7ページ,仲間との再会
このグリフォンは結構モフモフだ。なにせケモナーであるアメリがモフっている。それはもう、モフモフだ(?)
「で、どうなんだよ。そこの御二人さん」
自分の問いに対する返答がまだ無いため、催促をかけるようにする。
ポカンと上の空だった女性のほうのハイエルフはハッと意識が現世へと戻り、畏怖の眼差しを向ける。
「あ……貴方達は……?」
地域によっては、神格化されるハイエルフでさえも、このような無様の姿を見せていた。普通、ハイエルフとかの強者の登場って、もっと凄い感じじゃないっけ?
まあ、後ろの転移者組がヤバめの視線が駄々洩れだから凄いのだろう。案外、転移者って便利だな。
「なに、転移者たちを、ものさしにしてるのよ」
おっと、思わず考えが口に出ていたようだ。気を付けないと。アメリに危ない。
「なんで危ないの?」
ケル?勝手に心を読まない。わかるんだから。そしてその答えには黙秘権を使わせていただく。
「えーなんでー」
さて、そんなケルは放っておいて、改めてハイエルフの方を向く。それに二人はビクッと体を震わせる。警戒してるなー。
「いやさ、もう俺らのことは説明がめんどくさいから詮索はしないでくれないか?ほら、別に精霊がざわついているわけでもないし」
精霊は、悪意や害意などに反応する。俺も〈精霊視認〉で精霊を見ているが、仲良く燥いでいるだけだ。
ちなみに、精霊も、位がある。下から、下位精霊、中位精霊、上位精霊、将位精霊、帝位精霊、極位精霊という順だ。
「……確かに、精霊は騒いでいない……───わかりました。エルフの里の在処を言います。ですので、命と母の安全だけは……」
なにか誤解を生んでいる可能性があるので、解いておく。
「そんな悪党紛いのようなことはしないから安心しろ」
おどおどとさせながらも、なんとか立ち上がり、僕たちを案内してくれた。
途中で魔物が襲ってきたが、全員ぶっ飛ばした。
***
───40別後、精霊樹林長霊族の里入口───
「ここです」
なんか自然と話していたら結構打ち解けた。前のような怯えた雰囲気も無くなって、お婆さんも安心しきった顔となった。
やっぱ信頼を得るなら、行動なんやな。
「じゃあ、早速、入るとするか」
そうして、里に足を踏み入れる───
「誰だ!お前たちは!」
槍を持った明らか警備をしている人が声を荒げる。そうか、気にしてなかったけどこういうのもあるのか。
ハイエルフの二人が私達を庇う仕草を取る。それに警護エルフは恐れ戦く行動で「あ、貴方たちは……」と驚く。
どういうことなのかと問いただす視線を二人に飛ばすのだが、それを無視して警護エルフと話していた。
「そうですね。はい。!ですが───、───。───、───」
途中は聞こえなかったが、やがて話し終え、こちらを向き、告げる。
「では、少し、長老である我らが長、精霊王に合おうと思います」
「「「……は?」」」
全員が同じ声を漏らした。それほど驚愕な内容だったのだろう。
皆訳がわからないので、取り敢えず、二人に付いていくことにした。
ここは、里とは言えない程に発展していて、聖法や、魔法を使った道具や設備をふんだんに使用している。
「───、───」
「───。──────」
表情が明るく、活気づいていた。さぞかし、ここに住んでみたら極楽郷なのだろう。
にしても、色々な多種多様のエルフがいる。エルフ、ハイエルフ、ダークエルフ……
すれ違う生き物に多様性を感じるな。別にこれといった差別も無い。本当に桃源郷のようだ。
「ここです」
そう考えている間に、なにやらここの中心建造物のような所に辿り着く。
明らかに文明の最先端を行く建物で、小さいながらも、威厳を保っている。圧倒的な存在感を放っていた。
建物の中に10人以上が入り込もうとも、空間聖法が働き、余裕で入室が可能であった。というよりも、外観と内側の広さが桁違いだ。おかしい。
先頭の女性───フーカムさんが、知らない廊下を歩いていく。
最奥のドアに差し迫り、ドアを引き開け、どうぞと促される。私たちは「ありがとうございます」と御礼をして部屋へと入る。
「───そうだなぁ、君は私の孫を如何かね?年頃で相性もよさそうだが───」
「い、いえ。遠慮していただきます。それこそ、了承を得ないといけないので───」
突如、長と思わしき老人が青年たちと話していた。力量を見た感じ、少し強いぐらいか?だいたい転移者たちと同じくらいだが、少々、向こう側が勝っているか。
転移者たちに目を配ると、驚いた表情で青年たちを見つめていた。知り合いか?
すると、向こう側に居た背の低い女の子が此方を向き、手を振って声をあげる。
「?あれ?あれって香穂里じゃない?おーい、やっほ~!」
「貴方たち、精霊王に会えるくらいに精進したの……?」
「アタシたちだって頑張ったんだよ~」
ぶーぶーと言い、香穂里と話す少女。これが転移者組が言っていた仲間か。
その会話に反応して先程、精霊王と話していた明らかにリーダーのような者とそれを取り巻く者達もこちらを向く。
「というか香穂里~そっちの人たちは~?」
少女もこちらに気づき、香穂里に問いかけてくる。
そこで私は口を開き、手をふりふりと振って自己紹介を始める。
「どうも、そこにいる香穂里たちとこの前一緒に行動することとなったクライシスだよ。よろしく」
香穂里と話していた少女は、僕を見てボーっとしていたが、一瞬の間に僕の目の前となった。
早いな。多分、ここにいる転移者組だと一番早いもしれない。もしかしたら、【迷宮姫】状態のキャルと同じくらいの速さかもしれない。
少女───小優魅が、私の胸をモミモミと触ってくる。───っやばい。アメリからの視線がやばいって。なんか危険なオーラを漂っている。おこだ、おこおこだ。
そして小優魅は驚愕の表情でこちらを上目遣いで見入る。
「もしかして……男の娘⁉」
……うーん、変な勘違いをしてしまっているみたいだ。胸に膨らみが、ないからだろう。にしてもデリカシー無さすぎないか?
「いいや、違うよ?」
優しく、少し困ったような表情で小優魅に伝える。
すると、小優魅は混乱の渦に巻かれた目で、思考をしている。そんなことで〈スキル〉を使うと、マナが無駄に消費されるぞ?
「小優魅、そこら辺にしろ」
先程まで精霊王と話していた転移者組の仲間のリーダーがこちらへ歩み寄り、私たちに謝罪を述べる。
「すいません、俺たちの者が……失礼を課してしまいました」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
すると、青年リーダーである夕夜が、では、と改まり、話し出す。
「貴方たちはどういった方なんでしょうか。どうして、ここに来たのですか?それに、祐亮たちがなんで付いてきているんだ……?」
話すたびに疑問が増えていき、混乱が夕夜を襲っている。
その証拠に、敬語がなくなっている。
「わかったから、少し落ち着いてな?一つずつ説明していくから」
果たして、どうなることやら。
そんなことを考えながら、私は静かに空を仰いだ。本当に、帝国のことは解決するのだろうか。