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4000兆回目の転生日記  作者: ゆるん
二冊目《自称皇帝とジャパニーズ転移者》
66/102

29ページ,主導権は花に譲ります

「エペラーは、何かに嵌っていた。狂気的なほどに。朝から夜まで変な書物を見るようになった」


 事あるごとに机を蹴ったり物に当たっていた。たまにどこかへ遠征へ行った。


 そして、ある日。唐突にガイラズを連れてきた。当初のガイラズは、どこかボーッとしていて何か<法>をかけられていた様子だった。


 そのまま、ガイラズは部屋に連れていかれ、巨大な陣の中心に立たされた。それは、フレアが今の姿になった元凶のクローン聖法が一部使われていた。


 ───意識を操る陣のパターン?


 キャルが見ている映像に映る陣を見て、そう思考する。何故、その思考に至ったのか。それは、先程見たフレアの陣と多少変わっただけだからだ。


 だが、それでも効果は丸っきり違う。


 この陣が表す意味は、支配。だが、その継続時間は短いようだった。一か月に一回は再支配をしなければならないので、ここへ呼ぶ。


 ───人口魂───


 それは、複雑なもので、未だに帝国で完璧なものはできていない。ガイラズは、その実験対象(モルモット)。日々、ガイラズの人口魂は進化されていった。


 そして、それに伴い、支配も自由になるように。今では、完全に理性を支配して、会話する内容もあやつれられるようになっていた。


 もちろん、キャルは怒っていた。父を、人として見ずに実験していると考えると、激高を押さえられずにいた。


「……ごめんね」


 そんなキャルを見たフレアは、目を伏せてか細い謝罪をぼやく。


「……確かに、フレアたちのやっていたことは悪い。でも、それでも、私は信じてる。それを、償えることを」


 フレアは、キャルを再度見た。そこは、落ち着いた瞳をしていた。


 画面では、偶然スラムに訪れていたガイラズがケーラと出会う場面が映し出されていた。そして、その後にガイラズの勧誘によってケーラが帝国に連れられて行く様子を。


「エペラーは、なにか道を彷徨っている風に見える……誰も、幸せにならないと分かっているんだと思う。もう、後戻りできない場所まで来たと彼は思っているんだと思う」

「……キャル」

「全てが終わったら、彼に一発殴らないとね?」


 そんな満面の笑みをしたキャルに、フレアからは涙が出た。


「なんで、許せるの?キャルのお父さんを私たちは実験台にしたんだよ⁉なのに……なんで……」


 そこからは、嗚咽が響き渡った。しかし、そんなフレアの背中を、キャルは撫でた。


「……私ね。お父さんに聞いたことがあるの。『もし、お父さんを操ってた人に会ったら、どうするの?』って。そしたらね、お父さんは……『キャルの好きにしたらいいと思うよ』って言ったの」

「……なんで……?」

「私もそれを聞いたの。そしたらね、『私を陥れたやつの事……多少は覚えてるんだ。彼は、非常に悲しい顔をしていたと思う……なにも、救われない暗闇に居たんだと、今だからわかる。これは、あくまで私の推測だけどね。彼は、大切な人を失ったんだと考えてるんだ。そんな人を……僕は、責めれないよ。だから、代わりに、キャルが好きに叱ってくれたらいいと思うよ』って言ったの」


 フレアは、目をぱちくり。


「笑えるでしょ?あの人、相当なお人よしみたい。だから。私も、お父さんと一緒。彼を叱らない。でも、ちょっとムカつくから一発殴るけどね♪」

「…………なによそれ……バッカみたい…………」

「あっ!今馬鹿って言った!」

「そりゃ、そうでしょ……。でも……ありがとう」

「うん♪」


 他にも、二人は沢山のことを話した。昔の思い出話だったり、暴露だったり。


「キャル。よく聞いて」


 フレアの声が、突然、真剣見を増した。その言葉に、キャルも目を細める。


「今度は、私の事を話すね」


 一泊置き、口を開く。


「現在、私は意識と魂とで全く別の状態。今の私は意識が主として動いているから、混乱していて全てが敵のように感じている。ただの指示待ち人間、といった方が良さそうだけど。だから、この意識を少しでも纒て意識を安定させるために、私はここで待っていた。誰かを。そしたら、キャルが来た」


 フレアが嬉しそうな顔をする。


「今から、私がこの体の主導権にする」


 すると、これから悪戯をする子供みたいな表情を、フレアはしていた。


「つまり、キャルの力が必要ってこと。だから───」

「もちろん、手伝うよ」


 その即答に、フレアは心底驚いた。


「こういうのって……普通迷う所じゃない?」

「他でもない親友の頼みじゃん。迷うところなんてないよ」


 二人の目が合う。そして


「「ふふっ♪」」


 笑った。


「主導権を貰うのは、簡単。この意識塊(いしきかい)を触って自身の<力>を思いっきりここに突っ込んでこの意識塊を私で染めるの」


 意識塊。それは、先程キャルが触れた球体であった。


「じゃあ、行くよ───」


 長年寄り添いあってきた二人の息が、一瞬にして合う。


「「せーっの!」」


 二人は、意識塊に<力>を流し込む。キャルは、フレアに強引に<力>を流し込んでフレアはそれを自分の<力>の波に変換。さらに意識塊をつぎ込む。


「もっと!」「わかってる!」


 しかし、意識塊は一向にフレアは染まる気配はない。二人とも、そろそろ<力>の量の底が見えてきた。だが、やめない。


「フレア!」

「なに!キャル⁉」


 大量の<力>を送っているキャルは、生き絶え絶えながらも、フレアに声をあげる。


「これ、使って!」


 突然、渡されたものは───赤いナイフだった。それは、かつてガルムが打ったナイフであった。


「これって……」


 フレアの困惑に、キャルは大声で宣言をする。本心を。


「ずっと、ずっと!フレアが居なくなってから、自分の弱さを痛感してきて……苦しかった。悲しかった。だから、物に頼らないように、自身で鍛えるように、ガルムおじいさんが打ったこの武器は使わないようにしてきた!」


 自分の罪を暴露した。でも、胸を張って、自身を持って、その言葉を告げる。その手に持つ青い長剣を持って。


「でも、最近……ようやく分かってきた。結局、私は自身が無かっただけなんだって。ただ、言い訳できる都合の良いものだっただけなんだって!……もう、逃げたくない!私は逃げたくないの!だから。私は、この力を使って……皆を救う!」

「……キャル……」


 その気迫に、フレアは活気に満ちてきた。フレアの持っているナイフは、徐々に<力>を練り上げていく。キャルのも同様だ。


 フレアが、笑顔で答える。


「私も!キャルと同じ気持ちだ!皆を救う!」

「いこう!」


 二人の<力>が、意識塊に注ぎ込まれていく。その膨大な量が、元の意識を、一つにしようと練り上げていった。


「───ずっと、ずっと貴方を苦労させてきた。本来は、空っぽの意識だったけど、それを強引に私が入って。辛かったでしょ?だから───もう休みなさい!」


 そのフレアの言葉につられるように、意識塊は徐々に青から赤くなっていく。


「「いっけえぇぇぇぇぇえ!」」


 二人が、叫ぶ。そして、<力>が溢れた。

 辺りは、<力>で光に包まれた。


 ***

 ───同刻、皇宮広間───


「おっ」


 ずっと、キャルを見ていたケルが口を開く。後ろには、兵士の山。もう、すでに殲滅していて、片付けていたようだった。


 ───フレアの髪が、青から赤へと変わっていく。


「どうやら、成功したみたいだね」


 ケルは、キャルの髪を手で梳く。


「お疲れ。キャル」

───空っぽの、意識より。楽しんでね。私。

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