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4000兆回目の転生日記  作者: ゆるん
二冊目《自称皇帝とジャパニーズ転移者》
47/102

10ページ,神が宿る術式

 ───9(レル)、訓練場───


『君が探している者は、どうやら帝国の皇帝みたいだぞ?』


 足を踏み込みながら、霊王が言っていたことを思い出す。まあ、予想通りだけどな。でも、それを何故、霊王がわかっていたことについて、だ。


 どんな<法>を使っていたのか。───いや、あれは<法>ではない。動き出していた足を踏み止め、空を仰ぐ。


 ふう、と一息吐き、再び思考を巡らせる。


 あれが、俺が求めていたもの。だが、まだ足りない。まだだ。確かに、俺が求めれるものなのだが、完璧とは言えない。多分、霊王はあれを『悟り』というのだろう。それは、直感的だ。


 理解的に、だれでも、理論的に。それができるのなら、それは正しく、俺が望むものだ。


「なにか悩みがあるの?」


 ケーラが『自身自立型土人形(アイム・ゴーレム)』を発動させ、自身と限りなく近いゴーレムと戦う中で私と話す。


 流石、勇者ということだけあって、自分とほぼ同じ実力をもつ『自身自立型土人形(アイム・ゴーレム)』を軽々倒した。


 すなわち、戦うたびに成長をしつづけているということだ。多分、今の実力なら、この前私と戦った時よりも、心身共に勝っているだろう。


「いや、別に。それにしても、ケーラは凄く強くなったな。もう聖人と肩を並べるほどじゃないか?」


 すると、ケーラは、黙り込む。どうした?と目で送ると、目を泳がせて質問をする。


「……聖人て、なんだい?」


 ああ、わかんなかったんか。別に気にすることなんてないのに。


「そうか、スラムで過ごしてきてよく分からなかったんか。ほらこれ見てみな」


 そうして、僕はケーラにある本を差し出す。その本の題名は、『世界大百科』。ペラペラとページが捲れていき、ある単語のページで止まる。


『聖人について』それが書かれていた。


 その後に、説明が書かれている。そこには、こう説明がされていた。


『聖人とは、聖なる人とされており、(たっと)ぶ者とされる。人間が進化した別の種族という見解もあるが、定かではない。だが、ステータス上での種族には、人間ではなく、聖人と記載されている。主な人との差異は、力の上昇、スキル及び<力>の強化、そして、固有(ユニーク)進化。力の上昇と、スキル及び<力>の強化は、言葉の通り。だが、固有(ユニーク)進化は、個々によって変わってくる。例を挙げれば、獣の姿になる者や、無から有を生み出すほどの創造力をもつ者などが居る。また、聖人は、人間という種族にしかならないので、人間が獣人や小職人族(ドワーフ)などの種族を差し置いて、種族として発展した理由としても言われている』


「……なるほどね。よくわかったよ。でも、なんでクライシスがこれを持ってるんだい?」

「ん-と、これ、俺がスキルを用いて作ったものだから」

「あいかわらず、君は斜め上を行くね……」


 手で額を押さえて呆れるケーラだった。どうして、呆れているのだろう。

 それが、今の私にはよくわからなかった。


 ケーラは、私と喋り終わった後、再び『自身自立型土人形(アイム・ゴーレム)』と戦うが、今回も楽々倒せて少し悩んでいた。そんなケーラに、ある術式を書いた紙を飛ばして一言。


「この聖法をつかって、もう一回『自身自立型土人形(アイム・ゴーレム)』と戦ってみな」


 渡した聖法陣は『制御(レバス)』。全ステータスを低くさせる術式。

 これをすれば、ある程度苦戦するだろ。───ズドン!


 ……ゴーレムが倒された音がした気がしたが、気のせいだ、多分。


「……そんなことやったって、無駄な事わかってたのに」


 横で聞きなれた声が。もちろん、アメリさんだ。宥めるために頭も撫でる。

 そしたら、不満の声が、漏れ出してくる。


「……最近、頭なでだけで済まそうとしてない?」


 少しだけ、図星だったが、反論を告げ───


「はい、図星って言った」

「……それはずるいよ、アメリ」


 読心術で心を読んだ。だから判明したのだ。ホントに、コイツは~……!


「でもさ、アメリも満更じゃないだろ?」


 頭を撫でている時、アメリは少しだけ嬉しそうな顔をしている。いや、少しだけじゃないか。


「嬉しくない訳ないでしょ」


 ぶーっと率直な意見をするアメリ。こうした意見は、自身にとってもうれしい限りだと思う。

 でも、こうしてなんの恥じらいもなく言われてしまうと、居た堪れない気持ちに苛まれる気がする。


 そういえば、ケルとキャルが最近、音沙汰ないみたいだけど裏でいちゃついてるの、知ってるからな。今だって、二人だけこの訓練場には居ないし。まあ、自由参加っていったから別にいいんだけど。


「大変だっー!」


 声が聞こえる。その声の()は、助力(S.O.S)の色彩。すぐに、()()()となる犯人であろう居場所を特定して、転移する。


 アメリも、それについてきて転移聖法陣を発動。

 白い光に包まれ、光が晴れるや否や、眼下に大柄の長霊族(エルフ)の男。あれはマナ暴走。


 マナ暴走は、生き物の、約6割を占めているマナが、急激に増加したことによって体の制御ができず、マナ暴発という大規模広範囲爆発をする状態の事。


 対処法は───


「アメリ、サポートは頼む」

「わかった」


 上のほうへと転移した為、下に居るマナ暴走エルフに向かって、降下していく。


 そして、繊細なほどに微細な力を込めて、殴る。それは、相手の<力>の波長に合わせた<力>を込めた拳。


 さらに漏れ出た汚染された空気中のマナはアメリが『聖域(ガラレム)』で洗浄をする。


「いっちょあがり」


 スタッと着地音が聞こえそうな着地と同時に、無表情でピースをするところがまた可愛らしい。

 じゃあ、今度は俺か。


「『可視化聖魔力拘束(ガギャマンベーガ)』」


 一応、暴れそうなので、拘束をする。思った通り、ばたばたと暴れている。


「落ち着け」と<力>を込めた言の葉を奴にぶつける。


 ヒッと喉からかき出た悲鳴がエルフから聞こえる。そう怯えなくていいのに。……ん?


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」


 ただ謝り続けるエルフの男。しゃがみこみ、笑顔を向ける。どこか、ぎこちない気がするが。

 少し空気が重いので、手刀をエルフに叩き込む。エルフは、力尽きるように膝から崩れ落ちる。気を失ったようだ。


 転移者組も合流して、場の状況を把握している。なんか混乱してるみたいだけど。


「ねえ、あれって……」


 転移者組の一人が声を上げる。視線の先には暴走男エルフの首。虹色に光る輪が、首を絞めつけている。


 綺麗な色彩と裏腹に、その首輪の名は『戦奴隷の首輪』。まだ奴隷なんか発展に無意味な娯楽を続けているのか。


 首輪を握りしめ、潰す。直後、黒い瘴気が僕を纏う。これは……悪魔との契約に似ている。


 奴隷というのは、主従関係の契約。その起源というのは、ある悪魔契約をした者が、その術式を弄り、人間と人間を、悪魔契約じみたものにしたことだ。


 無論、悪魔契約と似るものとなる。だが、契約をするのは下級クラスでも恐ろしい力を持つ悪魔ではなく、魔王にも劣る人間だ。悪魔契約は、時間制限があるのだが、非力な人間では、時間制限などほぼあてにならない。そこまで制限できる力がないからだ。


 それが、奴隷関係というもの。

 だが、それを強制的に破るとどうなるか。


 先程も述べた通り、奴隷契約は、悪魔契約とほぼ似ているもの。契約するものが、悪魔か人間かの違いだけだ。


 そして、契約には、神聖な儀式とおなじだ。その術式には、"神"が宿る。契約とは、術式と同義。


 さらに、術式を崩壊させると、残影の<力>が発散して、辺りに飛び散る。


 その崩壊は、神が崩壊するのではなく、神は、周りの<力>を借りて受肉する。

 俗に、"降臨"とういう。だが、その受肉は、明らかな<力>不足により、実力が圧倒的に下がる。


 それに、術式に宿る神は、(おおよ)そ下級神だ。

 その実力は、下級天使とほぼ同等に下がる。


『だれだ、我を妨げるものは』


 脳内に響き渡る声を、神は漏らす。いや、ほぼ神ではないな。


「かかってこいよ、雑魚が。すぐに()ってやる」


 また、昔みたいに───な?

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