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4000兆回目の転生日記  作者: ゆるん
二冊目《自称皇帝とジャパニーズ転移者》
41/102

4ページ,転移者の話

「なんだ?もう一回言った方がいいか?」


 身を乗り出して、ケーラに近づく。で?どうなんだ?


「ちょ、近づかないでくれ。女の子がそういうことするのはよくないよ」

「私、女じゃないんだけど」

「え……?男……?」


 絶句の表情でケーラは此方を見るが俺は首を左右に振って否定の意味を込めて「違う」と答える。

 口は「へ」の文字をしたまま開いている。まだ理解できていないのか?


「というより、ラグエズっていう名前も今は違うんだ。私の本当の名前は……クライシス。まあ、クーとでも呼んでくれ」


 なんだかんだクーという名前で定着し始めているからな。そんなつもりなかったんやけど。


「……ハハ」


 口が開いて塞がらない状態だったが、乾いた笑みも零れた。


「で、仲間のことなんだけど」


 何回も話を逸らされてるかっら、口調を強めて言い放つ。


「ああ、それなんだけど……」

「ちなみに」


 ケーラの言い訳を遮断する。


「お前が世話してる子供たちは、孤児院に行ったし、それは子供たちの了承の上だ。他にも、お前がよくお話しに行っている御老人も老人ホームへ行ってもらった。それも、もちろん、了承の上だ」

「……」


 ケーラが押し黙る。なにも言い返せなくなったようだな。ついでにもう一押し。


「あと、これを渡しといてやる。『聖器(せいぎ)』だ。ポケットドアと呼ばれる類で指定された場所に並列存在で移動できる。これでいつでも忙しい時でも会えるぞ」


 並列存在は平たく言えば、ドッペルゲンガーみたいなもの。少し違うが、だいたいはそうだと言えるだろう。


 さて。ケーラが手を挙げ、(まさ)しくお手挙げ状態。


「わかった、君に付いていくとするよ。でも、一つ聞きたいんだ。どうやってこんなことをしたんだい?」

「え?ただ王に頼んでお金の力で作っただけだが?ついでにここの土悪くて作物育たなそうだから『聖域(ガラレム)』で最上級の土にしといたし。まあ農業をやる人がいるか不安だけどそこはスラムって失業者も無職も多いから大丈夫か?」

「王に頼んだって……?」


 ケーラは絶句している。


「あと『聖域(ガラレム)』の効果で水が綺麗になったけど、それは子供が下痢で死ぬことは無いし、下痢は子供が死ぬ確率が非常に高いんだから別にいいか」


 あれ?ケーラの声が聞こえない。どうしたんだろう?

 ケーラはフッと諦めたような嘲笑をする。


「もういいや……君に付いていくよ」

「よし、決まったな」

「でも、僕って拠点なんかないよ?集合とかもよくわからないし……」


 ケーラが疑問を呈するが、なんの心配もいらない。


「ああ、心配ない。今から作るとしよう。まあ付いてこい」


 今から、俺の隣に創るとするか?いや、あれでいいか。


 ***

 ───10(メイル)後、キャル宅───


「ほい、ただいま」

「「「クライシスさん!話がしたいです!」」」


 帰ってきたタイミングで、転移者組がなにやら喚く。そろそろだと思ったが、これだと近所迷惑だから今のところ及第点って感じかな。


「おう、待ってたぞ。話を聞かせてもらうか。私の有益になる情報を」


 私は、有益な情報しか耳に入れない。あとは、頭の片隅にいれておくか、忘れる。ただし、覚えておくことは絶対に忘れない。椅子に腰かける。


 アメリから、多少は話を聞いてんだろうな。───祐亮が口を割る。


「先ずなんですけど、クライシスさんはそこに居るキャルさんのお父さんを操った者の情報を知りたいんですね?」


 そう、だいたいは帝国の者、と分かってはいるが、帝国の誰なのかはいまいちわかっていない。


「そうだね」


 私の言葉に間髪入れず、話を続ける。やる気は(まる)っと。


「そこでなんですけど、今エルフの樹林に俺たちの仲間が居るんです。エルフは<法>の扱い方が上手い。もしかしたら、キャルさんのお父さんを操った人が分かるかもしれません」


 へぇ、エルフか。そこは目に入ってなかった。それに、確かに祐亮が言っていた通り、エルフは<法>の操作が達人級だ。なんとかなるかもしれない。


 私は立ち上がり、転移者たちを見つめる。なるほど、いい目だ。いつか良い〈スキル〉を手に入れると思う。


「いいじゃないか。エルフは私も考えが及ばなかった」


 皆が顔を明るくさせ、私が出ていく前とは対照的となる。


「「「ということは───」」」

「ああ、お前たちの要望を聞こう。なるべく叶えてやる」


 見ず知らずの俺たちを頼る程、切羽詰まっているのだ。徳は、得で返す。人の常識らしいからな。ちゃんとするさ。


「で、仲間を助けてほしいんだって?」


 さっき言ったことの記憶を辿る。


「はい。実は、今私たちの仲間が12人程、帝国の地下で投獄されています」

「なんで投獄されることになったんだ?」


 その問いの答えはすぐに返ってくる。


「その、投獄されてしまったわけは、帝国から脱出するのがバレてしまったんです。ですので、私たちも絶賛、帝国の者たちに追われています」


 え、あんたら駄目じゃね?逃げてんの?俺たちも狙われちゃう。


「ま、まあ、そのことは一旦おいとこう。それより、エルフの樹林なんだけど、どこにあるの?」

「あっ……逃げた」


 アメリが少し要らないことを言ったが、ノーコメントだ。


「出発は、明日の早朝でここの家の前な」

「毎回私の家に集合するのってなんなの⁉」

「便利だからだと思うね~」


 キャルが横目で「ケルまで……」と言う。


「まあ明日だ。準備しとけよ」


 そう転移者たちを一瞥してアメリにも帰ると告げる。テクテクとこちらに向かって横に当たり前に寄り添う。


 そして、キャルの家から出ていく。あっそういえば。


「おい、アンタらって寝床あるのか?」


 それに転移者たちはあっ、と素っ頓狂な声が出た。予想通りに。


 僕は苦笑を混じり気で答える。


「じゃあ、ウチに来るか」


 家事は自分でやってもらうけどな。当然だ。


 ***

 ───パル宅───


「じゃあ、洗濯物は、そこにしまっといて。聖法で洗い方は習ってる?『洗濯(ジュッタ)』で出来るからね?術式はこれね」


 (てのひら)に術式を書き込み、相手に見せつける。習っていなかったのか、驚きの瞳を皆は見せた。


 意外と簡単なんだけどなあ。知られていないのが残念。


「じゃあ、飯の用意するか」

「あっ私できるので私しますよ」


 眼鏡の明るそうな子が手を挙げる。えーとこの()は……


諷歌(ふうか)です。秋月(あきづき)諷歌」


 あーそんな子いたね。皆一気にステータス見たから名前忘れちゃった子もいるんだよね。


「いや、料理は私やるから大丈夫」

「え?でも、手伝いますよ」

「いや、聖法を使うからまだ手伝えないと思う」

「?」


 疑問が出ているが、取り敢えず見といてくれと言う。


 聖法を駆使して食物を生成して空中で調理を始める。聖法の床を作って王級スキルである〈仙王念動力(ヌタール)〉も有効活用して鮮度ピチピチの食物を見ずに捌いていく。


 このことを演算スキルで放っておきながら、本体の知力をケーラの部屋作りへと移させる。

 カチカチと頭の計算脳が鳴り、ケーラの部屋が構築されてい行く。


「さあ、ケーラ。部屋で来たぞ」


 さっきから空気だったケーラがビクッと体を跳ねさせ、ありがとう、と感謝の言葉を並べる。


 勇者なのに空気ってどうなのだろうか。


 まあ、後はケーラに部屋を確認させて貰えばいいか。

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