102

1ページ,時空の異変

 ───23日───


 目が覚める。横ではアメリが泣いていた。珍しい。


 僕は苦笑しながら子供みたいなアメリさんに問う。


「なんで泣いてるの?」


 抱きしめながら、背中をさすり、嗚咽を消していく。<法>は使わない。こういうのは人の温もりっていうのが有効らしいから。


「ッ……貴方が……居なくなるッ……夢……」


「見た?」


 コクンと力弱く頷く。夢だけっていうのにこれだ。昔っから変わらない。


「大丈夫だよ、ここに居る」


 ……あのような夢を見るのは、今回だけじゃない。そして、こんな夢を見るときは、大抵アメリが泣いている。原因は不明。


 暫くアメリさんの言う通りにした。キスしたり……ハグしたり……満足したのか、嗚咽はもう治まっていた。


「アメリさん? もう大丈夫だよね? もうする必要はないよね?」


「まだ……治まってない……もっと……」


 はい、お終いですねー。私は立ち上がり、いつもの準備をする。アメリさんは涙目だ。


 泣き落としは通用しません。


「ひどい……私をキズモノにしたくせに……」


 その言い方は語弊がありますね。そもそもとしてキズモノにしたのはそっちの方です。


「私……馬鹿だから……昔のことなんて覚えてない」


「はいはい、都合のいい記憶ですね。俺よりも頭良いのに」


 そういいつつ、僕は<法>でアメリさんに服を着させる。


 寝る前はちゃんと服着ようっていつも言ってるのに……。服着てても何故か翌日には服が無くなってて困ってるんだよなあ。


 そういえば、帝国から帰ってきてここに戻るのも久しぶりかと思ったら、意外と一日くらいしか家を開けてないことに気づいた。


 なんか体感、何か月だったような……いや、考えるのはよそう。


 リビングへ行くと、転移者たちの生活が思い出される。そうこんな風に賑やかな───


「なんでお前ら居るん?」


 そう、帰ったはずだった転移者たちがここに居た。夕夜がこちらへ来てみんなの代表となり状況を説明する。


「聞いてください、クライシスさん。緊急事態です」


 周りを見ても、確かにいつもの様子ではない感じだった。


「なんだ?」


「実は……僕らの世界と、こちらの世界の時間軸がズレています」


「……どういうことだ?」


「こちらの世界では昨日……でも、僕らの世界では既に二か月の月日が経っています」


「ふうん……」


 時空がズレている? いや、星次元世界単位でズレることなんて無理だ。それこそ、管理者じゃないと……


『お前は───……誰だ?私は■■■の命で■■■■を達成するためにここに来た。もう用は済んだのだから構えるな』


 一つ、アイツの言葉が過る。■は他のやつからはノイズしか聞こえない。それは、神の権能で下の種族には聞こえないようにしている。


 アイツ……あのヒステリック女の手下。なぜ虚次元世界へと来たんだ? 僕のこともわかっていなかった。つまり……狙いは"パル"じゃない。……まあ、このことはどうだっていい。


 考えるべきは───管理者が他世界へ来たとて、時空が歪むなどという事例は聞いたことが無い。


 なにはともあれ分からない内は実験だ。


「『転移(レザス)』」


 範囲は私とメリアだけ。転移者から見たら僕が急に消えた風に見えるが、どうせすぐに私が<法>を使ったことに気づくだろう。


 軽快な着地音で降りるその場所は、キャルの家。それも<邪覇獄凄愴試煉カザレイズ・ダ・ベータ>への入り口だ。


 すぐに気配を察知したのか、ケルがこちらへとすぐさま来る。『転移(レザス)』は使っていないはずだが……流石の速さだな。


「なんだ~クーか」


 俺の顔を見ると、その警戒心は解かれ、一気に脱力モードとなる。


 ここに来たのは、ケルをここへ呼ばせるためだ。


「ケル、この世界と<邪覇獄凄愴試煉カザレイズ・ダ・ベータ>の世界で時間のズレはなかったか?」


「ん~? そんな感じなかったけど……あっ! でもちょっと変な事件が起きてるかも」


「なんだ?」


 すると、ケルが腕を伸ばす。私とケルの間は三人分も距離がある。だが、にゅるにゅると腕が伸びていき、僕の肩へと手が届く。


「なぜか僕の体伸びるんだよね~」


 ケルが片方の手で頭を掻く。この伸びは……身体的な問題ではない。……空間が歪んでいる。やはり、ここでも時空がおかしい。


 だが、時空は重力が関係してくる。だが、どの世界にも重力の変化はなかった。重力は世界で均等に配られる。だから、時間が一つの世界でも歪むということは、重力も歪んでいるということ。


 つまり───時空だけを干渉する力の持ち主……。


 僕は、そんなことができるのは、二人しか知らない。一人は創造主。もう一人は……。いや、向こうは此方に干渉する理由なんてない。


 思考を変えよう。


邪覇獄凄愴試煉カザレイズ・ダ・ベータ>と、転移者たちが住んでいた地球。調べてみても、二つの時空が歪んでいることなんてなかった。


 ここだけが、歪んでいる。この世界だけ───もっと限定的に言えば、この星が、時空が歪んでいる。


 うーん、その現象がわからない。それが、自然に起きていることなのか、人為的に起きていることなのか、それが分かれば対処は容易なんだが……。


「ケルー! どこ~⁉」


 すると、廊下の方からキャルの声が聞こえる。やけに焦っている。荒い足音も徐々に近づき、それは私たちの開いている扉の前で急に止まると同時に、キャルの姿が見えた。


「あっ、クーたちも居たんだ。ちょうどよかった!」


「……なにかあったの?」


 メリアさんが声を上げる。なにかは察しがついているなのだろうけど、自らそれを言わせたいのだろう。


「実は、ファスト家に魔族討伐の応援要請が出されたの」


「……それで、私達と何の関係がある?」


「い、一緒に戦ってほしいの!」


 両手を握り、力説といわんばかりの勢いを僕らに送ってきた。


 魔族、正式名称は魔人族。人族がそう名称しているだけだ。好戦的でとても横暴。人族を殺さんとばかりの為に生きている───そう人族の間では言われている。


 実際は、魔族は人族と同じ。好戦的でも、あり、優しくもある。そう、人によるのだ。


 結局違うのは、DNAの差だ。


「戦うことはしない。人と人の戦争には関与しないからな」


「えっ……?」


 キャルは困ったように言葉が窮する。


「じゃ、じゃあ、なんで帝国の戦争に参加したの?」


「あれは戦争とは言わない。私が気に入らなかったからしただけだ」


「あっ……そうだもんね、クーって、そういう性格だよね」


 キャルは落胆したように言葉が薄くなる。だが、その仕草は不自然だ。どうせキャルもこのようになるってわかっているはずなんだが……演技だな。


「はあ……別に、戦争に参加するわけではないが……戦争を起こすわけにもいかない。それも、種族間での戦争は危険だ。星すら巻き込む。まずは状況を教えろ、キャル」


「! うん、ありがとね、キャル」


 まったく、こうなることはわかっていたな。キャルの将来は悪女にでもなりそうだ。

ちゃんと見てろよ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ