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4000兆回目の転生日記  作者: ゆるん
二冊目《自称皇帝とジャパニーズ転移者》
48/102

11ページ,真体

 ───大昔───


「何故、お前如きが我らの術式に干渉するのだっ!」


 戦乱が響き渡る時代。そこは、命が軽々しく見積もられ、人々が非情に徹していた時。奴隷というのは当たり前で、善人でも、奴隷は当たり前のものだということを思っていた。


 だが、"外"から来たものは、違和感しか感じられなかった。その世界が、不気味で、歪んでいるということでしか世界を見れなかった。


 その者が取った行動はただ一つ。


 ただ奴隷を解放した。偽善と呼ばれるかもしれない。無駄な行為だと、愚行だと評されるかもしれない。でも、なんとなく。そうしたかったからそうしただけ。傍迷惑な行為を永遠と繰り返した。


「この、堕神がぁぁああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!」


 そう悲痛な一言を漏らし、倒されていくこの神も、納得がいかないみたいだったのだろう。

 こんな奴隷が許される世界で、存在意義を否定されるようなことをされているのだから。


 たとえ、許されなくても、罵られようとも蔑まれようと、進み続ける。いつかの目標の為に。


 ───人々から愚者と呼ばれ、世界で一番の罪人と呼ばれた者。その名は、パル・ヴァデレード。後に、世界を改革した英雄と言われたものだ。


 ***

 ───現在───


 あることを思い出していた。しょっちゅう、奴隷解放をしていた時のことだ。ただただ、愚者と蔑まれていた日々。


 あの後、奴隷の改革を進めて、なんとか道徳という概念をみいだせた。

 まあ、そんな過去があるのだから、コイツを倒すのは簡単なんだけどな。


「ふんっ、だが所詮は人の身。我を見るのは初見であろう」


 全然、勘違いをしてるぞ。コイツ。竜の姿っぽい感じがするが、列記とした神。だが、力は下級天使と同等。


 先手必勝。その言葉と共に流れる首先は、神の歯先が加われる。そのまま、神は俺の首を噛み砕こうとするが、俺は開かれようとする口と、その対象である俺の首を合間に自身の右手が割って入り込み、覇気で神の(かぶり)ごと吹き飛ばす。


「遅い」


 そう一言漏らし、神に追撃を喰らわす。転移者組は、そんな俺らを無言で呆気らかんにその様子を見てい居た。


 1秒にちょうど70発。その感覚で神を殴り続ける。こんなただの殴りで、神は死なない。


「トアノレス」


 俺の手には白き光る器具が掌にある。そして、器具特殊付与(エンチャント)をさらにする。


器具特殊付与(エンチャント)、対象『トアノレス』。№63。《社斬(しゃざん)》」


 トアノレスに神を倒すエンチャントを施し、神に向かう。


「っは、先程は油断をしたが、それがなければこんなの余興に過ぎぬ。たかがエンチャント如きで我……を……⁉」

「悠長に話してると、すぐに死ぬぞ」


 ぺらぺらお喋りを繰り返すときに、片方の小さな腕を斬った。でも、流石神で、斬られても悲鳴はあげなかった。


「ふんっ、そんなもので、小粋になるなよ」


 言葉と同時に斬られた腕は、ニュルッと再生をする。まあ、当然だろうな。


 だが、すぐさ神の後ろに転移をして、竜の姿をする神の毛を掴み地面に叩きつける。ドゴオンッ!と土などが舞う。さらに私はスタッと神の懐に着地する。すると、頭上からカチャ……カチャ……と音がする。さらに、無機質な声が響いた。


『個体名:パル=ヴァデレードが、スキル〈暴食悪魔(ベルゼブブ)〉のLvup(レベルアップ)を申請しています……完了しました。今までの功績と経験値によりスキル〈暴食悪魔(ベルゼブブ)〉はLv[MAX]になりました。……個体名:パル=ヴァデレードはさらなるLvupを申請しています……失敗しました。圧倒的に経験値及び功績不足です。……これにて、終了致しま───個体名:パル=ヴァデレードは、不足分を補う"何か"を生贄にして進化を申請。魂を代用して、Lvupを申請。……正式な魂が不足しています。生命力を代用します……失敗しました。生命力がありません。<力>を代用します。リスクとして、存在力が低下します。……完了しました。スキル、〈暴食悪魔(ベルゼブブ)〉はLv[限界突破(over)]へと至りました。これにて、終了します』


 よし、準備終了。この間、約0,7秒。勿論、周りには周知されないし、できない。


 じゃあ、早速……〈暴食悪魔(ベルゼブブ)〉を作動して、喰らう。対象は、概念である【勇気】。普通、〈暴食悪魔(ベルゼブブ)〉は物理などのものでしか喰らうことができないが、[限界突破(over)]というのは時空間次元を飛びぬけたものである。その効果は絶大で、"一つ"でも[限界突破(over)]があれば、[限界突破(over)]が無い者に圧倒できる。


 そして、特殊な進化がされる。特化的に超絶進化がされる。今、〈暴食悪魔(ベルゼブブ)〉が物理だけでなく、概念をも喰らえるようになったのも、そのせいだ。


 ところで、この神の勇気を喰らったのも理由がある。コイツは、今の世界には必要だ。だから、私の奴隷となってもらう。


 勇気を無くすというのは、戦意を喪失させるためだ。そうすれば、僕に素直に付いてきてくれるかな?


「ガッ……グア゛……ガガガガガ……!」


 神は為す総べなく、勇気を喰われるが、流石神というべきか、なかなかに抵抗してくる。


「グググググググググググググ……!」


 火花が飛び交い、最早(もはや)食事どころではいなくなる。後方に退き、神を見据える。どうやら失敗したようだった。


 作戦変更だ。神を御する方向だったが、帰らす方へ変更することにしよう。


「なあ、屈服するという考えはないのか?」


 神にそう問いただす。目を鋭き、圧をかける。まあ、平たく言えば、怯ませる。


「そんなの、この至上なり神を従属にしようと考えているのか?試練をしているんではないんだぞ!」


 そう言い、神は噛みついてくる。やはり、下級神の癖にプライドが無駄に高い。どうせ、<神界>では虐められているくせに。こっちに来た方がいいだろ?


 ……まあいいや。無理矢理でも従わせてやろう。帰らそうとしたけど、それだと気の毒だからな。私は優しいのだ。


 (くちばし)の上下を両手で抑え、一気に閉じさせる。


「グアッ⁉」


 驚きを漏らせない声を捻りだす。まあ、急に口が閉じられたのだ。驚くし、痛いのだろう。

 更に、追撃を下す。どてっぱらに拳を叩き込み、直線状の先にある崖壁(がいへき)に神は埋め込まる。


 自分も神の懐にすぐさま向かい、拳をカクテルを注ぎ込むように叩く。

 無表情に、無心に、無慈悲に。ダダダと音が辺りに響き渡り、死にはしないが、苦しそうだ。


「どうだ。降参するか」

「ガベッ!ヴォッ!……こ、コウザッ⁉」


 なにか言おうとしてるが、まだまだ降参とは言わないな。まだまだ殴りを続ける。


「どうだ」

「も、もうやめない?」


 キャルが横から割って入る。そこに、アメリも来て一言。


「まだまだ。もっとやらないとコイツ懲りない」


 頬を膨らませて訴える。一度、殴りを止めて神の様子を見る。


「も、ハア……もう、もう、降参……だ、ハア、ハア……」


 竜の姿をしている神は降伏を意味する言葉を発する。その返答に、僕は不満の一言。


「なんだ、もっとやりたかった」


 すると、神はビクッと身を震わせ、身体を手で覆わせ、身を守る。なにか危険を察知でもしたのか?


 そんな考えもさっさと変えてパチンッと指を鳴らす。すると、神の姿は真体(しんたい)へと変わる。


 こういう神のような生命は、仮体(かたい)真体(しんたい)がある。仮体は、獣のような体であり、この神のような竜の姿がある。


 逆に、真体は、人間のような姿を模しており、力的には仮体とはあまり変わらない。


 決定的なことは、一つ。真体は、体力を多く消耗する。だが、仮初の姿から解放される気分から、精神が安定する。


 だが、私の『姿暴露(アバケダシ)』は、そのデメリットを無くす。つまりは、真体の姿でも、多くの体力を消耗せずに、居られる。


 まあ、他にデメリットが生まれてしまうが、今はいいだろう。


「こ、この姿は……」


 見事、神は真体である女性の姿を現した。随分と、自分の姿を見て驚いているだろう。<神界>では真体のデメリットが消されるからずっと真体の姿でいるが、<現界>ではそうはいかない。


 だから、この姿になり、混乱しているのだろう。その上、多くの体力を消耗していない。だから、更に頭は渦を巻いている。


「<神界>なんて退屈なところじゃないか?そんなところよりも、私達に付いていった方がよっぽどいいがな」


 神に、手を差し伸べる。拒否権は、もちろんある。だが、それを許すかは僕次第。

 拒否したら、ここで滅びることが、コイツにはわかるだろう。


 それに、下級神なんか<神界>では下僕にほぼ近い存在だ。それよりも、こっちで自由に過ごせていた方が楽だろう。


 神は、おずおずと俺の手に触れた。倒れていた神を引き上げる。


「新しい目標ができた」


 そう一息置いて、次の言葉を告げる。


「この世界を変える」

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