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4000兆回目の転生日記  作者: ゆるん
二冊目《自称皇帝とジャパニーズ転移者》
53/102

16ページ,ナイの仕事

 ───同時刻、長霊族宿舎(エルフホテル)───


「んー、さってと」


 木製の机に座り、相対するその男と視線を交わす。先程、<力>が暴走を起こしていた男のエルフだ。


 なぜこんなに早く起きているのかというと、ある<法>のおかげだ。


 無理矢理ではあるが、時間が足りないので、『起床(トトラ)』を使って事情聴取をすることにした。


「……ぅあ、あの……」

「ん?大丈夫だ。お前の奴隷陣は破壊した。だからお前はもう奴隷じゃない」


 ふと、男の手首に視線を落とす。そこは、あるシンボルが飾られた腕輪。錆びれきっていて、廃れていた。


「それは……帝国のものか」

「は、はい……私は、ある日、帝国の手練れにやられ、今まで奴隷として生きてきました」

「年月は?」

「ざっと、136年ほどかと……」


 長いな。いや、エルフの寿命を考えれば普通か。でも、ここに来なかったら、ずっと奴隷だったのか。


 男は、そのまま語りだす。


「最近、人口勇者の一部が、帝国から脱走をしたみたいで……それで帝国は混乱の渦となり、奴隷の私もその隙を狙って帝国から脱出をしようとしたのですが……。奴隷商のものが、私の<力>を暴走させまして……」

「でも、転移聖法を使ってここまできたわけか」

「はい」


 だから突然、気配が現れたのか。きちんと気配感知もしないとなあ。サボっていた弊害がでた。まあ、今度から気を付けるとして……席から足を踏み出し、立つ。


「複数の気配。しかもちょっと多いか」


 転移聖法を用いてホテルの玄関へと向かう。ここに人だまりがあるみたいだな。

 見ると、<法>で作られた看板を持ったエルフたちの数が。なんだ?暴動(デモ)か?


 看板の文字を見ると、『消えろ、クライシス』『エルフの誇り、再結束』……またか。意外としつこい。


「うるさいなあ。文字がうるさい。またやる気なの?」


 複数のエルフの中からとある一人の首謀者らしきエルフのものが先頭へ飛び出す。


「一人のエルフの命が危ういのかもしれないのだ。なにかしないとエルフの誇りは消えない」

「はあーどうでもいい。アンタラの御託に付き合ってる暇ないんだわ。こっちも」

「そうやって逃げるつもりなのか!貴様も───」


 なにか言っているが、俺の耳には入ってこない。うざったらしい。黙らせるか。


「『うるさい』」


 かなりの<力>を込めた言霊を放ち、相手を黙らせた。プライドとか、大事かもしれないけど、拘りすぎるとそれは人を傷つける刃となる。


 そして、俺の言霊を受けた者たちは、圧力に負け、地面に四つん這いとなっている。


「当人を連れてくればいいんだろ?ソイツにも証言を言えばいいんだから」


 転移聖法を使ってあの男のエルフを連れ出して即行でデモ軍団に渡す。後は……まかせた。えっ?なにを話せばいいか?まあ、流れに任せよう。適当?ゼンゼンテキトウジャナイヨ


 暫く、読書を(たしな)んでいたら、エルフデモ軍団が土下座を繰り出してきた。もはや、新たなデモと言ってもいいだろう。


「「「すいませんでした!」」」


 まあ、謝ればいいのだから、それで私は許す。私もいつまでも年下にカリカリしてる器じゃないのだから。


 これが大人の余裕か?「違うよ」アメリさん……心を当たり前に読まないでもらいますか?

 まあ、これで誤解が解けたことでなによりだ。


 あーそういえば、勇者たちに事後処理任せてたんだ。あっちにも行かないと、まだナイの件も終わったわけではないのだから。


「向かうか」


 まあ、そろそろ終わっていると思うが。


 ***


 ───28(メイル)、訓練場───


「よっ、おつかれさん」

「エルフの件は終わったのか?」


 新真が早々に尋ねてくる。コイツなりに心配をしてるのだろう。ツンデレだな。


「そこまで元気だと解決したようだな」


 ホントに最近、皆私の心読みすぎだと思うんだ。どうしてだろう?


「お前がそんな性格をしてるせいだ」


 つまり自業自得?そんなー


「棒読みだな」


 というより、心を読んで会話するって思ったより異質だな。気色悪いわ。


「あっクライシス。大丈夫だった?」


 ケルも新真と同じ質問をして近づいてきた。まあ、以下略で説明。


「よかった~」


 他にもわらわらと皆が集まってくる。新真はスキルを使って逃亡を図っていた。


 もちろん、そんなことはさせない。人だまりにも慣れてもらうために『物理掌握(ガベラン)』を使って新真を捕まえる。


「クライシスさん。明日はなにをする予定ですか?」


 香穂里が、そう尋ねてくる。もちろん、その返答は決まっている。


「そろそろ、お前らも敵討ちをしたいだろう?」


 こいつらは、もう十分に力をつけた。レベルも、以前とは10ぐらいの差があるし。それも、『自身自立型土人形(アイム・ゴーレム)』のおかげだ。あれって意外と訓練になるんよ。


 私の言葉に、皆はついにか、と感激の言葉を漏らした。


「まあ、今日は、明日にむけてゆっくり休め。作戦はこちらで進めておく」


 ***

 ───夕刻、エルフホテル───


「……作戦、ホントに考えてる?」


 アメリが僕に背中を預けて尋ねてくる。もちろん、答えはNOだ。考えてるわけない。そもそも、作戦というのは、力なきものが力あるものに対抗する手段だ。つまり、力あるものが作戦を行うのは、時間を()く無駄な行為と言える。まあ、そこまで極端じゃないが。


「まあ、向こうは多分私たちの顔なんてしらないわけだし、正面から向かっていいだろう。でも、転移者たちは───」

「堂々としてていいと思う。正面から突っ込もう」


 アメリのその言葉に、少し苦笑を混じってしまう。それに、アメリもつられて笑ってしまった。


「さて、じゃあ、アイツのことも面倒見てやるか」

「ナイ?」

「ああ」


 そういえば、暫くほったらかしにしたままだったからな。どうなってるか確認しないと。


 スキル〈気配探知〉でナイの気配を探り、それを目印として転移聖法で虚空のそちらに向かう。アメリもついてきた。


「ひゃっ、パル……様。なんの御用でしょうか?」


 少々、怯えたような表情でこちらを伺うナイであったが、別にそんな心配はいらない。


「貴女を処罰しに来た」

「きゃっあああああ⁉」


 アメリの軽い脅しに、ナイは心底怯え、体を縮こませた。勿論、ただのアメリの冗談なのだが、どうしてそんなに怯える必要があるのだろうか?そんなにアメリのことが恐ろしいのか?それだったら、私の方が恐ろしいような……いや、アメリの方が恐ろしいか。


「……なんでこっち見てる?」

「なんでもない。というより、ナイ。さっきはアメリの冗談なんだから、気にしなくていいぞ?」


 僕の言葉に、ナイは涙目でこちらを、おどおどと眼差しを向けた。


「ホ、ホントです……?」

「大丈夫だから。な、アメリ」


 アメリはそっぽを向いて若干、不安げな頷きをした。


「それで、だ。これからお前の処遇を決めたいと思ってな」

「こここここ、殺されるんです?」


 そんなことはないのに。妄想癖が激しい性格のようだな。一体、誰がそんなことしたんだろう(白目)


「大丈夫。そんなことはしない。ただ───」


 ナイが僕の返事を固唾を飲んで待った。そんな緊張しなくていいのに。


「俺たちのメイドをしてもらえば、それでいい」

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