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4000兆回目の転生日記  作者: ゆるん
二冊目《自称皇帝とジャパニーズ転移者》
56/102

19ページ,皇宮侵入

 皆に隠匿系の魔法を使って、周りの認識を阻害する。これのおかげで、帝国の皇宮の入り口まで誰にも気づかれず来れた。


 勿論、先程の門番もこの魔法でやってこれたと思うが、やはり見どころが───


「そういうのとか……いらないから」


 アメリさん、心を読んで鋭いツッコミをしないで貰いますか?あなた、常時俺の心読んでない?


「……気のせいだと、思う」


 ………………僕はなにも言わないことを決めた。


『二人とも、静かにしてよね』


 キャルが私達について不満を漏らすが、僕ってなにも口出してないと思うんだ。(むし)ろ、アメリが一方的に僕の心を読んで独り言してただけで───


『うるさい』


 ……私の扱い、酷くない?(泣)


『クー、戯れるのは良いことだと思うけど……ほどほどにしよう?ほら、敵だってきたし』


 私達の目の前に居るのは、槍を構え始めた兵士。そこそこの強さで、Lvは23だ。これは、今の転移者たちの大体の平均ぐらいだ。でも、槍を急に構えてきたけど、どうしたんだ?


 兵士は、常時臨戦態勢の格好で見えぬはずの僕たちを睨みつけるようにキョロキョロと辺りを見回す。


「どこだ!侵入者!我らは、お前らの行動は理解している!無駄な行動は止めて投降しろ!」


『どうやら、僕たちの行動は理解しているみたいだね』


 ケーラの言う通り、向こうはアタシたちの行動を何故か分かっている。まあ、何故なのかはだいたい分かっているがな。


 転移者たちの方を見る。周りは隠匿系の魔法のおかげで僕たちの姿は見えない。だけど、私は皆に一斉に隠匿系の魔法を掛けたため、法線が皆繋がっている。そのおかげで、周りからは僕たちの姿は見えないが、僕たちは相手の顔を確認できる。


 ───そう、だからこの震えている転移者の姿も確認できる。大半は、恐怖。そして、それは"ある者の存在"。


 コツ、コツと靴の音が聞こえる。それは、もはや戦士のそれではない。軽快なステップのようだ。それか、威厳を嚙み締めた、重い足音か。


 どっちにしても、碌な奴じゃないな。


「おい、そこのお前」


 赤い服を基調としたローブを着て、豪勢な飾りつけをして、自分の権威を振りかざすような、そんな恰好をしている。そんな男が、前もって気配も無く現れた。


 勿論、警戒はする。だが、特にその男───皇帝からは、敵意は感じ取れなかった。


 だが、皇帝は目の前の空虚めがけて指を出し、パチンッと震えさせ、鳴らした。その刹那、私たちを繋いでいた法線が途切れる。つまりは、私たちの姿が可視化された。


 皇帝の方を見ていた門番も、私達の姿が見えるや否や此方(こちら)を振り向き敵意をむき出しとする。


 バレたらしょうがない。そのまま転移者に指示をだして兵士と戦わせる。といっても、皇帝のせいで震えている者が圧倒的に多い。だからまだ動ける者に指示をだした。


 色々なスキルを介して過去を見てきたから何故、震えているのかがわかる。そう、恐怖だ。一度、転移者たちは皇帝と交えたことがある。その時に、彼らは負けた。敗因は、不明。スキルを介して視ただけでは私は分からない。さらにスキルを使えば分かると思うのだが、あまり使いたくない。汚れているものは───どうやら、転移者が兵士を倒したみたいだ。


 それと同時に、僕は皇帝を睨みつける。その視線には、覇気を纏わせて。


 皇帝はそれを軽くあしらう。踵を返し、どこかへ去ろうという感じだ。兵士もぞろぞろと現れ始める。俺らくらいなら門番でも大丈夫ということか。随分と舐められてるな。私は思いっきりその場を蹴り、一気に皇帝の下まで移動する。このまま流れに任せて皇帝を殴りつけようとするが、急に空虚の下、私は動かなくなる。


 ぐぐぐ、と体を動かそうとするが、どうにも動けない。へえ、なかなかに面白い。このままどうするんだ?


 そのまま皇帝の行く様を見届ける。が、皇帝は僕の予想とは違った行動をする。皇帝は心底つまらなさそうに口を開く。


「ただの厄介者風情が。お前なぞ、私の手をかける手間すら起きぬわ。そういえば、見慣れたものも居るが───まあ、いい。必要なやつだけ再教育を施し、後は処分だ」


 それだけ言うと、皇帝は僕めがけて指を下に()ろす。瞬間、僕は突然重力が強くなる錯覚を受け、立ち伏せてしまう。


 俺は相変わらず皇帝を睨みつけていたが、皇帝はその様子すら飽きたのか奥の方へと歩いて行った。ある程度、奥の方へと行くと、転移聖法で何処かへ行ってしまった。肉眼では、その座標かを特定するのは、(いささ)か遠すぎた。


 皇帝の姿が見えなくなると同時に、私に乗っかっていた重りは消えた。


 後ろを振り返ると、大量の兵士たちが転移者たちを追い詰めていた。肉弾戦法。数打てば当たるといった具合で、兵士たちは転移者たちを攻めていた。一人でもなかなかの戦力を誇る兵士に、皆はかなりの苦戦を強いていた。ケルですら少し手間取っていた。アメリは───見なくても分かるだろう。自分の範囲内の敵だけ倒す。それだけをただ繰り返している。その内に、兵士はアメリの近くへと寄っていくことはなかった。


 これくらい、別に手間取らなければいいんだけどなあ……あまり教えたこともできてないし。


 まあ、さっきまで震えてるんだからそりゃ無理もないか。


 私は兵士たちに近づき一気に片していく。やがて兵士を押しのけ奥の方へ見えるは転移者たち。俺が現われた途端に、転移者たちも、兵士たちを薙ぎ払っていく。うんうん、教えたことができてるみたいだ。


 僕が来たから安心したのか?……いや、それはないな、多分。


 時間はかかるが、劣勢の状況でも、徐々に優勢へと運んでいく。やがては、兵士たちを一掃した。


「はあ……はあ……やっとかあ……」

「……ちょっと、はあ、疲れたよね。……はあ……」


 この量の兵士をやっただけでも転移者たちは疲れる。だが、それが普通。少しだけ鍛えたから、この兵士たちは勝てた。しかし……これだけの量をやるのは、並大抵のことではない。


「クー。これからどうするんだい?」

「奥へと向かう。まだまだ気配があるから兵士はこれからも沢山でてくる」


 ケーラとこの後のことを話していたが、そこにキャルも割り込む。


「でも、転移者たちをどうするわけ?」


 私たちは転移者の方へと首を向ける。そこには、疲弊しきった転移者の数々。殆どの者が、息を切らし十分に体を動かせずにいた。


「おい、お前ら」


 その一言で、転移者たちは僕の方へと向く。その瞳は、闘志が燃えていた。まるで球児の目だ!でもまあ、それもそうなるか。まだ、この中に捕まっている転移者たちもいるんだ。このまま終わるわけにはいかないだろう。


 言う理由もない。そんな無駄な一言を、場に言う。


「……まだ、戦えるな」

「「「はいっ!」」」


 やりたくなくても、ここまできたらやるしかない。それが、コイツらなのだ。まったく、どうしようもないお人よしだ。そんなこと、やらなくてもいいのに。


「おいてく奴は置いてく。それが、そいつのためにもなる。ただ、そうなるときまで、僕は戦う。……ついてこれるなら付いてこい!」


 挑発じみたその一言で、場を盛り上げる。ただ上っ面の言葉を掲げただけでは、飾りの虚言にしかならない。どうせなら、みんなを、コイツらを救える虚言を言いたい。


 その言葉を心に秘めて、私は向かう。皇帝の下へ。

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