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4000兆回目の転生日記  作者: ゆるん
二冊目《自称皇帝とジャパニーズ転移者》
51/102

14ページ,異世界の日常

 ───1(モートン)後、帝国街───


 久しぶりの休日なので、私と諷歌(ふうか)知尋(ちひろ)小優魅(さやみ)の四人で買い物に来ていた。知尋が口を開く。


「明日は、人口迷宮(ダンジョン)63階層だね~」

「天然迷宮(ダンジョン)で訓練したいけど、危険だし、それに隣国の王国だけしかないからね」


 王国と帝国は情勢が悪いことで有名。しかも、私たちは、帝国代表の勇者。敵国へ宣戦布告を申し込むのと同義。


「にしても、諷歌と香穂里(かおり)はいいよね~!上級聖法まで扱えて。まだ私は、中級聖法もギリギリ発動できるだけだよ!やっぱ私の味方は知尋だけだ~」


 そう言い、小優魅は小さな体で知尋に抱き着き、胸の辺りで顔をスリスリ。ツインテールの髪が揺れていた。ついでに、知尋の胸も。っく!なんか負けた気分。周りの視線も知尋の胸に釘付けだ。


 知尋は、小優魅を突き放し、反駁(はんばく)をした。


「私は貴方と違って、身体魔法に優れているだけです~やろうと思えば最上級聖法もちょちょいのちょいで展開できます~」


 頬を突っぱねて、そっぽを向いた知尋。それに小優魅はニヤニヤして知尋に反論。


「いや~知尋って<力>の総量、私より少ないよね~。それに最上級聖法使うって、それはもうAランク冒険者でも難しいよ」


 フンッと小優魅の反論を聞いても、顔を背けたままの知尋だった。でも、新しいお店に着くと態度が変わり、目がキラキラと輝いていた。


「あ~これもいいな~ねぇ、諷歌。これどう?」

「!いいと思うよ。知尋ちゃんって、肌も白いし、白い服が一番似合うと思う」

「やっぱ、諷歌に聞くのが一番だ~よくわかってる~」


 そんなひっかかりの文字を含んだ言葉に、私はジトっと知尋を見つめた。


「まるで私と小優魅が服のセンスないみたいな言い方だね」

「まあ、だって~……ね?」

「目を逸らすなー!」


 小優魅が知尋を、ぽかぽかと殴る。確かに、小優魅は体だけではなく、精神も幼い。だから、ファッションセンスも……なんだけど、私はどういうこと⁉


「そんな怒らないでよ~」


 この胸の所為(せい)か!そうなのか⁉


「香穂里、嫉妬は、だめだよ?」


 そう注意をする諷歌なのだが……───私は、諷歌の胸をジトりと見つめながらも、話す。


「あんたも、同罪!」

「えっ?なんで~!」


 なにも分かってない諷歌を見ていると、なにかが込み上げてきた。そう、それは呆れだった。知尋の方を見ると爆笑していた。私もそれを見ると、笑いが溢れてきた。諷歌は、頭上に(はてな)を浮かべて私たちを見ていた。


 ***

 ───翌日、帝国人口迷宮(ダンジョン)前───


「これより、迷宮訓練を開始とする!」


 ジューイ・ファストさんが、高らかに、声を上げる。帝国騎士団長としての誇りを持って、剣を天に掲げていた。


 それに、あわせて私たちは全員で「おおっ!」と言った。


 ジューイさんが人口迷宮(ダンジョン)入口で陣を描き出し、それと同時に迷宮(ダンジョン)を塞いでいた扉が開かれる。


 ジューイさんが先頭を務め、その次に夕夜(ゆうや)くん……と、続いていく。そして、最後は私だったのだが、後ろを振り返ると、そこには明後日の方向をみた黒髪黒目の実は隠れ美形と噂されている、新真(しんま)が居た。


 古くからの私の幼馴染だ。私の速さならまだ皆に間に合う、と思い、新真に近づいた。


「ちょっと、新真!」


 すると、新真はゆっくりとこちらに振り向いた。


「香穂里か。どうしたんだ?早く皆の所に行かないと置いていかれるぞ」

「それは、こっちのセリフ。一体、なんでここに居るの?もしかして、また何処か行こうとしてた?」


 新真は、昔からよく何処かへ行ってしまい、気づけば居なくなっていた。───それに気づくのは、いつも私だけ。家族も、友達も、気づかずに、新真(コイツ)新真(コイツ)で、どこかへ行ってしまう。


 新真は、私の言葉に目を逸らしたまま、言葉を告げる。


「別に俺が何処へ行こうが、俺の勝手だろ?気にかけてくる奴なんて……それこそ、香穂里(オマエ)くらいだし……」


 最後のほうは良く聞こえなかったけど、それでも───


「アンタは、協調性が全く無いの!ほんっとに、すぐに目を離したらどっかに行くのだから。ほら、アンタは私が見ないといけないの。行くよ」


 私は新真の手を引いて歩いていく。少し、一悶着あったけど、それ以外はスムーズにいった。


 人口迷宮(ダンジョン)は、天然迷宮(ダンジョン)と違って危険が少ない。(たま)に誤作動として命の危機に晒されることもあるが、それは滅多としてない。


 だから、魔物(モンスター)に殺されることも無いし、(トラップ)で死ぬことも無い。


 安全に、63階層に行き、C級相当の百瞳巨人(アルゴス)(63Lv)を倒した。でも、結構ギリギリだった。バフ聖法を積み重なってようやく倒せた。でも、新真はなにもしなくて見てるだけだった。


 私は〈顕在(けんざい)勇眼(ゆうがん)〉を使って、新真の周りを見ていたけど、何故か新真の体内と、近辺が異様にマナの減りが早いことがわかった。


 スキルを使っている、直ぐにわかった。皆は新真のことを感知していなかったみたいだから、認識阻害系統のやつだと思う。


「新真!」


 私は、新真に駆け寄る。新真は問い詰められたようなマズイ顔をしてこちらを見つめた。


「なんだ?」


 冷静な風を装った返事をしたが、声が上擦っていたことを見逃さない。


「あんた、なんのスキルを使ったの?」


 少し驚いた顔をしてこちらを見据えた目をしていた。再度、〈顕在の勇眼〉を使って、新真の周りを見る。これは……


「説教中に〈鑑定〉しないでよ」


 目に特異の感覚を感知した。これは、ステータスプレートを見るときに起こる現象。


「〈顕在の勇眼〉……」

「ええ、そうよ。なんか文句ある?というより、ステータス開示したときからこの〈スキル〉のことは言ってたでしょ?」

「そうだな」


 私の問いに、新真は神妙な顔をしたまま首肯。私はそれに不満の意義を唱える。


「……謝るとかしないわけ?」


 私の呆れたような声に、新真は溜息を漏らして告げた。溜息がしたいのはこっちだよ。


「謝る動機が浮かばない。それに、なにを謝ればいいんだ?」

「全部。アンタが戦いに参戦しないこと。私の説教中に勝手に鑑定したこと」

「そうか、それはすまなかった」


 淡々と謝罪をする新真に、私は呆気に取られつつも新真はいつもそうか、と心の中で呟いた。


 ***

 ───帰り道───


「いやー、今日は、よかったですね、ジューイさん」


 夕夜くんが、いつもの調子でジューイさんに語り掛けると、ジューイさんは黙り込んでしまっていた。


「ジューイさん?」


 そんなジューイさんに夕夜くんは、再度名前を告げた。だが、それでも、ジューイさんは、黙り込んでいたままだった。


「……!ああ、そうだな。よく頑張った……ほんとに……残念だ」


 いつも元気なはずの騎士団長のジューイさんは、今日は静かだった。

 それに、なにかをぼやいていた。小さくてあまり聞き取れなかったけど。


 皇宮に戻ると、玉座に皇帝様が居た。私たちの目的は、皇帝様に仕える護衛の代替わりだということ。なにやら、少し前に仕えていた専属護衛たちが居なくなっていまい、次の護衛が見つかるまでの代替わりをさせて欲しいなのだと。


 もちろん、護衛の任務が終わったら、私達が転移した直ぐ後の学校に戻すとのこと。他に信用がないし、なにより今までなにもしてこないことから、私たちはここに居る。


 苦しいことはあるけど、でも私達は充実した生活を送ってた。───そう、この日までは。


「今から、お前たちには、ある実験をしてもらう」


 皇帝エペラー様に、唐突に告げられた。エペラー様には、未だ誰も勝てなかった。


 だから、普段は誰も、口答えはしない。でも、これは流石に疑問を呈する他なかった。最初に、夕夜くんが、口を割る。


「何故、そのようなことをするのですか?僕らは、護衛の代替わりをすることだけ了承したはずです。そのような約束事を、僕らはしていません」


 次いで、私も意義を唱える。


「私も夕夜くんと同意見です。何故私達がそのようなことをしなくてはならないのでしょうか?」


 他にも、皇帝様の決定に、疑問を告げる人もチラホラ。やがて、それは大きな喧騒に塗り替わっていく。


 皇帝様は、それを手で制すると、突如として、"私達の音"が止まった。行動も止まってしまった。ゆるりと、皇帝様が動き出す。


「別に、気にすることなどない。むしろ、神聖な儀式を行い、我らの世界に慣れさせようとするだけだ。さすれば、力は著しい成長を促し、新たな"視覚"も受け取れる」


 視覚か、資格。どちらなのか、よく分からなかったけど、私たちは視覚と聞き取った。


「安心しろ。この経験は、お前らを更なる高みへと導くことだろう」

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